エピローグ21
「ふぅ……全く世話の焼ける男ね……」
目を閉じて熟睡したロバートを見下ろした。今度こそ自分の勝利、ジュディは勝ち誇って笑った。
さっき食べたマカロンに睡眠薬を入れたが、まさか効くだなんて。嬉しい誤算だ。
「あーっはっは! これでもう私の思うがままだわ! コア・プログラムも完璧に強化できる! 地球に戻って今度こそ最高の人生が歩める!!」
しばらくしてジュディは冷静になり、ふと大事なことを思い出した。
「いけない! あれは!?」
ブラックホールの小瓶をしまい込んだ戸棚を急いで開けた。小瓶を入れた小箱はそのまま、念のため開けてみた。
「あぁ、入ってるわね。危ない危ない……」
中身がちゃんと入っていることを再確認して、もう一度箱の鍵をしっかり閉めた。
「さてと……さっさとおさらばよ。こんな惑星とも……」
ジュディは窓から外を見た。本当はもっと見て回りたい気分もあったが、念願の男を手に入れたらもうそんなことはどうでもよくなった。
「トクナガは……もう私のものよ……ふふ…………あれ?」
ふと顔を触れたジュディは、ある物がないことに気付いた。
「……私の眼鏡……どこ……あっ!!」
ジュディは思い出した。さっきロバートに素顔を見せるため、眼鏡を外したんだ。
どこに置いたんだっけ。昔からジュディは眼鏡や財布、携帯電話を部屋のどこに置いたか忘れて、よく探し回る癖がある。
その癖がここでも発動してしまった。
「あぁ、こんな時に……どこなの!? あれがないと宇宙船動かせないじゃない!!」
ジュディは近眼だった。そのためしゃがみこんで、よく目を凝らさないと見えない。
「あっ、あった!!」
テーブルの片隅に無造作に置いてあった。手を伸ばして取ろうとしたその瞬間、足元に怪しい影が動くのが見えた。
振り向いたジュディは一瞬だけ女性の顔が目に入る、しかし次の瞬間、頭部に強烈な痛みが走りジュディは地面に倒れ込んだ。
「ぐはっ!!」
目に入った女性の顔は見覚えある魔道士の顔、ロバートの仲間のスージーだ。
*
「……ロバート……目を覚まして!」
「……ん!? スージーか!?」
「よかった! もう大丈夫、助かったわ!!」
目を開けたら目の前にスージーがいた。そしてイヴも駆け付けてくれた。
さっきまで俺はジュディの宇宙船の中にいたはずだ。いつの間にか外に出ている。二人が助けてくれたのか。
「よかった……間に合ったんだな!」
「ごめんなさい。アレを安全な場所に隠す必要があったから……」
「アレって……あぁ、そういえば!!」
スージーの足元に無数のアリの大群がたかっている。それを見て俺は安心した。
「……うまくいったんだな」
「えぇ……あなたがうまく彼女の気を引き留めてくれたおかげよ」
「さっきのジュディとの会話……もしかして聞いてた?」
イヴもスージーも黙って頷いた。あまり聞いてほしくなかったけどな。
「あなたは……地球に帰りたいの?」
「さっきの会話の通りさ。俺はこの惑星で生きると誓った。もう自分の道を曲げたりしないって」
「……それを聞いて安心した……」
「でも……それはスージーも……」
「ロバート!!」
イヴが指差しながら叫んだ。やはり追って来たか。
「逃がさないわよ……あんた達……」
「ジュディ……しつこいぞ!!」
「さっきはよくもぶってくれたわね。痛かったわ」
「あなた、ロバートを殺すの大嘘で、本当は自分一人で彼を独り占めするつもりだったのね!」
「いけないかしら? あなた達だって人のこと言えないでしょうが!!」
「……なんですって!?」
スージーは杖の先端をジュディに向けた。でもジュディは動じない。すかさず右手にアレを持って見せびらかした。
「忘れたの? 私にはこれがあるのよ!!」
「……ブラックホール……」
「この小瓶をここで開けちゃってもいいのよ。なんなら私を殺しても無駄ね。その瞬間ブラックホールは暴走するわ」
「……やってみたら?」
スージーは少し笑みを浮かべながら言い切った。ジュディは少しだけ動じたように見える。さぁて、どう出るかな。
「……あなた、もしかしてヤケが回ったの? ブラックホールの恐ろしさ知ってるでしょ?」
「えぇ、知ってるわ。でもあなたにはできっこない! だって、あなたの大事なロバートともお別れになるのよ!」
「どのみち殺されるんなら、そうなっても構わないわ。彼と一緒に地獄へ落ちる覚悟だって出来てる」
「あぁ、そうなの……じゃあ、遠慮なく……」
「ちょ……本気で開けるわよ!?」
「だから、やってみなさいって! それともやっぱ、怖くなった?」
スージーがジリジリと詰め寄る。ジュディはためらっている。明らかに動揺しているな。
もしかして、やっぱり偽物のブラックホールだったのか。それならそれで別に構わないが。
「……全く、どいつもこいつも馬鹿ね!!」
ジュディの顔つきが変わった。今までに見せたことがないくらい怖い形相に変わり、体の震えも止めた。そして左手で小瓶の蓋に触れた。
どうやら、本当に覚悟を決めたようだ。
「あなた達はこれが偽物のブラックホールだと思ってるんでしょ? でも違うのよ、よーく見てなさい! 世界が消滅する様子をね!!」
「まさか、本当にやる気!?」
「あーはっはっは!! 私に恐怖の心理作戦なんか通用しないわ! とことん馬鹿な女ね、あの世で後悔しなさい!!」
「待って! 考え直して!!」
「もう遅い!!」
イヴの叫びもむなしく、ジュディは勢いよく小瓶の蓋を引っこ抜いた。
「あーはっはっは!! さよなら、みんな!! 楽しかったわ、あの世で会いましょう!! あーはっはっは…………」
いつもご覧いただき誠にありがとうございます!毎日ご覧になっている読者様には心から感謝いたします。(多数の誤字報告もありがとうございます、自分でも気づかない細かい点をご指摘いただき感謝します)
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています
https://twitter.com/rodosflyman




