第二十八話 ロバートの適性検査
俺達が向かった場所は、ギルド『三日月の誓い』の入口の右手にある大広間だった。そこは学校で言う体育館のような空間になっていて、戦士が訓練や修業をしたり、さらに戦士同士の戦いが行われる場所でもある。
ギルドで依頼を受けるために必要なメンバーカードを発行するためには、この大広間で適性検査を受ける必要がある。適性検査では別の戦士が試験官をつとめ、その試験官を倒すことで合格となる。
合格すれば正式にメンバーカードがもらえる。といっても一日はかかるようだが、なにはともあれアリゲーターベアの討伐報酬をもらうには、この試験に合格するしかない。
そして俺の対戦相手は、もちろんカルロスだった。
ギルドの謎のルールが適用された結果だ。メンバーカードを持っていない戦士が討伐の証を持ってきても、討伐報酬はもらえない。その場合、その戦士を適性検査で倒した戦士が代わりに討伐報酬をもらうということになる。
正直意味不明な制度だ。だがカルロスはすんなり了承して、俺の対戦相手となった。もちろん勝てる自信があるんだろうな。パメラが事前に警告してくれた。
「気を付けてね、彼の正確な強さ、というかステータスは私も知らない。だけど一つだけ言えるのは、アイツは私と同じランクAだったはずよ」
「それだけわかれば大丈夫だ。ありがとう」
ランクAか。意外と高かったな。カルロスもなんだかんだで、相当な実力者だったのか。まぁ、ランクAでもSでも多分俺の敵じゃないんだけど。
「おい、小僧。言っておくが手加減はしないぞ。やめたきゃやめてもいいんだが、どうする?」
「やめないよ。俺がやめたら、アリゲーターベアの討伐報酬がもらえないだろ?」
「まだそんなこと言ってやがるのか? 確かにお前はアリゲーターベアという強敵を倒したかもしれねぇ。だがな、マグレは二度も続けて起きたりしないんだよ」
やれやれ、何を言い出すかと思ったら。俺が倒したことは認めたようだが、マグレだと信じ切っているようだ。
「カルロスさん、ロバートさん。早くこっちに来てください!」
突然レミーが大広間の中央から呼びかけた。明かに彼女は不機嫌だ。
「小僧、早く検査終わらせるぞ。レミーもさっさと寝たいようだ」
俺とカルロスは中央へ行き、正面で向かい合った。この世界に来て初めての対人戦か、なんだか緊張してきたな。
レミーには悪いことをした。本来なら試験は明日に回してもいいが、ギルドカードの発行は最短でも一日はかかる。となれば、今日中には終わらせておきたい。明日にもほかの依頼を受けたいからな。
すると、レミーが俺とカルロスに別の武器をそれぞれ手渡した。
「二人とも、念のため言いますけど、真剣は駄目ですからね」
「え? 俺の武器使っちゃ駄目なの?」
「何言ってるんですか? これは適性検査なんですよ」
「ははっ! なんだよ小僧。まさか、自前の武器じゃないと戦える自信がねぇってのか? まぁ俺は別にそれでもいいけどよ」
予想外だ。まさか〈神剣コスモソード〉を外さないといけないなんて。
まぁこの装備を外したとしても、俺のステータスは半分になるだけなんだけどね。
既に俺のレベルは15まで上がってる。裏技でステータス総合値を、ぶっ飛んだ数字にしたんだ。〈コスモソード〉はなくても問題ない。
〈コスモソード〉を床に置き、レミーから渡された〈レプリカの剣〉を装備した。ステータス補正も何もつかない。文字通り〈レプリカの剣〉だ、そういえばこんな武器もあったっけ。
「へへ、てめぇによく似合うぜ。その剣はよぉ」
「あんたこそ、そっちの槍の方がよく似合ってるよ」
俺は言い返した。カルロスは口では笑いながらも、目は怒りに満ちている。
「小僧、あまり調子に乗るんじゃねぇぞ」
「カルロスさん、落ち着いてください。ロバートさんもあまり怒らせるようなこと言わないで」
レミーから注意された。怒らせるつもりで言ったんじゃないんだがな。
「では二人とも、適性検査のルールを説明します。この適性検査では……」
「いいって、いいって! ルールの説明とか、先に相手をぶちのめした方が勝ち。それでいいだろ?」
随分と適当な説明だな。まぁ確かにその通りなんだが、レミーに仕事をさせろよな。
「もう、最後まで聞いてください。この適性検査では、制限時間は五分と決まっています。五分以内に相手をダウンさせ、所定の時間が経過しても起き上がらなければそれで相手を負かしたとみなして勝利とします。逆に五分経過しても、両者ともに譲らず一度もダウンしなかった場合は、ロバートさんの不合格とみなします」
最後の説明に思わず反応した。
「なんだって? 引き分けなんじゃないのか?」
「確かに勝負としては引き分けになりますけど、それでは合格とみなしません」
「あのな、小僧! これは適性検査って言ってんだろ! 言ってみればお前は試験を受ける立場だ。対等な関係じゃないんだよ、わかる?」
「……なるほど。つまり俺が試験に合格するには、どう足掻いてもあんたに勝たないといけないわけね」
「その通りだ。まぁ、そんなことは起こり得ないがな」
カルロスは最早自分の勝利を確信している。カルロスからしたら、目の前にいる俺をいまだにただの少年とみなしている。
「もちろん、スキル、魔法の使用は認めますが、アイテムの使用だけは禁止です。また戦いの最中に装備を変更するのも禁止です。よろしいですか?」
「それだけ説明してくれりゃオーケーだ。小僧、いいな?」
「オーケーだよ、レミーさん」
「それじゃ、両者とも。準備はよろしいですね? 私が笛を鳴らしたら、その瞬間に試合開始です」
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