第五十八話 突然の休憩タイム
アイアンバットはエディの攻撃はまるで効かなかった。それどころか、攻撃を受けたアイアンバットがエディの右腕に嚙みついた。
「エディ、動かないで。はぁあ!」
パメラが矢を引いた。エディに噛みついていたアイアンバットを一撃で仕留める。だけどエディの様子がおかしい、見たところ腕から出血している。
「おい、大丈夫か!?」
「なんとかね。でも頭がクラクラする……」
「もしかして、毒?」
「いや、吸血攻撃ね。アイアンバットは噛みついて血を吸うの、多分相当HPが減っていると思うわ。ちょっとステータスを見せてもらうわね、〈アプレイザル〉!」
エイダが杖のオーブをエディに向けた。俺の時と同じように、オーブからいくつもの小さい円形の魔法陣が飛び出し、エディを球状に取り囲んだ。
「うわぁ、これが〈鑑定〉スキルか」
「スキルじゃないわ。これは魔法よ、スキルと違って〈アプレイザル〉は他人のステータスが正確にわかるの」
「え? そうなのか、じゃあ全部丸わかりかよ?」
「そうよ。ステータスを〈偽装〉していたって、これで一目瞭然よ」
「それにしてもあなた。こんな言い方しちゃ悪いけど、自分の強さもわからないで無鉄砲に斬りかからないでね」
「そんなこと言ったって、アイアンバットの強さもわからないし、ましてやあんな固い防御だったなんて思わなかったから」
「あら? 私の〈アンスティフン〉で相当防御は下がったはずよ。それで剣が折れたってことは、あなたの攻撃のステータスに問題があるってことよ」
「そ、そんな……」
なるほど、そういうことか。道理でおかしいと思った。確かに見たところ新品な剣のようだから、それがあっさりと折れるのはおかしい。攻撃が異様に低いのか。
確かエディは俺と同じ十三歳だったな。ということはまだ〈開花の儀〉を受けたばかりか。つまりレベルが低いんだろう。
「よし、そろそろね!」
エイダはオーブを食い入るように見つめる。エディのステータス情報が反映されているのか。
「え? なにこれ?」
「どうしたのエイダ?」
エイダは固まった。明らかに様子がおかしい、何を見たんだ。
「ステータスが……表示されない?」
「え? どういうこと? ちょっと見せて!」
パメラもオーブを覗き込んだ。すると彼女もエイダと同じ表情になった。
「本当だ。表示されてない」
「俺も見ていいかな?」
俺もオーブを見た。本当に表示されていない。一体何がどうなっているんだ。
「あなた……〈開花の儀〉は受けたの?」
「〈開花の儀〉は……この前受けたさ。十三歳になったからね」
「じゃあ炎の数は? いくつだった?」
「それは……」
今度はエディが言葉に詰まった。するとノーラも何やら思いつめた顔をしている。これは何か訳ありだな。
「炎は出ました。だけど……」
「だけど、何?」
「信じられないかもしれませんけど、数え切れなかったのです」
ノーラが衝撃的な言葉を発した。
「数え切れなかったって、どういうこと? 最大でも九つのはずよ」
「そうです。それは知っていたんですが、お兄ちゃんの場合は明らかに十個以上も出ていました」
炎が十個以上も出ていただと。そんなことあるのか。俺も〈ロード・オブ・フロンティア〉を前世で何度もプレイしているが、炎が十個以上も戦士なんて見たことも、聞いたこともない。
「念のため、私の〈鑑定石〉でも見てみるわね」
パメラがショルダーバッグから〈鑑定石〉を取り出した。だが、やはり結果は変わらないようだ。
「駄目ね。やっぱり同じ……これじゃあどうしたらわかるわけ?」
「まぁ、この件はあとでいいわ。とりあえずさっきの攻撃でHPが相当減っているはずよ。回復薬使わないと」
「それなら任せてよ、俺が大量に持っているから。ほら!」
俺はアイテムボックス内から回復薬(小)を一つ取り出した。
「ありがとうございます、ロバートさん。ほらお兄ちゃん、飲んで」
「う、ありがとう」
エディが回復薬(小)を飲むと、見る見るうちに腕の傷はふさがれ、顔色も元気になった。これで一安心だ。
「エディ、あなたのステータスのことだけど、これが終わったらゆっくり見てあげるわ。私なりに心当たりがあるのよ」
「え? どういうことだ、それ?」
「ふふ、今は秘密。それよりさ、まだ着かないの?」
「ごめんなさい、もうすぐのはずなんですけど……」
鍾乳洞はまだ続いている。かなり進んだが、まだノーラの父がいる場所まで遠いようだ。
「とりあえず先に進むしかないわね。エディ、大丈夫? 歩ける?」
「平気さ。それよりノーラも怪我とかしていないか?」
「私は大丈夫よ。だけど……」
ノーラが何か言いたげな様子だ。
「どうしたの、ノーラ?」
「あの……ずっと歩きっぱなしだったから、この辺で休憩しませんか?」
「休憩だって? ノーラ本気で言ってんのか?」
休憩か。確かに歩きっぱなしだったけど、このタイミングでノーラがそれを言うか。
「ノーラ。気持ちはわかるけど、あなたのお父さんの安否がわからないのよ。休んでいる暇があると思って?」
「そ、それはわかっています。だけど、これ以上歩き続けるのもちょっと。ほんの少しだけでいいんです、あそこの岩場あたりで休憩しましょう」
ノーラが指差した先には、人が座れるくらいの大きさの岩がゴロゴロと転がっていた。なるほど、休憩には持って来いだな。
だけど、なんか変だ。俺はずっと抱いていた不安感がさらに大きくなった。
(なんでこんな場所にこんな岩場が?)
「どうしたの?」
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