第三十四話 パメラの洞察力
パメラが最後に妙な言葉を発した。
「え? 急にどうしたんだい?」
「とぼけるんじゃないの。あなたの持っているその武器、そして異常なステータス。何もかもおかしいわ、昨日だってあのカルロスを一撃でノックアウトだもの。剣以外に特別変わった装備を身に着けてもいない」
「あぁ、そのことか……」
「今こそ教えてほしいわ。あなたの強さの秘密を」
「それは昨日もレミーさんが言ってたでしょ。俺のステータスはバグってるんだよ、きっと」
「バグってる?」
「そう、バグってるんだ。それ以外ないでしょ?」
俺はパメラにそう言い聞かせた。だがパメラは納得していない様子だ。急に足を止めて、考えこんだ。
「バグってる……そんな言葉づかい初めて聞いたわ」
「え? なんだい突然?」
「あなたってなんというか、初めて会った時からそうだけど、変な言葉遣いするわよね」
急にパメラの様子がおかしくなった。変な言葉遣い、その言葉に俺はドキッとした。そりゃそうだ、なぜなら中身と言うか精神は現代日本で育ったゲーム好きのサラリーマンだから。
この世界に転生して何も考えてなかったけど、よく考えたらこの世界の言語とか知らない。間違いなく日本語ではなさそうだが、なぜか自然と俺の話す言語、そして聞こえる言葉は日本語に介される。
だけどなんというか、言葉の節々に現れる現代の若者特有の変な言葉遣いが現れていたのかな。パメラはそれを敏感に察知していたのか。
「いやぁ、どうしたの? なんで急にそんなこと言うのかな、はは……」
俺は必死で誤魔化そうとした。自分で言うのもあれだが、かなり恥ずかしい気分になる。
「私は『あなたはバグなんじゃないか?』と言っただけで、『バグってる』なんて一言も言ってない。本当珍しい言い方よね? というか、あなた“バグ”って言葉を知ってたんじゃない?」
「え!? それは……」
まずい。パメラの洞察力が鋭すぎる。なんということだ、まさにその通りだ。知っていたもなにも、前世では当たり前のように発していたんだから。
「あなたのその口ぶりからするに、今まで何度も使ってきた風に感じるわ。一体いつどこで知ったの?」
「……はは、参ったな。実はずっと前から知ってたよ」
俺は諦めた。だが本当のことを話すつもりはない。
「俺の家が名門貴族だってのは知ってるよね。優秀な家庭教師を雇ってもらってね、その人から冒険やこの世界のありとあらゆる知識を教えてもらったのさ。その時に実はバグの事実も知っちゃってね。黙っていようと思っていたけど、まさか俺以外にも知っている人がいて驚いたよ」
「ふーん、そう……」
なんとか誤魔化せたか。必死で考えたが、今はこの言い訳で精いっぱいだ。でも日本と言う国で育って、デバッグプレイヤーとしての毎日〈ロード・オブ・フロンティア〉のバグを見つける作業をしていました、なんて言うよりかはマシだろう。
「おや、あなた達は!?」
腑に落ちないパメラを見つつ、どこからか中年の男性の声が聞こえた。聞き覚えがあった。
「あれ? 商人のディエゴじゃないか?」
「これはこれは! こんなところで奇遇ですな!」
いいところに来てくれたよ、ディエゴ。パメラにこれ以上詮索されるのは気分が悪い。なんとかこの人と話し続けて、パメラの気を逸らすか。
「昨日は本当にありがとうございました。改めて礼を言わせてください」
「当然のことをしたまでだよ。ディエゴこそ、何事もないようで本当によかった」
「おお、何という紳士っぷりですか! やはり私の見込んだ通りの人だ。あなたは今まで出会ったどの貴族よりも紳士だ」
ディエゴが俺のことをべた褒めしている。さすがにここまで言われたら気持ちが悪くなるな。
「ディエゴさん、こんな場所で何してるの?」
「何してるも何も、あなた方を探していたんですよ! 私のショップへ来ていただけませんか?」
「ディエゴのショップ? 別に行くのはかまわないけど、一体どうして?」
「ふふ、それは来てからのお楽しみです」
ディエゴが微笑んだ。見た感じ、特に怪しい感じもしない。俺とパメラはディエゴについて行き、彼のショップへ足を運んだ。
ディエゴのショップはこの町の中でも特に大きかった。“生粋の大商人”という異名とも言われ、彼が構える大ショップにはどこから集めたのかわからない珍品や、高ランクの冒険者や戦士も喉から手が出るほどの装備品が置かれているらしい。
「うわぁ、凄い!」
ショップに入ると、パメラの目が輝いた。ランクAの彼女ですら目の色を変えてしまうほど、ディエゴのショップ内には魅力的な商品が多い。その証拠にまだ開店して間もないのに、もう何人もの客が入店している。
「ささ、ロバートさん、パメラさん。こっちです!」
ディエゴは俺達をカウンターの中へ入れてくれた。そしてさらに奥の部屋へ案内してくれた。まさにVIP待遇だな。
奥の部屋に入って、俺達も唖然とした。なんということか、在庫の商品があちこちに散らばっている。棚の中、棚の上までぎっしり詰まっている。
売れ残りなのか、埃まで被っている商品もちらほらある。大商人も裏では苦労しているんだな。
「はは、いやぁお恥ずかしいところを見せてしまいましたな。それはそうと、何かお飲み物でもいかがですか?」
「そうだね。じゃあ、コーヒーでももらおうかな……」
「え? なんですって?」
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