第四十六話 助けを求める少女
後半で再びパメラ・エイダ視点になります
目の前の男の子と会話が成立しない。そうか、俺の独特な言葉遣いがうまく伝わっていないんだな。
「あぁ、すまない。タメっていうのは、同年齢ってことだ。って、それよりなんだよ? 武器を捨てろだと?」
「そうだよ。お前が敵じゃねぇって言うんなら、おとなしく武器を捨てて手を上げな」
「意味がわからないな。俺が敵じゃないってどういうことだよ?」
男の子は依然弓矢を構えたままだ。敵意を消す気配がない、一体どういうことなんだ。
「お兄ちゃん、その人は悪い人じゃないと思う」
今度はどこからか女の子の声が聞こえた。さっきかすかに聞こえた女の子と同じ声だ。
「ノーラ、黙っていろ! こいつは信用できねぇよ」
「大丈夫よ、私を信じて」
「おい、ノーラ!」
今度は岩陰から小さな女の子が出てきた。背丈からしてまだ十歳くらいか、さっきの会話からして兄妹といったところか。
なんで小さい子供二人がこんな危ない洞窟に。なんだか嫌な予感がするな。
「あの……もしかして戦士さん、ですよね?」
「そうだけど、君達こそこんな場所で何してるんだ? ここは危険だ、早く外に出ないと」
「そんなこと言われなくてもわかってるよ。だけど、アイツはなんとしても倒さないといけないんだ!」
「アイツ? まさかアナコンダのことか?」
咄嗟にアナコンダの名前が出たが、その言葉を聞いて兄妹は表情を変えた。
「そ、そうです! お願いです、どうか私達の代わりにあの大蛇を倒して!」
「駄目だ、ノーラ! こいつだってさっきの奴らの仲間かもしれねぇぞ」
「違うわ! 私にはわかる、この人はあの連中とは無関係よ」
「どうしてそう言い切れるんだよ? こいつの身なりからして、明らかに貴族だぜ。それにさっきも見ただろ? こいつ空から降ってきたみたいだぜ」
俺が天井の壁を壊して落ちてきたことも見られていたか。まずいな、それだと確かに怪しまれるかも。
「まぁまぁ落ち着いてくれよ。俺は敵じゃないって。実はギルドでアナコンダ討伐の依頼を受けてね。報酬金目当てで退治しに来たんだ」
「やっぱりそうだったんですね。よかった、お父さんがさらわれたからどうしたものかって……」
少女の言葉に俺は食いついた。
「お父さんがさらわれた? 一体どういうことだ、それ?」
「おい、ノーラ! こいつは信用できねぇって言ってるだろ? それ以上余計なこと言うな!」
「でもお兄ちゃん、私達二人でどうにかできる問題じゃないと思うわ。大蛇もそうだけど、お父さんも助けないと……」
何やら事情がかなり複雑なようだ。アナコンダ討伐に来たつもりが、妙な厄介事に巻き込まれそうだ。
しかし助けを求めているのは、俺より年下の少女だ。ここで断ったら男がすたるな。よし、ここは腹を括るか。
「わかった、お嬢ちゃん。俺で良ければ力になるよ、遠慮せず話してくれ!」
「本当ですか? よかった、私のお父さんは……」
「駄目だ! ノーラがいいって言っても、俺は許さねぇぞ!」
どうやら兄の方は相当な頑固者のようだ。まだ俺を信用していないらしい。
仕方ない、やりたくないがここは従うしかなさそうだ。
「わかったよ、武器を捨てればいいんだろ?」
俺は鞘に下げていた〈コスモソード〉を手に持った。
〈コスモソード〉を外すと、ステータス二倍の補正がなくなる。このタイミングでアナコンダが襲ってくる可能性もある。今のうちに攻撃と防御に念の為1000ずつ割り振り値を振っておくか。
ステータスが上がったのを確認してから、俺は〈コスモソード〉を地面に放り投げた。
「どうだ? これで信じてもらえたか?」
「うっ……お前、まさか……」
さすがの兄も呆気にとられたようだな。
「丸腰の相手に矢を向けるなよな」
「お兄ちゃん、言ったでしょ? この人は信用できるって!」
兄貴の方はさすがに何も言わなくなった。弓も下げてくれた。
「さてと、これで遠慮なく話してくれよな」
「はい。話せば長くなるんですが……」
ロバートが南の空へビッグイーグルと一緒に飛んでいったのを、エイダとパメラも見逃さなかった。二人とも急いでロバートのあとを追っていた。
「信じられない! 空を飛ぶどころか、ビッグイーグルを乗り物代わりにするなんて」
「おそらくあれは〈レビテーションシューズ〉ね。随分と便利な道具をお持ちだこと」
「〈レビテーションシューズ〉? なにそれ?」
「空中を浮遊できるようになる靴よ。〈ハイジャンプ〉という特殊スキルが使えるようになってね、一分間だけ空を自由に移動できるようになるのよ」
「ちょっと待って! その靴を履いただけじゃ、あんなに空高くまで飛べないでしょ?」
「あの子のステータス覚えてるでしょ? 跳躍が100以上もあったじゃない」
「そういえばそうね……役に立たないステータスって言われていたのに……」
パメラは疑問を捨てきれない。跳躍は、空を飛ぶ高さを伸ばすだけのステータス。戦闘向けでないため見向きもされないステータスとされていた。
「あの子、本当に賢いわ。跳躍のステータスを100以上も上げていたし、なにより〈レビテーションシューズ〉も持っている。一体何なの? こんなワクワクするような戦士は初めて、もう是が非でもパーティーに加えたいわ!」
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