第三十一話 テストプレイヤー時代の遺産
翌日、俺は転生して三日目の朝を宿屋の中で迎えた。初日や二日目と違い、どんよりとした曇り空だ。そういえば〈ロード・オブ・フロンティア〉では天気も存在していたっけ。
なんとなく俺の今の気持ちを表現してくれている気がする。昨夜俺は見事にギルドの適性検査に合格した。
しかし〈レビテーションシューズ〉で大ジャンプし、ギルドの屋上に落下して器物を破損したことが原因で、報酬が天引きされた。賠償で金貨十枚は高すぎないか。
それでも四十枚は大金であることに変わりはないんだけどね。
それにしても報酬が天引きされるなんて、普通のゲームではありえないような現象だな。でもゲームの世界じゃなくあくまで現実だという証拠だよな。
因みにその後、宿に戻る途中でパメラに報酬の一部を渡した。俺の取り分は三十枚、彼女に十枚だ。
俺は新たに金貨三十枚を入手し、所持金は合計で10000ゴールドになった。かなり貯まった、これだけあればしばらく安泰だろう。
所持金については心配はない。問題はこれからどうするかだ。そう考え、さっきステータス画面を見たら、またとんでもないことになっていた。
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レベル16
HP:650780/650780
MP:0/0
攻撃力:238
体力:65078
防御:10
素早さ:100
器用さ:0
魔力:0
跳躍:110
魔法防御力:0
状態異常耐性:0
割り振り値:32768
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なんとレベルが16になっていた。恐らく昨日の適性検査でカルロスを倒したからだろう。アイツも相当な経験値だったんだな。
そして驚愕の割り振り値32768を見て、俺は震えた。いやこれは計算通りだ。俺の中ではね。
昨日レミー達が言っていた俺のステータスがバグってるという話、この数値だけを見たらそう思いたくなるね。俺はランクDだから、割り振り値は2になっていないとおかしい。
誰もが驚くこの現象、恐らくこの世界で俺だけしか知らないだろう。バグなんかじゃない、意図的に組み込まれたんだ。
いや組み込んだ、と言う方が正解かな。忘れもしない、あれは俺が27歳の時だった。
「テストプレイヤー募集中?」
27歳の夏、何気なく立ち寄ったコンビニで読んだゲーム雑誌の広告が目に入った。
新発売されるMMORPG〈ロード・オブ・フロンティア〉、それのテストプレイヤーを募集しているとのことだった。
〈ロード・オブ・フロンティア〉、その名前に俺は当然反応した。時給1000円と低めだが、某大手ゲーム会社が総力を組んで開発しているというゲームなだけに、ずっとやってみたいと思っていたところだった。
当時無職で職探しをしていた最中だった。つなぎの仕事としても悪くないと思い、応募してみた。
応募して面接を受けに行ったのは、駅からやや離れた雑居ビルの中にあったオフィスビル、開発会社ではなく外注デバッグ業務が専門の会社だった。
面接をした俺は見事に受かり、しばらくそこの会社で〈ロード・オブ・フロンティア〉のテストプレイヤーとして勤めだした。
そして俺が働き始めて三か月が経過した頃だ。俺はたまたま休憩室にてチームのリーダーをしていた佐藤さんと一緒になった。
あまり会話をすることなかったが、その日に限って佐藤さんはなぜか俺の隣の席に座った。もちろん俺に用があった。
「徳永君、ちょっといいかな?」
突然佐藤さんが俺を呼んだ。
「はい、なんでしょう?」
「実は、ちょっと大事な話があるんだよね」
「大事な話ですか?」
「ここじゃ話せないから、今日の業務が終わった後でミーティングルームに来てくれないか?」
そしてその日の業務が終わり、俺は佐藤さんの指示に従いミーティングルームに足を運んだ。
「佐藤さん、話ってなんでしょうか?」
「徳永君、今日もはまりのバグを二つも見つけてくれたね。バグ検出数は君がトップだ、本当によく頑張ってるね」
「あ、ありがとうございます!」
突然のべた誉めに戸惑った。佐藤さんはニコニコしながら話した。
「なんというか徳永君はゲームスキルも高いし、ゲームに対して誰よりも深い熱意を感じる。そんな君にぜひお願いしたいことがあるんだ」
「お願い、ですか?」
佐藤さんはここで一呼吸おいた。
「話せば長くなるんだけど、実はこれはクライアントの開発スタッフから頼まれてね。誰にもバレない裏技の案を君に考えてほしい」
「誰にもバレない裏技、ですか?」
「そう、誰にもバレない裏技……それは……」
そのあと佐藤さんから出た言葉は衝撃的な内容だった。その裏技こそ、俺が転生初日、〈開花の儀〉の直前に行ったあの行動だ。
まさか俺の考えた裏技が転生後の世界にも実現できるとはね。この裏技を無駄にしないためにも、しっかりとこの世界を隅々まで堪能しきってやるぞ。
「おはよう! よく眠れた?」
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