エピローグ24
背後の森の中から、一人の男がゆっくり歩いて出てきた。
どこかで会ったか。思い出した。今朝会ったばかりか。
「あれ? 確か……芸術家の人?」
「おや、私のこと覚えていてくれたんですね」
確かに間違いない。イヴの似顔絵を描いた芸術家フィロードだ。
一体彼女に何をしたんだ。いや、というかそもそもこの男とジュディって仲間だったのか。
「まさか……あなたが裏で手引きしていたの?」
「ご察しの通りです。彼女をこの星へ案内したのもこの私です」
なんてことだ。でも、意外と驚かないのはなぜかな。最初に見た時から、なんか怪しげな雰囲気したけどそういうことだったのか。
「みなさんの力が、地球で最も優れた頭脳と異星のテクノロジーを兼ね備えた女性にどれほど立ち向かえるか確かめさせてもらいましたが、想像以上でしたよ」
「……一体なんのためにそんなことを?」
「理由については深くお考えにならなくて結構です。ジュディは強い意志を備えた女性だから、もしかしたらと思い利用させてもらいましたが、結果は御覧の通り。あなた方の勝ちです。おめでとうございます」
「意外だな。あっさり負けを認めるだなんて、ジュディはめちゃくちゃ執念深かったのに」
「遠巻きから観察していましたが、さすがにここにいるあなた方全員と戦わせても勝負は見えています。だから私が引導を渡したんです」
「観察していたですって? あなた、彼女がもしブラックホールを暴走させたらどうする気だったの!?」
「ご安心ください、すぐに私が収縮させていました」
「それなら、ジュディがブラックホールを作る前に止めてくれたらよかったのに」
「彼女はあぁ見えて思慮深い女性ですよ、最後はあなた方の知略に敗れてしまいましたが」
「どうでもいいけどさ……あなた、一体何者なの?」
エイダがついに切り出した。俺もそれは気になっていた。
「見ての通り、ただの芸術家ですよ」
「そういう意味じゃなくて……本当の正体は……」
「……なるほど。もう隠すのは無理ですね」
「そうよ! 最初に会った時から、なんか怪しい気配していたのよね!」
「これ以上たぶらかそうなら、あなただって容赦しないわ」
「異星のテクノロジーとかわかんないけどさ、この星でこれ以上好き勝手暴れてもらっちゃ困るわね」
全員が警戒心を高めて今にも攻撃しそうな勢いだ。見た感じそれほど強そうには見えないけど、フィロードは動じず笑っている。
「マルチバースプログラムの不整合性調整アルゴリズムユニットの一部、とだけ言っておきましょう」
「……なんだって?……」
俺を含めて全員呆気にとられた。意味不明な言葉だけど、なんだろうか。妙に親密感が湧く響きだ。
「わかる言葉で説明してよ! つまり、あなたは一体……」
「ロバートさんのお友達……のお友達といえばいいでしょうか」
「……え!? もしかして……」
「ロバートのお友達……誰よ?」
「……いや……その……」
「あぁ、ほかのみなさんはご存じないのですね。まぁ、『インテグレーション』前のことですから、記憶にないのは仕方ありませんが」
「ちょ、ちょっと……それ以上は……」
まずい。スージーとイヴ以外はなんのこと話してるのかわからないかもしれないが、これ以上真相について話されたら厄介なことになるぞ。
「別に隠す必要はないでしょう。もうみなさん、戻りかけていますよ」
「戻りかけてる……え? もしかして……」
エイダもパメラもルウミラも俺の顔を見た。神妙な面持ちだ。
「……今まで黙ってたんだけどさ……」
「随分前にも、あなたに会ったことある気がして……」
「え? そ、それは……」
「記憶喪失なんて、嘘でしょ?」
「…………」
俺は何も言い返せなかった。なんてことだ。
「彼らは聡明です。あなたが思っている以上に」
「……そのようだな……」
「ロバート……」
「みんな、黙っていてごめん。実は……」
これ以上隠すことはできないな。俺は全て打ち明けることにした。
「……ってなことがあってね……」
「そんな……そんな壮大なことが……一か月前に起きていたなんて……」
「でも……確かにそんな記憶が……うっすらとあるような気がする……」
「道理であなたの記憶がのぞけないはずだわ。あの封印、誰が仕掛けたのかしらね……」
「……それは……」
「ね? やっぱり私の予想通りだったでしょ」
後ろにいたイヴがぶっきらぼうに言い放った。俺の脳内の記憶に堅固な封印をかけたのは、ほかでもないイヴだ。万が一俺の脳内をコネクティングロープでのぞかれた場合に備えたんだけど、むしろそれのせいで余計に怪しまれた。
俺自身演技をするのは得意な方じゃないからな。けどいつかは打ち明けようと思っていたことだ。少し早くなったけど、これで肩の荷が下りたな。
「みんな……その……なんというか……」
「大丈夫。別にあんたのこと、嫌いになったりしないから……」
パメラは俺の言わんとすること、察してくれた。ほかのみんなも頷いた。後ろにいたジョニーもにんまりと笑った。
「はは! いまさらだけど、俺もそんな気がしていたんだよ。それにしても……よく戻ってきてくれた。俺は……嬉しいよ」
「……ジョニーさん……」
「私達もよ。これからも改めて、一緒に冒険しましょう!」
「ありがとう、みんな!」
「……いい仲間を持ちましたね……」
フィロードは拍手でたたえてくれた。すると上空に停止していた宇宙船の内部からまばゆい光が漏れだし、奇妙な機械音が鳴り響いた。
「おっと、どうやら時間のようです」
「時間って……行ってしまうのか?」
「えぇ……元々私も彼女もこの星の住人じゃありませんから。では!」
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。(多数の誤字報告もありがとうございます、自分でも気づかない細かい点をご指摘いただき感謝します)
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています
https://twitter.com/rodosflyman




