第三十話 あっけない勝利!
パメラに叱責されてしまった。まずい、これじゃ完全にかっこ悪い。
さすがにこれ以上やられっぱなしは駄目だな。だが問題なのはカルロスの攻撃だ。回避ができない。
そうか。槍術スキルの〈閃光突き〉は超高速で突進する槍の突き攻撃、最高スピードは使用者の素早さの数値の五倍になる。
俺の素早さも今は50と高めだが、この程度じゃあの〈閃光突き〉は回避できない。
さらに残りの割り振り値は、HPに全部注ぎ込んだからゼロだ。つまりこれ以上ほかのステータスは強化できない。さてどうするべきか。
「どうした? 手も足も出ないか? 別に逃げ回ってもいいが、制限時間があるのを忘れんなよ」
「ロバート、残り四分よ!」
そうだった。あくまで適性検査だから、勝負じゃない。制限時間内に俺はカルロスを倒さないといけない。
そのためにはあの〈閃光突き〉を回避しないといけない。素早さに頼る回避じゃだめとなると、方法は一つしかない。
「どうした? かかってこねぇのかよ? それともギブアップか?」
「ギブアップなんてしないよ。それよりもう一回〈閃光突き〉してきたらどうだ?」
「おいおい、俺を挑発するつもりかよ。まぁいい。言われなくても、何度もお見舞いしてやるさ!」
挑発のつもりだったが、案の定カルロスは突進してきた。やはり単純な男だ。さっきとほぼ同じ動き、スピードだ。
俺が回避できないと確信しているんだな。でも今度は違う。確実に回避できる方法があるんだ。それを見せてやる。
「てやああああああ!」
今だ。俺は高々と垂直にジャンプした。俺の真下でカルロスの槍は空をきった。俺の姿が見えなくなって、何が何やらわからないようだ。
「ど、どこだ!?」
「ここだよ!」
カルロスは上を向いた。もう遅い。その隙をついて、俺は一直線で剣を振り下ろしながら降下した。
スパァアアアアアン!
俺の〈レプリカの剣〉の刀身はカルロスの額を強打した。真剣だったら即死だったな。
俺はカルロスの肩に両足を下ろし、そのまま地面に飛び降りた。カルロスは無言のまま地面に倒れた。〈レプリカの剣〉も今の一撃で折れてしまった。
跳躍のステータスを上げまくることで可能となるジャンプ回避。一部のプレイヤーが好んでする高等テクニックだけど、さすがのカルロスも予想外な動きだったろうな。
「まさか?」
「嘘だろ!?」
「い、一撃!?」
「勝者、ロバート・ヒューリック!」
勝った。レミーは躊躇なく俺の勝利を宣言した。
「レミーさん、彼のステータスは?」
「安心して。HPはゼロになってるわ」
ゼロか。俺の予想だが、カルロスのHPは3000くらいかな。それを一撃で倒したということは、恐らくクリティカルヒットが出たんだろう。
「そうか。戦闘不能なら〈偽装〉が解除されるんだったね」
「ロバートさん、どうしてそんなことまで知ってるんですか?」
「はは。優秀な家庭教師がいただけさ」
「やったー! ロバートー!!」
パメラが歓喜して俺にの下へ駆け寄った。
「おめでとう、もう一時はどうなるかと思ったけど」
「ありがとう。いやぁ、なんというか自分でも信じられないなぁ、本当に勝っちゃうなんてね」
敢えて謙遜なふりをしてみせた。そして俺は前世でも味わったことがない、美女に祝福されるという貴重な体験ができた。
あぁこれが異世界転生の醍醐味って奴か、神様ありがとう。
「それにしても信じられないわ。〈閃光突き〉をジャンプしてかわすなんて」
「本当だぜ! 一体何メートルまで飛んだんだよ?」
「五メートルくらいかな。ステータスの跳躍を上げまくったからね」
「ご、五メートルだって!? じゃあさっきの跳躍の数値は」
「〈偽装〉じゃなんかじゃないよ、これで信じてもらえた?」
俺は駆け付けたみんなの反応を確かめた。まだ全員疑っているような様子だ。
「まぁ、いいじゃないの。それよりレミーさん、これでギルドカードちゃんと発行できるわよね?」
「はい、ですが発行まで一日はかかります。明日の夜にちゃんとお渡ししますね」
「よかった。あの、報酬なんだけどやっぱりカード発行後じゃないとダメ?」
「そうですね。本来ならそれが規則になりますけど、今回に限り例外として認めます」
「なんだって? そんなのジョニーさんにバレたら……」
「だから、マスターが認めたんですよ。これを見てください」
そう言いながら、レミーは一枚の紙を渡した。ジョニーの直筆による名前のサインとメモが書かれていた。
「『ロバートが試験に合格したら、今夜にでも金貨四十枚を渡してくれ』? 本当だ、信じられない!」
「あのジョニーさんが? なんて太っ腹なんだ!」
「ありがとう……って、ちょっと待って! 今なんて?」
メモの内容の一部に俺はひっかかった。金貨四十枚だって。
「ロバートさん、何か気になりました?」
「金貨四十枚ってどういうことだ? さっき討伐報酬は金貨五十枚って言ってたはずだぞ!」
「あぁ、それはですね……」
レミーが一枚の光る長方形の板を取り出した。さながら俺が前世でよく見たタブレット端末に似ている。
そのタブレットにでかでかと表示されたメッセージを見て、俺もやっと気づいた。
「器物損壊のため金貨十枚を天引きいたします、ってまさか……」
「ロバートさん、あなた屋上で施設の一部を破壊しましたよね?」
そしてレミーが持っているタブレットに別の画面が表示された。俺がさっき落下した屋上の映像だ。
「あぁ、なんだこりゃ!?」
「屋上が滅茶苦茶なことになってるぞ? 一体これは?」
「ロバート、まさかあなたの仕業なの?」
「……ごめんなさい」
なんてこった。俺は謝るしかなかった。まさかこんなしわ寄せをくらうだなんて。
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