第五十七話 ロバート達に待ち受ける罠
鍾乳洞の奥深く、ベッドがある小部屋にコルネ村の村長は閉じ込められていた。浮かない顔のままベッドに腰かけている。彼は娘のことが心配で仕方ない。
そこに一人の金髪の男が、食事を持って入ってきた。
「おい、飯だぞ。食え」
「……今は食べる気がしない」
「馬鹿言うな。せっかくお前の娘だけは逃がしてやったのに、飢え死にして悲しませたいのか?」
「そんなことは……」
「それに嬉しい知らせもあるんだ」
「嬉しい知らせ?」
「そうさ。お前が討伐を依頼したあの大蛇、倒されたみたいだぜ」
その言葉を聞いて、村長は即座に立ち上がり目の色を変えた。
「本当か、それは!?」
「嘘じゃないぜ。まぁこれでお前の村も安泰だな」
「あぁ、よかった……それじゃ、私の娘は?」
「お前の娘も無事だ。討伐した奴らをここまで連れてきているよ、約束通りな。全く素直でいい女の子だぜ」
「兄貴、今いいっすか?」
部下が部屋の扉を少し開けた。
「いいぞ、なんだ?」
「新しい情報っす。ノーラって子が連れてきているのは、三人の戦士みたいですぜ」
「たった三人? それでよく倒したな。内訳は?」
「剣士が一人で弓使いが一人、さらに魔道士が一人っす」
「なるほど、まぁオーソドックスな組み合わせか」
「あと、もう一つ気になる情報もあって、これがその……」
部下が目線をそらしながら言いよどんだ。
「なんだ? 言え、どんな情報だ?」
「はい。そのぉ、剣士の見た目が貴族っぽい奴って言ってました」
その言葉に金髪の男は反応した。
「貴族だと?」
「はい。しかも子供みたいで……」
「貴族の子供……まさか!」
金髪の男が立ち上がった。
「ロバート・ヒューリックか!?」
「いや、まだ断定はできないっすけど……」
「ロバートに違いねぇよ! あの野郎、どんな方法でアナコンダを倒したか知らねぇが、今度という今度は許さねぇ。ぶっ潰してやる!」
「兄貴、それだと少々計画がこじれちゃうんじゃ」
「計画? あぁ、そんなことはわかってる。あいつらを罠にはめて、アナコンダのコアを奪って、俺達が討伐の報告をする」
「はい、そうっす。そうすれば討伐報酬は俺達のものっすからね」
金髪が村長の顔を睨んだ。
「た、頼む! お前達の言う通りにする。本当のことも言わないと誓う、だから……」
「あぁ、そうだな。お前は俺達の言う通りにしろ。それ以外のことは何もするな、いいな?」
「兄貴、仮に剣士がロバートだったとしても、まずアナコンダのコアを奪うことが最優先っすからね」
「言われなくてもわかっているさ。それよりてめぇらも準備に抜かりはねぇな?」
「バッチリっす。すでに何人か尾行させています。奴らが罠にかかったのを見計らって、そいつらがアナコンダのコアを奪う」
「ちょっと待ってくれ! 私の娘も罠に巻き込む気か」
金髪が村長に詰め寄り、顔面を殴った。
「ぐわぁ!」
「お前は黙ってろ! 罠を仕掛けるといっても、眠らせるだけだ」
「ね、眠らせる? アナコンダを討伐した戦士だぞ、そう簡単に……」
「ふふ、そう心配すんな。ほら」
部下の男が笑いながら、何やら怪しげな形をした壺を袋から取り出した。
「その壺は……?」
「ふふ、世にも珍しい壺だ。〈昏睡の壺〉と言ってな。どれだけ強力な戦士だろうと、この壺の睡魔からは逃れられない。こいつを使えば、あの戦士どももあっさりお寝んねさ」
鍾乳洞に入り歩き始めて二十分、俺達は鍾乳洞の中間部あたりまで来ていた。
俺が落下した地点から、さらに南に百メートルほど離れている。この辺りまで来ると、出てくるモンスターは数段格が上がる。
「みなさん、何か来ます!」
ノーラが叫んだ。目の前から、翼を広げた大きなコウモリ何羽も飛んできた。
「アイアンバットよ! 気を付けて、血を吸われるとHPが回復しちゃうわ」
「飛んでる敵なら私に任せて!」
早速出てきたのはコウモリ型モンスターのアイアンバットだ。大きさはそこまでではないが、「アイアン」は「鉄」を意味する。つまり鉄のように固い防御が売りのモンスターだ。
パメラが弓矢で攻撃するも、鍾乳洞内部だから暗いし、やはり命中しても一撃ではやられてくれない。
「さすが固いわね」
「魔道士がいるのを忘れないで、〈アンスティフン〉!」
エイダが魔法を唱えた。〈アンスティフン〉は敵の防御を下げる魔法だ。これならパメラの弓も通りやすくなるな。
「エイダ、無茶しないで。さっきまで〈フローティングボード〉移動させてたでしょ?」
「これくらいなら心配ないわ。パメラは攻撃に集中して、あとロバートも援護してよね」
「あぁ、わかってるよ。ノーラ達は下がっててね」
俺とパメラの連携でバッタバッタとアイアンバットをなぎ倒していった。もはや俺達の敵じゃないな。
「すげぇ、あんたら本当に強いんだな」
エディは俺達の強さに感動している。そういえば、戦っているところを見せたのは初めてだな。
「お兄ちゃん、これでわかったでしょ? この人達の実力は本物よ」
「そうだな。だけど俺だって戦士だ。あんたらに頼りきりなのも悪いから、助太刀するぜ!」
「あなたも戦えるの?」
「そうさ。この腰の剣は飾りじゃないんだ、ノーラも見ててくれ」
「おい、無茶すんなよ」
エディは強気に持っていた剣を鞘から抜き、アイアンバットに斬りかかる。
「うおおおおお!!」
カキィン!
金属同士が衝突する音が聞こえた。なんと、エディの持っていた剣の刃先が折れて、地面に落下した。
「ヤバい!」
「お兄ちゃん、危ない!」
「ぐわあああああ!!」
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