第五十六話 ノーラは隠し事をしている?
ちゃんと〈コスモソード〉の補正で二倍になっている。いやぁ、何度見てもすごいステータスだ。これでまだレベル19だから恐ろしい。
そして割り振り値もまだ37万近くあるな。上げたいのはやまやまだけど、とりあえず備えあれば憂いなしだから、まだ残しておこう。
「ねぇ、まだ終わらないの?」
エイダの声が聞こえた。自分のステータスのカスタマイズに夢中になってしまった。
「あぁ、ごめん。待たせちゃったね」
「ふふ、それじゃお楽しみの時間ね。いい、覗いて?」
エイダが不気味な笑みを浮かべながら、杖の先端を俺に向けた。多分断っても無駄だろうな。
「あぁ、いいけど……」
「もうエイダったら、少し落ち着いて」
「ふふ、じゃあ遠慮なくいくわ。〈アプレイザル〉!」
「エイダさん、止めて!」
エイダの杖からいくつもの魔法陣が飛び出したその時、ノーラが声をかけた。一体どうした。
「ノーラ、どうしたの? 急に止まれって?」
「ごめんなさい。鍾乳洞が近づいたので、〈フローティングボード〉を止めてほしいんですが」
ノーラの言う通りだった。大きな洞窟の入り口が徐々に近づいてきた。そういえば、さっき俺はここから出てきたんだっけ。
「あぁ、気が付かなかったわ。ちょっと揺れるから気を付けて、〈ブレーキ〉!」
エイダの言葉で〈フローティングボード〉は減速した。そういえば〈フローティングボード〉の移動魔法は、車の運転用語をそのまま用いているんだったな。
「ロバート、あなたのステータスは後で見せてね」
「わかったよ。それじゃあ、行こうか」
〈フローティングボード〉から降りて、俺はそのまま洞窟の入口へ進んだ。エイダは〈フローティングボード〉を再び小さくし、ローブの内ポケットに入れていた。
「あの……ロバートさん」
「ん? なんだい、ノーラ?」
突然ノーラが声をかけてきた。何か言いたげだな。
「その……アナコンダを倒してくれて本当にありがとうございます」
「あぁ、そのことか。お礼なんかまだいいよ、それより君のお父さんを探すほうが先決だ。この鍾乳洞の奥にいるんだろ?」
「はい、それは間違いないです。でも……」
ノーラは奥歯にものが挟まったような言い方をしている。
「何が言いたいんだ? もしかして強力なモンスターが潜んでいるとか?」
「いえ、違います。そうじゃなくて……」
その時、突然ノーラの表情が変わった。思わず彼女は口を閉じる。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「いえ、大丈夫です。なんでも……ありません」
いや、その様子だとなんでもないことないだろう。一体ノーラはどうしたんだ?
ガサッ!
突然背後で物音が聞こえた。
「誰!?」
パメラも気づいたのか、即座に振り返って弓を構えた。背後の草木が生い茂っている場所あたりが怪しい。俺も注意深く見つめた。
バサッ!!
何かが上空に飛び立った。よく見たらただの鳥だった。
「もう、驚かさないでよ」
「パメラ、あれ今夜の夜食にしない?」
「駄目。ずっと鶏肉続きだったから、さすがに勘弁」
「冗談よ。それはそうと、洞窟に入りましょう」
エイダもさらっととんでもないことを言い出すな。
「あの……私が道案内します。ついてきてください」
ノーラが先導して鍾乳洞に入っていった。
「おい、ノーラ。お前が先に行くことないだろ? 罠とかあったらどうするんだ、俺が先に行くよ」
兄のエディがノーラの前に移動した。
「駄目! 私が先導しないと!」
「え? なにそんなにムキになってんだ」
「ごめんなさい。でも、やっぱり駄目! 兄さんも私の後をついてきて、私は平気だから」
ノーラは意地でも先導したいようだ。確かに一人の少女に薄暗い鍾乳洞の奥を先に行かせるのは、ちょっと無理があるな。
「ほら、こういう時はちゃんと男を見せてあげなさい」
パメラが小声で話しかけてきた。男を見せろか、仕方ないな。
「ノーラ、気持ちはわかるけど、こういった洞窟はどんな罠が仕掛けられているかわからないんだ。俺が先導するよ」
「ロバートさん」
「そうそう。遠慮なんかしちゃだめよ、彼はものすごく強いんだから!」
「はは、そうだね」
褒めてくれるのは有り難いが、なんてざっくりしたほめ方だ。もっとまともな言い回しをしてほしいな。
「……わかりました。では私が道順を教えますので、その通りに進んでください」
「今更だけど、あなたちゃんとこの鍾乳洞の地図把握している?」
「はい、それは大丈夫です。では行きましょう、しばらくはこのまま真っすぐ進みます」
ノーラが出発を促した。だけど俺がノーラのそばを通って、前に出ようとしたその時だ。
一瞬だが、ノーラがすごく悲しそうな顔をしていた気がした。
俺の気のせいだったかな。
もしかして彼女はまだ何か隠しているのだろうか。それとも俺の杞憂か。
さっきからずっと引っかかっている。なんだろうか、えも言えぬ不安が消えないまま俺は歩き始めた。
ロバート達が鍾乳洞の奥に進んでいくのを、背後から複数の男達が見届けていた。
「……行ったな」
「あぁ。それにしても、あの小娘。俺と一瞬だけ目が合ったぜ、危うくバレるところだった」
「まったくだ。捕まえていた鳥を逃したからなんとか誤魔化せたが、これじゃ兄貴に怒られるな」
「それよりどうする? このままじゃあの小娘も罠にかかるかもしれねぇぜ」
「そんなこと俺に聞くな。あの小娘は案内役にすぎねぇ、大事なのはアナコンダのコアだ。これさえ奪えれば……」
「それじゃ俺達もあいつらを尾行するぞ。気づかれないように、そっとだぞ」
男達は音を消して歩き始め、ロバート達のあとを尾行し始めた。
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