第二十七話 適性検査の対戦相手は?
周りのみんなが大声で驚く。そりゃこの反応も無理はない。
ギルドのメンバーカードはギルド会員の身分を保証するカード、言ってみれば身分証だ。これがないと、ギルドで依頼を受けて討伐しても討伐報酬はもらえないし、そもそも受注することすらできない。
本来ならこの町に来て最初にやるべきイベントだ。ギルドでメンバーカードを発行してから、様々な依頼を受注して、討伐報酬をもらうのが基本的な流れになるのだが、俺は敢えて町に行かず先にモンスターを倒しまくった。
しかもラッキーなことにアリゲーターベアという強敵まで倒した。嬉しさと興奮のあまり、完全に忘れてしまっていたな。
念のため俺のこれまでの記憶を呼び起こしてみた。ロバート・ヒューリックとして生まれて十三年間、何度かソーニャの町に来た記憶はあるが、ギルドでメンバーカードを発行した記憶はない。
「ははは! そら見たことか! やっぱりこの小僧のステータスは嘘っぱちよ!」
それまで黙り込んでいたカルロスが急に笑い出した。
「ギルドのメンバーカードを持っていないとはな。いやぁ、驚かされるぜ。ジョニーさん、正規のギルド会員じゃなければ当然報酬は受け取れないよなぁ?」
「あぁ、そうだな……」
「ちょっと待ってくれ! 本当に俺は倒したんだ、現にコアも持っている。なぁ、パメラ。君からもなんとか言ってくれよ」
「えぇ、そうね。メンバーカードは持っていないけど、確かに倒したのは彼よ。私が証人よ」
「はっ! お前ら二人ともグルじゃねぇのか!?」
カルロスはとんでもないことを口走った。
「グルだって!? お前こそ何の根拠もないくせに変なこと言うなよ!」
「じゃあ聞くがよ。なんでお前はギルドのメンバーカードを持っていないんだ?」
「それは……」
なんと答えればいいか迷った。普通にゲームをプレイしているのなら、こうはならなかったろう。
だけど今は違う。俺自身が〈ロード・オブ・フロンティア〉の一人のキャラクターとして転生し、自由にこの世界を冒険できる。
初めてのことだらけでワクワクと興奮がおさまらなかったこともあるし、何よりソーニャの町に行く前に森の池で〈神剣コスモソード〉を入手する大事なイベントもあった。
そしてその後は、手に入れた強力な武器のおかげでレベル上げも捗った。正直ギルドに行くことを完全に忘れていただけだ。
「おい、納得のいく説明をしてくれよ? ギルドのメンバーカードを持っていない奴が、どうしてアリゲーターベアのコアを持っている?」
「……忘れてただけだよ」
「忘れてただぁ!? お前本気で言ってるのか? そんな理由で納得できるわけねぇだろ!」
「本当に忘れてたんだって! 信じないのならそれでいいさ。それよりカードがなかったら、今から作ればいいだけだろ? なぁ、ジョニーさん?」
「悪いがロバート君、我々としても作ってくれと頼まれて、簡単に了承はできん」
ジョニーは意味深なことを言った。一体どういうつもりだ。
「了承できないって、それどういう意味だ?」
「そのままの意味さ。ギルドカードの作成には時間がかかるし、もう一つ適性検査もあってね」
「あっ、それって……」
その言葉を聞いて俺も思い出した。
「簡単に言うと、実力をはかる必要があるのさ。君が依頼を受注できる資格がある戦士かどうかを見定めるためにね」
「そういうことさ、小僧。さっきは忘れてただけだと言ってたけど、本当はそんな実力欠片もねぇんじゃねぇのか?」
「何言ってんの? 彼の強さは本物よ。私が証人だって言ったじゃない! ジョニーさん、こんな奴の言うことは聞かないで、早くロバートにギルドカードを発行してあげてよ」
「残念だが、それはできん。これは規則だ、いくら第三者の許可があってもね」
「何が規則よ!? 私が証人となるだけじゃ駄目?」
「ははは! お前はやけにこの貴族の坊ちゃんの味方をするんだな? そんな口振りじゃ、ますます怪しいぜ」
「だからそんな関係じゃないって! それにさっきの彼のステータス見たでしょ? まだ疑うつもり?」
「あぁ、そうだぜ。というか、ますます信じられなくなったぜ。ギルドのメンバーカードを持っていない戦士は、言ってしまえば身元不詳の戦士に変わらねぇからよ。それによ……」
「だぁー、もういい加減静かにしろ!」
突然ジョニーの大声が響いた。一体どうしたんだ。
「じょ、ジョニーさん?」
「もう日付が変わる。今日はもう疲れた、アリゲーターベアのコアがあるんだから、奴は倒されたに違いない。となりゃ、あとはロバートに適性検査を受けさせるだけだ。それで文句はないな?」
「それはそうですけど、もし彼が試験に落ちたら……」
「レミーさん、そんな言い方はないだろ」
「そうだな。もし試験に落ちたら……」
ジョニーがカルロスに視線を移す。何か企んでいるな。
「カルロス、ちょっと協力してもらえるか?」
「へへっ、何をです?」
「わかっているだろ。これが一番いいやり方さ」
「ジョニーさん、一体どういうつもりなんですか?」
「なるほどね。わかったよ、お安い御用だ」
「そういうことだ。レミー、俺はもう寝る。あとはお前に任せるぞ」
「は? ちょっとマスター」
ジョニーはそのままレミーの言葉に返事もせず、振り返ってさっきまでいた部屋に向かっていった。そしてドアを開ける前で、俺達に振り向いた。
「起こすなよ」
その一言だけ残して、ドアを閉めた。
「はは! ジョニーさんもよっぽど疲れていたんだな、目の下にくまができてたぜ」
「もう、全部ロバートさんのせいですよ」
「俺に言われても」
「じゃあ、さっさと小僧の適性検査を終わらせるぜ。着いてきな」
「ちょっと待って。適性検査はいいんだけど、ロバートの対戦相手は誰なの?」
パメラが改めて質問した。俺はなんとなく予想はできていた。カルロスが何も答えず、笑っていた。パメラも気づいたようだ。
「カルロス!?」
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