エピローグ22
しばらくジュディの甲高い笑い声が響いた。やまびこになって何度も反響してくる。
ジュディはようやく笑いを止めた。世界が何事も変化がない様子にやっと気づき、周囲をおろおろ観察している。
「……嘘……なんで……?」
「なんだ……やっぱり偽物だったのね……」
「違うわ! そんなの……ありえ……えっ!?」
「やっと気づいたかい?」
小瓶から黒い液体が滴り落ちている。ジュディはその臭いをかいで愕然とした。そう、全て俺達の計画通りだった。
「これはコーヒー……なんで……?」
「すり替えておいたのさ、ちょうど色が黒いから見分けがつかないだろ。さっき宇宙船の中に案内された後でね。ご丁寧に隠した場所を俺に見せてくれてありがとうよ」
「……そんなこと……できるわけ……」
「あぁ、俺達だけの功績じゃないよ。足元見てみな」
「え? なに……これ!?」
ジュディの足元に小さなアリが行列を作っていた。
ジュディが戸棚の箱の中にしまい込んだブラックホールは、このアリたちのおかげですり替えることに成功した。
さっき俺達の脳内に話しかけた彼女の言う通り、やはりジュディは魔法を封じる結界を敷いていた。そんな状況であのブラックホールの小瓶をすり替えるには、あの小さな無数のアリの集団を利用するしかない。
俺があらかじめポケットの中に入れていたコーヒーが入った小瓶をアリ達が運んで、そしてブラックホールの小瓶とすり替える。アリ程度の大きさなら、鍵穴に入ってカギをこじ開けることも可能だ。
コーヒーはこの星では黒曜水のことだけど、これはさっきエイダ達と会った時に拝借しておいた。さすがのジュディもこればかりは予想外だったな。
ブラックホールの小瓶と多少形が違っていても大丈夫、俺がポケットに入れた直後でイヴが魔法で変形してくれたおかげで、全く形が同一の小瓶に変わった。
中身の液体の色も黒、これですり替えてもジュディに気付かれる心配はなくなる。
「……というわけさ。俺達の作戦勝ちだな」
「そのアリの集団はね。私が予め調教しておいたのよ」
スージーが高らかに言った。
「ちょ、調教……?」
「万が一魔法が使えなくなった状況下でも、そのアリ達を使えばどこへだって侵入してカギを開けられる。まさかもう出番が回ってくるだなんて思わなかったけど」
「まぁ、いずれにせよ。本物のブラックホールはどこかへ消えたんだ。もうお前に勝ちの目はないよ、今度こそおとなしく……」
「いいえ、まだよ!!」
ジュディはまだ諦めていないのか、ポケットの中をまさぐりはじめた。まさか二つ目のブラックホールがあるのか。
と、思ったら違った。右手に持って取り出したのはボタンがついている小型の装置だ。
「それはなんだい? まさかブラックホールの起動装置とか?」
「その通りよ! 小瓶を開けずとも、このボタンを押せばブラックホールは暴走するわ」
「それがどうした? 言っておくけど、もうそんなことしても意味ないぞ」
「あははは! あなた達がどこに隠したって無駄よ! ブラックホールが発動したらこの星ごと飲み込まれる、たとへ星の反対側へ隠したってね」
「……あんなこと言ってるけど、どうするスージー?」
「問題ないわ。そもそも、この星のどこにも隠してないから」
「な、なんですって!?」
「これを見なさい!」
スージーが魔法を唱えると、空中に黒い穴が出現した。俺にとってはもう見慣れた穴だ。
「ぶ、ブラックホール……?」
「似てるけど違うわ。これは〈次元穴〉よ」
「〈次元穴〉……なによそれ?」
「わかりやすく言うと、異次元空間に通じる穴のことよ」
「……異次元空間?」
「あなたが作ったブラックホールの小瓶はもうこの穴の中よ。そしてどこか遠くの、宇宙の果てのところまで飛ばされたわ」
「……ふざけないで、そんなこと……信じられるもんですか!!」
「信じないのなら別にいいわ。試しにそのボタンを押してみたら?」
スージーが余裕の笑みを浮かべて挑発した。
スージーのこの様子からして多分大丈夫だとは思うが、正直俺も〈次元穴〉で本当に宇宙の果てまで移動できるのか、不安でしょうがない。
でも、ここはスージーに賭けよう。今のジュディは半ば狂ってる。本当に押しかねない、あのボタンを。
さぁ、どうする。
「…………ふふ……」
目を閉じて静かに笑った。怖いな。まさか本当に押すのか。
「あーはっはっは…………まいったわね……」
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