エピローグ23
ジュディは大きく笑った。そして手に持ってたスイッチを地面に放り投げた。
ついに諦めたのか。ちょっと潔すぎる気がするが。
「仕方ないわね……本当にあなた達ったら……しつこいんだから。今回は見逃してあげるわ」
「なに!? まさか……じゃあ……」
地面に放り投げたスイッチが爆発し、粉々になった。
やったぞ。ジュディが自ら壊したんだ。ついに観念したんだな。
そして後方にある森から光が漏れだした。なんの光だ。
「……あれは……?」
ジュディの背後の上空に、さっき俺達が乗った宇宙船が浮かび上がった。
宇宙船が徐々にこっちに近づき、ちょうどジュディの真上あたりで停止した。
「随分とお騒がせしちゃったわね、ごめんなさい……」
「……なによ……今更謝ったところで許すと思って!?」
「まぁまぁ、スージー。でもよかった、やっと諦めてくれたから」
「……でも別れたくないわ、本当は……」
ジュディは最後の最後で俺に悲しみの表情を見せた。さっき宇宙船内で俺を誘惑し続けたけど、まさか最後の最後で賭けに出たのかな。
「無駄だぜ、そんな悲しい顔見せたって。何度も言うけど、俺はもう地球に戻らない。達者で暮らせよ」
「あーら、トクナガはすぐにそんな悲しいこと言うのね。お隣にもう一人連れて帰るべき女性がいるってのに……」
「……え!?」
意味が分からないことを言い出して、俺は咄嗟にスージーの顔を見た。スージーも呆気にとられている。
「あなた、一体何言い出すの!?」
「そうだぜ、スージーが連れて帰るべき女性だって? わけわからないこと言い出すなよ」
「ふふ、知ってるくせに。調べはついてるのよ。彼女の正体も……」
「……!?」
スージーの正体。なるほど、そういうことか。
「あなたの本名はモリサカキョウコ。トクナガと同じで、あなたも元は地球人なんでしょ?」
「…………」
ジュディが笑いながら頭上にある宇宙船を指差した。
「あの宇宙船に乗ったら地球に戻れるわ。あなたにとっても地球は故郷のはず。そうでしょ?」
「…………」
「もう一度……両親や友人に会いたくなくて?」
これはまずい。スージーの表情がくもりだした。確かにスージーも俺と同じ転生者だ。
これは予想外だ、今度はスージーを誘惑してくるとはな。なんて執念深い女だ。俺では駄目だと判断し、今度はスージーにも同じ作戦を仕掛けるとは。
「言っておくけど、こんなチャンスは二度と来ないわ。私が地球へ戻ったら最後。あなた達は二度と地球へ帰れない!」
「……それがどうしたの……?」
スージーがあまりに不愛想に言い放ち、思わずジュディはたじろいだ。
「まさか? 地球はあなたの第二の故郷なんでしょ? もう一度戻りたいって思ったことはないの!?」
「ないわ。私は生まれ変わったのよ、スージー・ノールバックとしてね!」
「……スージー……」
スージーが俺の顔を見て微笑んだ。やっぱり似た者同士なんだな。
「あなた達ったら……全くとことん馬鹿ね!! ええい、ならいいわ!!」
なんとジュディが壊したのと全く同じ形をしたスイッチを右手に取り出した。さっきのはフェイクだったのか。
「そっちが本物ね。どうりでおかしいと思った」
「スージー、気づいてたのか」
「本物なら、壊れた瞬間にブラックホールが作動するような仕組みになってるはずよ」
「その通り。さすが魔道士だけあって察しがいいわね!」
「なんだよ……じゃあ、またさっきと同じ茶番か」
「茶番なもんですか! 異次元空間に通じる穴ですって? その程度で宇宙の果てまで飛ばせるわけないじゃない!」
「あなたは〈次元穴〉の力を何も知らないでしょ。いいわ、押してみなさい」
「……くぅ……相川らず強がるわね……」
「強がってないわ。どっちの言っていることが本物か……いい加減確かめたらどうなの?」
「…………」
ジュディのボタンを持っている手が震えている。さっきは諦めたふりして、スージーを誘惑しようとしたけど、その作戦が不発に終わり、今度はもうほかに打つ手がないようだ。
さぁ、今度こそジュディは覚悟を決めるのか。
「……いいわ、ならあなた達もともに道連れよ!!」
カキィイイイイイン!!
ついにボタンを押そうとしたその瞬間、甲高い金属音が響き渡った。
「……え!?」
「ナイスタイミング!」
上空で〈次元穴〉が開くと、その中にスイッチが呆気なく吸い込まれた。
俺も何が起こったのか一瞬わからなかった。でもすぐに見覚えある矢が目の前の地面に落ちてきた。
「ロバート、大丈夫!?」
「お前達……」
まさかパメラ達が助けに来てくれるとは。すぐ後ろにはジョニーも来ていた。どうやらスージーの変装、すぐにバレたな。
「相当ヤバそうなことに巻き込まれているようじゃないか。隅に置けないな、ロバートくん……」
「はは……いやぁ、その……かなりの強敵でね……」
「見慣れない顔だな。新人の女冒険者にしては、随分と軽装だ。どこの国のスタイルかな?」
「ジョニーさん、ふざけてる場合じゃないでしょ」
「おぉ、そうだったな。誰だかわからんが、町の警備の者たちに危害を加えたから、少なくとも俺達の敵だ。ここで成敗してくれる」
「……全く……なんなのよ……どいつもこいつも……私の邪魔ばかりして……」
「ジュディ!?」
まだ諦めず戦いを挑んでくるのか。いや、そうじゃなかった。
「…………うぅ……うぅぅ……」
なんとジュディはひざまづいて、そのまま泣き崩れた。
「なんで……なんで……こうなるのよ……」
「…………ジュディ……」
頼みの綱が全てなくなった負け犬の最後の遠吠えみたいだな。あとから来たパメラ達も思わず面食らった。
「なんかよくわからないけれど……もう勝負はついた感じ?」
「そうだな……ジュディ……どうす……」
「うっ!?」
次の瞬間、ジュディがそのまま地面に倒れた。目を閉じて全く動かない。急にどうした。
「いやはや、みなさん。おみそれしました」
「あ、あなたは……?」
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