第六十一話 まだ仲間がいた?
直後、強烈な突風が吹き、男達がはるか後方へ吹き飛ばされた。スキル〈空圧剣〉は突風を起こし、攻撃を加えさらに敵を後方へ吹き飛ばす剣術だ。
このスキルの威力は攻撃の数値に依存するけど、吹き飛ばす距離は体力に依存する。
今の俺の体力は補正込みで65078、ここまで数値がでかいと吹き飛んだ距離も計り知れない。事実男達の姿はもう見えなくなった。
またもあっけない勝利だ。事前に状態異常耐性の数値を20万近くまで上げていたことが、早くも功を奏す形になった。
「あいつら何者なんだ?」
アナコンダのコアを盗もうと企んだ連中については、ノーラから詳しく聞くしかないか。
「今の声は!?」
突然エイダの声が響き渡った。
「エイダ、起きたのか?」
「ロバート、今変な悲鳴が聞こえたような気がするけど?」
「あぁ、なるほどそれで起きたのか。いや、なんでもないよ。もう俺が追っ払ったから」
「追っ払った? 一体何を言って……って、これは!?」
エイダが周囲を見回した。隣で寝ていたパメラ、そしてノーラとエディも熟睡していることに気付いた。
「みんな、どうしちゃったの?」
「そのね。なんというか、エイダも含めて全員寝むりこけちゃって……」
「はぁ? 寝ちゃったってそれどういうこと!? なんでこんな場所で眠っちゃうわけ!?」
「その罠の元凶がこれさ」
俺は地面に置いていた〈昏睡の壺〉をエイダに見せた。彼女も驚いた、どうやら知っているな。
「それは……〈昏睡の壺〉?」
「やっぱり知っているんだね。これがあの岩場の下あたりに置かれていてさ、ちょうど俺がアナコンダのコアをアイテムボックスから取り出した後で、靄が噴き出したらしくてね」
「……なんてこと。なんでそのことに気付かなかったの私……もうちょっと警戒していれば。ごめんなさい、ロバート」
エイダも自分の不甲斐なさを嘆いている。彼女はランクAの魔道士だから、あっさり罠に掛かってしまったことが悔しいんだな。
「気にするなよ。俺だって気づかなかったからさ。それはそうと、全員起こさないとね。風邪ひいちゃう」
「そうね……って、ちょっと待って!」
エイダが何かに気付いて俺のほうを振り返った。
「あなたはなんで起きていたの? ずっと私達と一緒にここにいたわよね?」
「あぁ、それはね……」
エイダも気づいたか。だけどその答えは簡単だ。
「状態異常耐性を20万まで上げてたんだよ」
俺は答えた。これ以外に答えようがない。エイダはしばらく口を開けたまま固まった。
「……えぇと、今なんて?」
「だから状態異常耐性が20万もあるんだ。これくらい上げていれば、〈昏睡の壺〉の靄を吸い込んでも睡魔に襲われない。どう? 納得した?」
エイダは今度は腕組をして、考えこんだ。
「……わかったわ。とりあえず後であなたのステータスじっくり見てあげる。今はパメラ達を起こしましょう」
なるほどエイダは冷静だな。俺のステータスが気になるところだが、今は何よりパメラ達を起こすほうが先決だ。
だけど、その時だった。
「ん? 今のは……」
地面にできていた影がわずかに動くのを、俺は見逃さなかった。
今いるこの場所は、元から壁に掛かっていた松明とエイダの光魔法〈ライトボール〉が宙に浮いて、かなり明るい。
そのおかげで地面に俺達の影がくっきりと出来上がっていた。今左端のほうで、人の影が移動しているように見えた。
「エイダ、今の見たか?」
「見たって、何を?」
「人影が動いていた。誰かがいる、この近くに」
「なんですって!?」
俺は改めて周囲を注意深く見まわした。だけど誰もいない。もしかしてもう遠くへ逃げたのか。
そういえば、吹き飛ばした連中の一人は「兄貴がどうのこうの」って言っていた。となると、まだ仲間がいるに違いない。逃げた奴がその一人だろう。となると、是が非でも捕まえないといけない。
「エイダ、ここで見張っててくれ。俺は逃げた奴を探してくる」
「あなた一人で行くつもりなの?」
「大丈夫さ。今の俺のステータスなら、一人でもどうとでもなる。すぐに戻ってくるから」
「ちょっと待って!」
エイダが声をかけて俺を止めた。
「なんだよ、エイダ? 俺一人で大丈夫だって言っただろ?」
「そうじゃなくて、その……なんというか……」
なんだかエイダの様子が変だ。変に恥ずかしがっている、こんな時にどうしたんだ。
「しょ、鍾乳洞の奥は暗いはずだから、これ……持って行って」
エイダはローブの内ポケットから、何やら小さい卵型の物体を取り出した。エイダが俺に手渡しし、杖の先端でその物体を小突くと、なんと鳥のような羽が生えて俺の頭上にふわふわと浮かび上がった。
そして今度はほんのりと光りだす。これは明かりを灯す特殊アイテムだったのか。
「便利でしょ? 〈蛍光鳥〉と言ってね、あなたの行く先を照らしてくれるわ」
「ありがとう。これなら楽々探索できそうだ。あとは大丈夫か?」
「大丈夫よ。心配しないで、ここは私が見張るから」
「それなら安心した。それじゃ行ってくる」
エイダからもらった〈蛍光鳥〉のおかげで、明るさには困らない。俺は鍾乳洞の先を目指して走り始めた。
「……ネク……プ」
走り始めた直後、エイダが何かの魔法を詠唱したように聞こえた。なんの魔法を詠唱したのか気になったけど、特に俺の体に異変はない。
〈蛍光鳥〉を渡した後も、どことなく恥ずかしがっていたし、エイダの様子は少し気がかりだ。何かを隠しているのかな。
まぁいいか。今は逃げた奴を探すほうが先決だ。
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