第五十三話 初めての〈フローティングボード〉
俺は全員を呼び止めた。
「どうしたの、ロバート? 何がおかしいわけ?」
「いや、金目当てで誘拐っていうけどさ。そもそも金が欲しかったら、盗めばいいだけで誘拐なんかする必要ないんじゃないか……」
俺が思っていたことを言うと、パメラとエイダも足を止めて考え込んだ。
「そういえば……確かにそうね」
「ごめんなさい、言ってませんでした。実は金貨は家の地下の金庫室に大事に保管されてあるんです」
「なるほど。つまりその金庫室の鍵を村長がどこかに隠して、その隠し場所を白状させるため誘拐したわけね」
「そういうことです。理解してくれましたか?」
「あぁ、わかったよ。ノーラ、ごめん。変な疑いもっちゃって」
「いいんです、私も説明が足りませんでした。では、改めて行きましょう」
だけど俺はまだ拭い切れない疑問が残っていた。
「ふふ。わかってるわよ、あなたの思ってること」
「え? なんのこと?」
エイダが小声で話しかけてきた。俺が思っていることがわかるのだろうか。
「鍵破りできる魔法があるってこと……」
「鍵破り、〈ブレイクロック〉のことか?」
確かにその魔法があれば鍵を破れる。
といっても高度な魔法だから、村長をさらった連中に都合よくそんな魔法が使えるとは限らない。
「そう、それ! さすがロバートね、魔道士でもないのに魔法に詳しいなんて」
「いや、これも家庭教師から教わったおかげで……」
「あなたの家庭教師ってどんな人なの? 一度でいいから会わせて……」
「ちょっとー。何こそこそ話してんのよ?」
パメラが横から話しかけてきた。
「うわ、パメラ! おどかさないでよ!」
「楽しそうで何よりだこと。お邪魔だったかしら?」
「そ、そんなんじゃないから。ねぇ、ロバート?」
「あぁ、そうだね。別に大した話じゃないよ」
「ふぅん、それよりさ。このまま歩きだと大変じゃない?」
「あ、そうだった……」
エイダが何かを思い出したように、突然ローブの内ポケットを探りだした。左手で取り出したのは、小さな円盤型の物体。
だが取り出した直後、エイダが杖でその円盤を小突くと、見る見るうちに巨大な円盤と化した。
「こ、これは!?」
「ロバートも見るのは初めて? これが〈フローティングボード〉よ!」
「すげぇ! 確かそれに乗ると高速で浮いて移動できるんだろ?」
「あら、あなたも知ってるの? じゃあ話が早いわ、全員これに乗って……」
突如エイダが口を閉ざした。
「どうしたの、急に黙って」
「ごめん、魔力残ってないわ」
「え? それじゃあ……」
なんてこった。さっきのアナコンダ戦で消耗していたから無理もない。
「ご心配なく。私が魔力回復薬持ってます!」
ノーラがどこからともなく赤紫色の液体が入った透明の小瓶を取り出した。用意周到だな。
「ノーラ、助かるわ。これだけあれば移動もバッチリよ」
「よし! それじゃ、レッツゴー!」
俺達五人が乗った〈フローティングボード〉はそのまま浮上し、高速で移動した。
すごいな、これは。俺もこの世界に来て初めて乗る。馬車よりも快適だ。それに風も気持ちいい。魔道士は味方にいると本当に心強い。
「ふふ、気に入ったみたいね」
「最高だよ。実は初めて乗るんだけど、意外とスピード出るんだね」
「当り前じゃない。なんたって私はランクAの魔道士よ!」
「もう、すぐ調子に乗るんだから」
「すげぇな。ロバートの兄ちゃんもそうだけど、あんたら二人も相当腕が立つ戦士なんだな。見直したぜ」
「あ、あんたらって……その言い方はやめなさい」
「ごめんなさい。またお兄ちゃんの悪い癖が出ちゃいました」
やれやれ、ノーラの兄も相変わらずだな。
「そういえば、まだ自己紹介してなかったな。俺の名前はエディだ、そして妹のノーラ。改めてよろしくな」
「よろしく、エディ。私はパメラ・シュナイダー、そして魔道士のエイダ・ハルスウェアよ」
「あの……差し支えなければ、ステータスを少し見せてもらえませんか?」
ノーラが突然質問した。その言葉にエイダの表情が変わった。
「私達のステータスを見せろって?」
「あ! ごめんなさい、そうですよね。迂闊に他人に自分のステータスは教えられませんよね。今の言葉は忘れてください」
「あぁ、ビックリした。ロバートもうっかり自分のステータスを他人に見せちゃ駄目よ」
パメラが俺に忠告してくれた。言われなくてもわかってはいるが、俺は特別なんだよね。むしろ巨大なステータス値を堂々と見せたいくらいだ。
そういえば、ステータスで思い出した。アナコンダを倒してレベルが上がっているはずだ。早速ステータスの確認だ。
(ステータスオープン!)
――――――――――――――――――――
レベル19
HP:650780/650780
MP:0/0
攻撃:20238
体力:65078
防御:14210
素早さ:100
器用さ:0
魔力:0
跳躍:110
魔法防御力:0
状態異常耐性:1000
割り振り値:473920
――――――――――――――――――――
うわぁ、これはすごいな。
レベルは19に上がっていた。さすが強敵アナコンダ、一気に3も上がるとは。
だけどこれでも少ない気がする。もし俺がソロでアナコンダを倒していたら、20くらいまで上がっていたはずだ。
原因はパメラとエイダだ。あの二人が先にアナコンダに先に大ダメージを与えていたんだ。そうでなきゃ俺の剣の一振りでとどめはさせない。
「やったー、レベルが上がってるわ!」
「私もよ、さすがアナコンダ。大した経験値ね」
「でも倒せなきゃ意味がなかったけどね。改めてお礼を言うわ、ロバート」
パメラとエイダもステータスを確認してる。そしてレベルも上がっているようだな。
二人のほうが俺よりレベルが高いから、次のレベルに必要な経験値も俺より多いはずだ。ということは、二人に相当経験値持っていかれたな。
まぁ、いいか。ここまでステータスが巨大になったら、ほかのメンバーにある程度経験値を奪われても大丈夫さ。
ということで、今度は俺のステータスの確認だ。やはりというか、割り振り値がとんでもない数値になっている。
アナコンダを倒す前に攻撃に1万ほど振っていて、まだ残り1万5千近く残っていた。
そしてレベルが3上がったことで、今度は46万近くも増え合計47万を超えた。普通に考えればおかしい。
テストプレイヤー時代に自分が組み込んだある計算式によって、ここまで割り振り値を巨大にしてしまった。
第五十三話ご覧いただきありがとうございます。次回はテストプレイヤー時代の回想から入ります。
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