第三十三話 ロバートの壮大な夢
パメラが思わずため息をついた。そういえば今まで考えてなかった。金貨と銀貨か。
あとは銅貨もある。貨幣の価値、レートは金貨が銀貨の十倍の価値、銀貨が銅貨の十倍の価値に匹敵する。
金貨は一枚100ゴールドの価値がある。つまり銀貨が一枚10ゴールド、銅貨が一枚1ゴールド。
俺は金貨しか持っていない。多分一般社会だと銀貨や銅貨で溢れているんだろうが、なんというか俺は本当に貴族なんだな。
「因みにだけど、金貨って今何枚あるの?」
「えぇと、昨日の報酬分も合わせて……約百枚、かな?」
「ひゃ、百枚!?」
パメラだけでなく、ウェイターも驚いた。いかん、あまりこういうことは大声で言うべきじゃなかったな。
「あぁ、えぇと、ほかの皆には内緒に……」
するといきなりパメラが俺の両肩を力強く掴んだ。
「え? なに突然!?」
「本当なの? 本当に金貨百枚もあるの?」
パメラは再度聞いて来た。俺は右下に表示された所持金を改めて見る。
昨日のアリゲーターベアの報酬でもらった金貨三十枚を合わせ、さらに宿泊料をパメラの分も合わせて金貨二枚分を引いた二十八枚が加わり、合計で9800ゴールドと表示されていた。
「正確には、九十八枚かな。宿泊料の金貨二枚を除いてね」
「そう……あの、ロバート……」
パメラが真剣な表情で俺を見つめる。彼女の顔が凄く近い。
勘弁してくれ。今の今まで女性にこんな間近から見つめられる経験などしていない。いやでも緊張が高まった。まさか俺のことが。
「ちょ! パメラ、ど、どうしたの……?」
「大事な話があるの……」
大事な話だって。変な期待を抱いてしまう。ヤバいなこの雰囲気は。ドキドキが止まらない。
「お客様、お邪魔して大変恐縮ですが、朝食が冷めてしまいますよ」
ウェイターがここで口を挟んだ。パメラが振り向く。おいおい、なんてタイミングで声をかけるんだよ、空気を読め。
「ごめんなさい。ロバート、取り敢えず今は朝食をいただきましょ」
「わ、わかったよ」
俺とパメラはテーブルに座り、朝食をとった。パメラからの大事な話と言うのが凄く気になるが、今は取り敢えず朝食を堪能しよう。
朝食を食べ終わり、俺達はホテルをあとにした。滅茶苦茶うまかった。さすが金貨一枚払うだけはあるな。
「美味しかったね、朝食。あぁー、毎日あんな食事ができたらなぁ」
パメラが急に呟いた。彼女の喜ぶ顔が見れて嬉しいけど、食事中どことなく浮かない顔をしていたのは俺の気のせいじゃない。
「そうだね。それよりパメラ、さっきの話なんだけど……」
「え? 話って?」
「やだなぁ、大事な話があるって言ってたじゃないか」
あんなに真剣な顔で話していたというのに、まさかど忘れしたのだろうか。するとパメラは急におとなしくなった。
「あぁ、さっきのこと……。ごめん、そうだったね」
「俺でよければ相談に乗るよ。困った時はお互い様さ」
「…………」
また黙り込んだ。一体どうしたんだ。相談したいんじゃないのか。
「パメラ、どうしたんだ?」
「ごめん、やっぱり忘れて。さっきの話は!」
「え? 忘れてって……」
「気にしないで。冷静に考えたら、あなたに頼むようなことじゃなかったわ。ごめんなさい」
なんてことだ。彼女は急に態度を変えた。だけど彼女の様子からするに、明かに何か隠し事をしているのは間違いない。
これ以上詮索するべきか。いや、やめておこう。こういう時、無理に人のプライベートに足を突っ込むべきじゃない。
「わかった。だけど何かあったらすぐ俺に相談してくれよ」
「えぇ、その気持ちだけ受け取っておくわ。それより、あなたはこれからどうするの? 聞くところによると、実家を追放されたそうじゃない」
なんとパメラの耳にも伝わっていたか。だがここで余計な心配を抱かせるわけにはいかない。
「はは、俺のことは心配しなくていいよ。なんというか、実家の跡を継ぐだなんて俺の性に会わなくてね。俺には夢があるんだ。一人前の冒険者として、世界中を旅してまわるんだ。自由に生きたい」
「そう、なんて素敵な夢だこと」
パメラは半分呆れたような顔で俺を見た。まさかしらけているのか。
「なんだよ。俺の夢にいちゃもんつけるつもりか?」
「別にいちゃもんとかじゃないわ。なんというか、あなたと同じような夢と理想を持った青年って今まで何人も見て来た。貴族の中にもあなたみたいな人がいるんだってね。正直裕福な家庭で過ごせるということだけで、どれだけ恵まれているかあなたわからないの?」
パメラからきつい一言を言われた。確かにその通りだ。俺の人生は恵まれている。少なくともロバート・ヒューリックとしては。
もちろん普通の貴族として一生を過ごすのも悪くないだろう。だけど俺はやっぱり世界中を旅して周りたい。前世で何度も遊びつくした、〈ロード・オブ・フロンティア〉の世界に転生できた。夢にまで見た、ゲームの世界転生、こんな最高な体験は二度も味わえまい。
前世でも世界一周旅行なんてできなかった。単純に金と時間がなかったもんな。でも今は違う。俺だけが知る裏技と前世で蓄えた知識がある。
これは強力な武器だ。この強力な武器を利用しない手はない。正直俺だって無策で冒険者になるほど、肝はすわっていないからね。
「まぁ、いいわ。あなたみたいな自由気ままに行動する人間、別に私も嫌いじゃないから。それにあなた、もう私を超えてるでしょ?」
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