第二十九話 カルロスの超高速攻撃
俺とカルロスは武器を構える。無言のまま時間が経つ。
どっしりと腰を低くして槍を構えるカルロスは、まるで三国志に登場する武将みたいだ。なるほど確かにランクAの風格はあるな。
外野で様子を見ていたパメラと目が合った。彼女は一心に俺を見つめている。ヤバいな、こんなにドキドキする経験は生まれて初めてだ。俺の戦いを美女が見守るだなんて。
いやよく考えたら、前世でもなかった。思えば、俺は中学校時代にテニス部に入ってた。プロテニスプレイヤーとして活躍していた、ある日本人に憧れていた。
その頃はまだゲームに深くのめり込む前の時期だったから、毎日テニスの練習に励んでいた。いつか女子にモテまくる、そんな子供っぽい夢を持ちながら。
そのおかげで身長は伸びた。それは嬉しかった。だけど元々運動神経が鈍いこともあり、なかなか練習でも上達せず、案の定怪我にさいなまれた。補欠としてボール拾いや掃除、後片付けなど雑用ばかりを任される日々を送る羽目になる。
俺は結局テニス部をやめた。高校や大学に行ってもスポーツとは無縁の生活を送り、ただひたすらゲームに明け暮れた。
女子からモテモテになり、楽しく会話する。そんなのは陰キャの俺にとって夢物語だった。
だけど今は違う、一人の金髪の美女が俺の戦いに注目している。こんな絶好の機会を逃してたまるか。
ピィイイイイイイイ!!
突然大きな笛の音が鳴った。ヤバい、パメラのことが気になりすぎて、完全に集中が途切れていた。なにやってんだ。
だが気づいた時には、既にカルロスが目の前まで迫ってきていた。俺の胴体に、レプリカの槍の先端を向けたまま。
しまった。
「遅い!」
直後、俺の体は後ろへ弾き飛ばされた。倒れる寸前、パメラの呆気に取られた顔だけが見えた。
受け身もろくにとる暇がなかった。体中に激痛が走る。屋上から落下したときほどじゃないが、それでも相当HPが減っているかな。
俺はなんて馬鹿なんだ。パメラにいい格好を見せようとした挙句、パメラのことが気になって完全にうわの空になっていたなんて。
「ははは! 見たか! この小僧の実力なんか所詮この程度よ!」
「嘘だろ、たった一撃でか?」
「なんだよ、カルロスの圧勝じぁねぇか」
「まぁ、なんとくわかってたけどよ。あの小僧も完全に隙だらけだったぜ。実戦経験がないんじゃねぇのか?」
「おい、パメラ。やっぱりマグレだったんだよ」
「ははは! おい、レミー。検査はこれで終わりだ。俺の勝ちだ。ってことで、報酬を……」
「何言ってんですか? あれを見てください」
「なに?」
全員がこっちを向いた。立ち上がった俺を見て、全員呆気に取られている。パメラだけすぐにほっとしたような顔になった。
「もう、ロバート! おどかさないでよ!」
「ごめん、パメラ。ちょっと油断しただけだよ」
「油断だと? おまえ適性検査を何だと思ってやがる?」
なんとか立ち上がったが、まだ痛みが残っている。さっきステータスを確認したら、約1000もHPが減っていた。
正直かなりのダメージだ。油断した。もっとも今の俺の最大HPからしたら、大した減り幅じゃない。〈コスモソード〉を外したとはいえ、HPはまだ残り30万以上はある。
HPに極振りしていてよかった。だが今の攻撃はなんだろうか、スキルかな。
「あの小僧。立ちやがったぜ?」
「信じられん、今の攻撃は槍術スキルの〈閃光突き〉だぜ。カルロスの得意スキルだ、それをもろに喰らってケロッとしてやがるなんて」
野次馬の声が聞こえた。なるほど、〈閃光突き〉だったか。道理でダメージ量が大きいわけだ。
「どうやらHPの高さは確かのようだな」
「それはさっき見ただろ?」
「調子に乗るなよ。一度目は防げても、二度目はねぇぜ!」
またもカルロスはさっきと同じ構えから、突進してきた。
なんというスピードだ。一瞬にして俺の目の前までやってきて、さっきと同じように俺の胴体に槍の先端を直撃させた。デジャブだな。
「いてて……」
またも俺の体は後方に弾き飛ばされ、地面に横たわった。だけど致命傷じゃない。すぐに起き上がり、ステータスを確認する。
さっきと全く同じ減り幅だ。このダメージ量、それにランクAからして、カルロスのレベルは20前後といったところか。意外と高いんだな。
「また立ちやがったぜ、あの小僧!」
「嘘だろ? 二発目喰らっても平然としてやがる」
「チッ、やせ我慢だけは一人前だな」
「やせ我慢なんかじゃないんだけどね」
「ほざくんじゃねぇ! 何度立ち上がっても同じだ、てやぁああああ!!」
カルロスはまたも〈閃光突き〉を仕掛けた。これで三度目だ。
HPには余裕があるが、三度もやられるのはさすがに気分が悪い。タイミングを見計らって、直前で後退した。
今度はかわせたか。
「甘い!」
ドス!
今度は俺の脇腹に矛先が激突した。しまった、槍はリーチが長い。ちょっとやそっと後退しただけじゃ届いてしまう。
喰らったけど今度は倒れなかった。HPの減りは少ない。直撃を免れたが、これじゃちょっとジリ貧だな。
「俺の槍捌きを甘く見たな。お前はもう逃れねぇよ」
「あいつ、槍の長さがわかんねぇのか? やっぱり素人だな」
「おいおい、防戦一方じゃねぇか。ちょっとは攻撃しろよな」
「ロバート、なにやってんの? あなたの実力そんなものじゃないでしょ!」
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