第四十四話 空飛ぶタクシー
来た。俺を獲物と捉え、猛スピードで接近してきた。距離が狭まってきた。
間近まで来たところでビッグイーグルは態勢を変えて、巨大なかぎ爪を俺に向けた。鋭く尖った爪が俺に迫る。
ビッグイーグルのかぎ爪攻撃だ。上方から俺の体をかぎ爪で引き裂くつもりだな。
だけどそうは問屋がおろさない。ビッグイーグルのかぎ爪は俺の体に当たったものの、無惨にも砕け散ってしまった。
「ぎぃえええええええ!!」
大事な爪が台無しになったビッグイーグルの悲痛な叫び声が響く。奴の攻撃はもう俺には通用しない。
事前にステータスの防御に100も割り振っていたからね。ビッグイーグルは最大でもレベル7のモンスター、その程度のモンスターの攻撃なら、これくらい防御を上げておけばまるで通じない。
念の為ステータスを見たが、やはりHPは一切減っていない。計算通りだ。
「悪いけど、しばらくタクシーになってくれよ」
ビッグイーグルがかぎ爪で攻撃したのは絶好の機会だ。足を俺に向けてくれたので、そのまま奴の脚を手で掴んだ。
その時、ちょうど俺がジャンプして一分が過ぎた。〈レビテーションシューズ〉の効果が切れ、重力の影響で一気に落下しようとした。
でもギリギリセーフだ。間一髪、ビッグイーグルの足を掴んでいたから、もう落下はしないぞ。
「がぁああああああああ!!」
またもビッグイーグルの叫びが轟く。爪を砕かれた上に、足を掴まれるとなったらそりゃこうなる。
足を掴んだ瞬間はバタバタと暴れまわった。俺を振い落そうとしたが無駄だ。諦めたビッグイーグルは、そのまま俺と一緒に南へ向かって飛んで行った。
ビッグイーグルの巣は南の山にある。そのすぐ近くに鍾乳洞がある。つまりこのままビッグイーグルに捕まった状態で飛べば、目的地は目の前だ。
「こりゃいいや。ビッグイーグルー! 風より速いー!」
昔流行ったアニメソングを歌いながら、俺もビッグイーグルと一緒に南へ飛んだ。いやぁ、これは最高だ。
だけど浮かれている場合じゃない。まだやるべきことがあった。南の鍾乳洞までは30km以上は離れているから、まだ時間がかかる。その間にステータスを強化させよう。
「とりあえず、アナコンダ相手だと状態異常耐性はかかせない。あとは防御の強化と攻撃の強化か」
アナコンダは巨大な蛇だ。蛇モンスター特有だが、必ずといっていいほどステータス異常の毒攻撃をしてくる奴が多い、もちろんアナコンダも同様だ。
所持アイテムに〈毒治療薬〉こそあるが、所持数は一つだけだ。ストックがこれだけだと、心もとないからそもそも耐性を強化しておく必要がある。
俺は状態異常耐性に割り振り値を500ほど振った。多分これで毒は無効化できる。
次は防御だ。なんと言ってもアナコンダは七つ星ランク、これまで出会ったどのモンスターよりも強力だ。与えてくる攻撃も桁違いだ。
もちろん今の俺はHPが60万を超えているから、そうそうダメージを食らっても死なないだろう。それでも一撃で最大1000くらいは喰らう可能性は十分ある。
防御は1000くらい割り振ろう。これでアナコンダからの攻撃もほぼゼロに抑えられるはずだ。
あとは攻撃だ。正直今の攻撃の数値でも問題ないとは思う。問題なのはアナコンダのHPだ。
奴のHPは約50万だったはず。高すぎるが、本来集団のプレイヤーで戦う前提のモンスターだ。簡単に倒されないよう、HPも尋常じゃない高さだ。
そんな相手を俺は一人で倒そうというんだから、本来無謀な挑戦だ。こうなったら、極振りか。
「残りの割り振り値を全部攻撃に……いや、待て待て!」
だけどそうなると、俺のステータスはかなりバランスが悪いことになる。よく考えれば、器用さと魔力と魔法防御はゼロのままだ。
これだけ割り振り値があるんだから、残り全部を攻撃に振るのはもったいない。これからはどんな強敵と戦うか予想はできない、だから割り振り値はある程度ストックをしよう。
「1000程度は残しておくか。となると、攻撃に振るのはえぇと、駄目だ。暗算ができない」
とりわけ算数が得意な方でもないし、今は鳥に捕まっている状態で集中できない。スマホを片手に持っているんなら、簡単に計算できるんだけどな。
ヒュゥウウウウウウウ!
突然風が強くなびいた。気づいたら、俺が捕まっていたビッグイーグルが速度を高めていた。
「なんだ、急にどうしたんだ? って、あれは?」
はるか前方から、大きな鳥らしき影が二体ほど飛んできた。なんとビッグイーグルが二体、速度を上げたのは仲間と合流するためだったのか。
「きしゃあああああああ!!」
ビッグイーグルは前方にいた二体に特攻する勢いで、急加速した。しまった。あの二体に俺を投げ飛ばすつもりだ。
「このままじゃまずいな」
すでに〈レビテーションシューズ〉の効果は切れた。落下するしかない状態だと、さすがにビッグイーグル二体の相手は厳しい。
なんとかこいつから離れるしかないが、下はゴロゴロした岩が散らばっている。これは落下したら相当なダメージを食らいそうだ。
昨夜と同じ過ちはできない。仕方ない、防御を上げるしかないか。
「防御に5000。よし、これなら!」
昨日は落下時に5000もHPが減っていた。となれば、今度こそ落下時のダメージがゼロになるはず。
「ここまで案内してくれてありがとうな」
お礼の言葉だけを言って、俺はビッグイーグルの足を掴んでいた両手を離した。直後、猛烈な速度で地面に落下し、巨大な岩場の上に俺の体は叩きつけられた。
バアアアアアアアアアアアアン!!
「い……痛く……ないな」
第四十四話ご覧いただきありがとうございます。
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