エピローグ20
俺の決心を改めて強く伝えて、ジュディは黙り込んだ。
もう俺を誘っても無駄だと悟ったみたいだな。となれば、あとは俺を殺すのみだが、さぁどうやって殺しにかかるのか。
例のごとく機械虫が仕込まれた矢を俺に突き刺すのか。でも見たところ、その矢は見当たらない。この宇宙船にもないのか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。あの厄介な代物はもう別の場所だ。ジュディはまだ気づいてない。
今度こそ年貢の納め時だ。と思ったけど、まだジュディが攻撃してきそうな気配がない。何をためらってるんだ。
「満足かい? さっさと……やれよ」
「いいえ、まだよ!」
「は? まだ俺の気持ちが理解できないのか?」
「えぇ、理解できないわ。あなた、大事な何かを忘れてるでしょ!」
「大事な何かって?」
ジュディは俺との距離を詰めた。でも不思議と殺気は感じない。まだ性懲りもなく俺を地球へ帰らせようというのか。
「『俺には俺の生き方があるんだ』ってかっこいい言い方する男に限って、現実が満たされてないのよね」
「……何が言いたいんだ?」
「ふふ……要するにあなた、現実の生活が全く満たされてないから、仕方なくゲームの世界で楽しんで気を紛らわせていただけでしょ?」
「……悪いかよ。でもそれは前世での話だ。今は……違う。これが現実だ」
「そうだけどさ、今度地球に帰ったら前世とは違うわ。多分夢のような素晴らしい生活が送れる」
「……おいおい、変なこと言うな。俺の前世の現実の生活は、全く楽しくなかった」
「女がいなかったからでしょ?」
「……え!?」
「女性と一緒に生活することができなかった。でも……今度は違うわ」
「……何言い出すんだ? まさか……お前が……」
「……ほかに誰がいるっていうのよ?」
「…………」
なんてことだ。これは予想外な展開だ。
確かに地球で生活していた時は女性と付き合ってたことはない。本当の恋愛なんてしたこともない。
美女が一緒に生活してくれたら、確かに俺の現実生活は満たされるかも。それをかなえてくれる女性が、目の前にいる。
「ふ、ふざけたこと言うなよ! お前が俺と一緒に生活したいって? 本気で言ってるのか!?」
「えぇ、本気よ」
「おい、ちょっと!」
ジュディが唐突に上着のジャケットを脱いだ。その下は薄手のタンクトップ姿で、へその部分もはみ出している。
そして何より目を引いたのは胸の大きさだ。なんて大きい胸してやがる、女性だから当然だけど、胸がデカすぎて谷間がはっきり見える。
「さぁ……気が変わった?」
今度はジュディは眼鏡を外した。ここに来て初めて素顔のジュディを拝めた。
改めてみると、ジュディは凄く美人だ。さすがイヴのモデルともいうべきな女性だけど、今度はそのジュディが俺と一緒に生活してくれるというのか。
「私のような素晴らしい美貌と頭脳を兼ね備えた美人は地球でもめったにいないわ。悪くないでしょ?」
にっこりと微笑んで俺を見つめた。今まで見せた殺気に満ちた顔とは180度も違い、天使のような顔だ。
まさかここに来てこんな誘惑攻撃をしてくるとは、だけど負けるわけにはいかない。
「お、俺には……パメラやエイダが……」
「あぁ、あの冒険者仲間達ね……そんなに好きなの?」
「やっと出会えたんだ。本当の……喜びを分かち合える仲間に。だから……離れるわけには……」
「私だって、あなたと喜びを分かち合えるわ!」
「うっ……ちょっと……」
「ねぇ……さっきのことは水に流すわ……だから……お願い」
ジュディが前かがみになって、顔を俺に近づけた。まずいって、その態勢は。
「や、やめろ……俺を……誘惑……するな……」
「誘惑なんてしてないわ。私はあなたと一緒に地球に帰って、一緒に暮らしたいの」
「……地球に彼氏がいるんじゃないのか?」
「彼氏? 何人も近づいてくる男はいるわ。適当に付き合ってはいるけど……本心で好きになれた男は一人もいない」
「そんな嘘に騙されるか」
「嘘なんかついてない……本気よ。それに信じられないほど豪華な家も用意しているわ」
そう言いながら、今度は右の壁にあるモニターに映像を映し出した。その映像には白地の豪華な邸宅がはっきりと映っている。
俺は思わず息をのんだ。これが彼女の実家だってのか。なんて大きさだ。
俺もこの世界では貴族の出身で、実家は大きな邸宅だ。でもそれに引けを取らないほどの大きさじゃないか。まさに大富豪だ。
おまけに中庭も相当広く、その中央部に大きなプールがある。どこまで贅沢三昧なんだよ。
「ねぇ……悪くないでしょ?」
真剣なまなざしでじっと俺を見つめる。その瞳に嘘偽りの気配が感じられない、やっぱり本気なのか。
俺が地球で生活していた時、絶世の美女と豪華な家で一緒に暮らしたいという妄想をひそかに抱いていたことがある。
そんな妄想が夢物語だってことはわかっていた。だけどその夢物語が実現するのか、ジュディと一緒に地球に戻れたら。
「……死ぬまで君と一緒に暮らすのか? あの邸宅で」
「もちろんよ! あなたと一生を共にする。悪くないわ! ただし……」
今度は厳しい顔に変えて言い切った。
「一度地球に戻ったら最後、もう二度とこの惑星には戻ってこれないわ」
「……なるほどね……でも正確には“戻ってこれない”じゃなくて、“戻らせない”だろ」
「…………」
「本当は戻ってこれるが、お前は力ずくでも阻止するはずだ。違うかい?」
「……そうね……えぇ、その通りよ。絶対にあなたを地球に帰還させるわ。そしてずっと私と一緒に……」
「断る!」
俺はきっぱり言い切った。ジュディの顔が凍り付いた。今度ばかりはショックが大きかったかな。
「たとえ地球で贅沢な暮らしができるとしても……それが理想の生活だとしても……俺は一度選んだこの道を……外したりはしない……」
「……本当にいいの? それで……」
「あぁ、いいさ! 俺は俺の選んだ道を歩む……誰が何と言おうと……」
「もう! 本当に頑固者ね、あなた!!」
「うぐっ!? な、なにを!!」
突然俺の体が言うことを聞かなくなった。気が付けば宙に浮かされ、後ろの壁に貼り付けにされた。
どうやらジュディが能力を発動させて、俺を金縛りにさせてるんだ。ついに強硬手段に出たか。
「本当にわからずや! おかげで力ずくで帰らせないといけなくなったじゃない!」
最初からそうすればいいのに。それにしても凄い力だ、身動き一つとれやしない。
「や……やめろ! お前と一緒に帰る気はない!」
「何言っても無駄よ。もうあなたは私の意のまま。さぁて帰りましょ、地球に!」
「……うっ……じゅ……でぃ……」
強烈な眠気が襲い、俺は意識を失い倒れ込んだ。やっぱりさっきのマカロン、強力な睡眠薬が入ってたのか。
頼む、スージー、イヴ。間に合ってくれ。
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