第六十二話 ノーラは悪くない?
今回は非ロバート視点です。
ロバートが走り去り、自身がかけた魔法が発動したのを確認したエイダはほくそ笑んだ。
「ふふふ、やったわ。見えないロープでずっと繋がれる〈コネクティングロープ〉、やっとロバートにかけられた。これで、これで……」
エイダは両手を上げて、喜びを爆発させた。
「これでロバートは、もう私のものよー!!」
鍾乳洞内にエイダの大声が響き渡った。
「……エイダ、どうしたの? そんな大声出して」
後ろで起きたパメラが声をかけた。エイダは動揺を隠せないまま、振り返る。
「あ!? ちょ、パメラ……ごめん、起こしちゃった?」
「起こしたもくそも、とんでもない大声だったわよ。嫌でも起きるわ」
「そ、そうね。ごめんなさい、気づかなかったわ」
「うん? ていうか、私ずっと寝てたの!?」
「そう……ね」
パメラが唖然とする。そしてエイダが簡単に事情を説明した。
〈昏睡の壺〉が仕掛けられていたこと、ロバートがその罠を仕掛けた連中を撃退したこと、さらにロバートがその仲間と思われる奴を追いかけて鍾乳洞の奥に進んだことを
逐次パメラに伝えた。
「なんてこと。こんな場所で岩場があって、ノーラも突然休憩しようとか言い出すから、おかしいと思ってたけど、そういうことだったのね。となれば、すぐにでも起こして事情を聴かないと」
パメラが寝ていたノーラの横へ駆け寄り、彼女を揺さぶった。
「ノーラ、ほら起きて! ノーラ!」
「うぅ……ん。あ、あれ……パメラ……さん? ここは? 私どうしてたんですか?」
「どうしたもこうしたもないでしょ。眠ってたの、私達四人ともね」
「え? 眠ってた!?」
「ほら、エディも起きて! エディ!」
パメラはエディも揺さぶって起こす。エディも起き上がり、やはりノーラと同じ反応を示す。
「二人とも起きたわね。実はかくかくしかじかで……」
やはりエイダが事情を説明する。
「そんなことが……じゃあロバートさんは一人で奥に?」
「ロバートに感謝しなさい。彼が撃退してくれなかったら、私達何されていたかわからないわ」
「本当にゾッとするわ。でもどうしてロバートだけ起きてたわけ?」
「あぁ、それはね。なんというか……」
エイダは返答に困った。ロバートが言っていたことを素直に言おうか迷った。
「まぁいいわ。それよりノーラ、あなたに聞きたいことがあるのよね」
「聞きたいこと……ですか?」
「とぼけるんじゃないの。あなた、私達を罠にはめようとしたわね?」
突然のパメラの質問に、ノーラが戸惑った。エイダも驚く顔を見せる。
「え? あの……それは……」
「ちょっとパメラ! 突然何言い出すの? まるでノーラが共犯みたいな言い方じゃない?」
「共犯? これは失礼、多分あなたは命令されただけなんでしょ? 私達をここにおびき寄せて、奴らの罠にはめさせた。そうじゃなくて?」
「…………」
ノーラは何も言い返さなかった。パメラはますます確信する。
「おい、ちょっと待て! ノーラがそんな馬鹿なことするかよ! ノーラも何か言い返せよ!」
「……お兄ちゃん、ごめんなさい」
「え? なんで謝るんだよ?」
ノーラは頭を下げた。
「ごめんなさい! 実はパメラさんの言う通りです。私、奴らの言いなりになっていただけで……」
「お、おい……嘘だろ? そんな……」
「でも信じてください。お父さんはさらわれているのは事実なんです。私はお父さんを助けたくて」
「ノーラ。詳しく事情を聞かせてくれる?」
「……わかりました。包み隠さずお話しします」
コルネ村の村長をさらった一味は、仲間の到着を今か今かと待っていた。しかし一向になんの報告も来なかったことに、リーダーの金髪の男はいら立ちを隠せない。
「遅い、遅すぎる!」
「兄貴、落ち着いてくださいよ。アナコンダのコアはかなり大きいはずですから、持ち運ぶのに苦労してるんですよ、きっと」
「それはわかっているが、それにしても遅すぎだ。こうなったら誰でもいいから、様子を見てこい!」
だがその必要はなかった。
「兄貴! 兄貴! 大変だ!」
慌ただしい男の声とともに、リーダーがいた部屋のドアをノックする音が激しく響いた。
「合言葉は?」
「『俺達みんな金持ちになる!』」
「よし、入れ!」
合言葉を発した仲間が入ってきた。かなり慌てているその様子に、リーダーの男は嫌な予感がした。
「大変っす! 兄貴、大変っす!」
「落ち着け、あいつらはどうした? アナコンダのコアは?」
「それが……その……」
入ってきた仲間は何も持っていない両手をさらけ出した。リーダーの男はその返答と素振りで察した。
「この馬鹿野郎! お前応援に駆け付けたんじゃねぇのか?」
「いえ、そうだったんすけど、俺が駆け付けた時にはもう全員やられてて……」
聞きたくもない言葉が飛び出した。
「……全員やられた? 嘘だろ、そんな……」
「本当っす。俺は見てました、全員たった一人の小僧に吹き飛ばされたようで」
「たった一人の小僧? 例の貴族か?」
「どうやらそのようです」
「ふざけんな! そんなことあり得るか! 〈昏睡の壺〉はちゃんと仕掛けたんだろ!?」
「はい、それは間違いないっす。事実、小僧以外の仲間は全員眠っていました」
「じゃあ、なんで小僧だけ……まさか?」
リーダーが口元を抑えた。
「いや、〈破眠マスク〉もつけてなかったっす」
「なんだと? それでどうやって起きていられるっていうんだ?」
「そんなこと俺に言われてもわかんねぇっす。だけど一番ヤバいのはその後っす。全員で袋叩きにしようとしたんすけど、その小僧に呆気なくやられて吹き飛ばされました」
「ふざけんな! 〈昏睡の壺〉も通じねぇ上に、小僧一人に四人とも呆気なく負けというのか?」
「信じられねぇ気持ちはわかるっすけど、俺は見たっす。間違いねぇっす。多分剣術スキルっすけど、すげぇ突風が吹いて全員見事に吹き飛ばされました」
第六十二話ご覧いただきありがとうございます。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman




