第四十五話 鍾乳洞到着
予想通りだ。相当な衝撃音が響いたが、全く痛みがない。試しにステータスを覗いた。
HPは650780のままだ。やった、遂に落下時のダメージをゼロに抑えられたぞ。これでいくらでも空が飛べる。
でもその時だった。ピキピキと妙な異音が響いた。
「何の音だ? って、これは!?」
音は下から響いていた。足元を見たら、なんと落下した巨大な岩に細いヒビ割れがいくつも生じていた。このままだと岩が崩れる。
だけど遅かった。ヒビ割れが岩の表面の端まで到達すると、直後岩はもろくも瓦解してしまった。
俺の体も岩とともに落下していった。予想外なことだ。一体なんで俺が落下しただけで、岩が破壊されたんだ。
多分俺のステータスに理由がある。さっき防御に5000も割り振っていたが、その前にも1100振っていた。
この時点で防御の合計が6105、さらに〈コスモソード〉の補正で二倍になるから、12210に上がる。
防御12210は確かに高すぎるな、本来なら落下してダメージを喰らうはずなのに、ここまで防御が高いと、俺の体のほうが岩よりも頑丈になっていたんだろう。推測だけど。
巨大な隕石が降ってきたと例えたら、わかりやすいかもしれない。俺が岩を破壊してしまった、ということになるんだな。
などと考えていたら、いつの間にか俺は暗い洞窟の中に落ちていた。岩の下は巨大な洞窟になっていたのか。
「こんな場所に洞窟が? 待てよ、確かアナコンダの居場所って……」
俺はハッとした。アナコンダは南の鍾乳洞に出現するとのことだ。そして俺は南へ向かっていった。
今の俺がいるこの洞窟こそ、その鍾乳洞じゃないか。
なんてことだ、まさか目的地にすでに到着しちゃったなんて。さすがにビッグイーグルをタクシー代わりにしていたとはいえ、少し早く着きすぎたな。
「それにしても冷えるな。さすが鍾乳洞って感じだ。って、しまった! ステータスを強化しないと!」
のんびりしている暇はなかった。この鍾乳洞に間違いなくアナコンダはいる。早く攻撃を強化しないと。
でもその時だ。俺が落ちてきた穴から太陽の光が差し込んできたが、その太陽の光で巨大な影ができていた。
俺のすぐ後ろを動いていた。咄嗟に振り向くと、目の前にいたのは意外なモンスターだ。
「シャアアアアアアア!!」
「なんだ、ネズミかよ」
アナコンダではなかった。出てきたのは昨日倒したアリゲーターベアと体の大きさは同じくらいの、巨大なネズミ型のモンスター、名前はヒュージマウスだ。
正直こいつもそこまで強くはない。レベルは10で、さっき空で出会ったビッグイーグルと大差ない強さだ。
獰猛な見た目とは裏腹に、呆気ないほどの弱さで拍子抜けするプレイヤーも多い。鋭く尖った爪も見掛け倒しに過ぎない。
襲いかかってきたが、やはり俺の敵じゃなかった。俺の体をひっかいた爪も、無惨に砕け散る。
「ぎぃええええええええ!!」
「お前の相手をしている暇はないんでね。邪魔だからどっかに行ってくれないか?」
しかし目の前のネズミは言うことを聞かない。今度は飛びかかってきた。
咄嗟に体が動いた。〈コスモソード〉を鞘から抜いて、真横に振り抜くと呆気なくヒュージマウスはスライスされた。
「本当は倒したくないんだが、素直に逃げないお前が悪いんだぞ」
スライスされたヒュージマウスの体を見る。無惨な肉片だが、よく考えたらこの肉片も貴重な戦利品になるんだ。試しに一つ拾ってみた。
『ネズミの肉を入手しました』というメッセージボックスが表示された。
本来の狙いのモンスターはアナコンダだが、ヒュージマウスの肉も貴重な素材になる。何より肉だから、料理の具材としてよく売れる。もちろん俺自身の食料にもなるから、全部入手しておくか。
しかし調理師が仲間にいない状況だと、どれだけ入手してもただの肉でしかない。それか〈調理〉スキルがあればなぁ。どこで手に入るんだっけ。
ヒュージマウスを倒したものの、さすがにレベルは上がらないか。今の俺はレベル16だから当然だが、そういえば次のレベルに必要な経験値はどうやったら見れるんだ。
などと考えながら、ネズミの肉を全部アイテムボックスに入れていると、どこからか変な声が聞こえてきた。
「なんだこの声? 女の子……?」
声がした方向へ歩き出した。すると地面からせり上がった岩で、いくつも隠れる場所ができていた。そこへ近づこうとしたその時だ。
シュッ!
俺の顔の真横を鋭く尖った何かが横切った。後ろで壁に直撃した鋭い音が響き、地面に落ちた。なんとそれは矢じりだった。
「矢? まさか俺を攻撃している? おい、出てこい! 俺はモンスターじゃないぞ!」
俺が呼びかけてもしばらく無言だった。明らかに人が隠れているはずだ。
「おい、聞こえているだろ? 俺はモンスターじゃないって、襲わないから安心しろ」
するとやっと人の頭の部分が岩陰から出てきた。やっぱりいたか。しばらくして現れたのは、まだ小さい男の子だ。
「お、男の子?」
「男の子じゃねぇよ、俺はもう十三だ。お前だってどう見ても子供だろ? しかもその服装、どう見ても貴族だな。なんで貴族の子供がこんな場所にいるんだよ?」
「え? そんなことって……」
いや、よく考えたらそうだった。俺はロバート・ヒューリック、十三歳でまだ子供だ。十三歳、目の前の子供とタメじゃないか。
「はは、なんだタメじゃないか。そんなカッカしないで、仲良くしようぜ」
「タメって何だよ? わけわかんねぇこと言ってねぇで、武器を捨てろ!」
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