第二百四十一話 最後の手段
※当面の間、執筆を休止します。次回の更新は未定です。
皇帝の予想外な言葉に不意を突かれた。スージーは咄嗟に振り向いた。
「……な、なにこれ!?」
「あれが……そなたが大事に育てたという神話の怪物かね」
スージーは目を疑った。そこには大波を立てながら泳いでいるアクーパーラの姿はなかった。あるのは巨大な怪獣の首が、小さな島の沿岸部に打ち上げられている光景だった。
「そ、そんな……なんで!? どうして!?」
「確かに巨大な怪獣のようだが……あの様子じゃ、どうあがいても我が帝国にとって脅威にはならないぞ」
「誰かはわからんが、討伐してくれた人間には感謝しないと……」
「おや? 浜辺に何人か立っているぞ。見たところ貴族も混じっているようだが……」
スージーもすぐに気づいた。浜辺には元気よく五人の男女が立っている。全員すぐに誰かはわかった。
「……ロバート……おのれえええええええええ!!」
「あぁ、スージー様。落ち着いて……」
キャサリンがたまらず本名で呼んでしまった。だけどスージーは聞く耳持たず、遂に怒りが頂点に達する。
「こうなったら……最後の手段よ。この私が引導を渡してやるわ!」
「え? スージー様、まさか……」
スージーは再び皇帝の方に向き直る。自ら宙に浮かんで両手を広げ魔力を高めた。
「る、ルウミラ殿!? 一体何を!?」
「やめないか、ルウミラ殿! 乱心したのか!?」
「本当は見せたくなかったけど、私の真の恐ろしさを見せてやるわ!」
「ああああ、スージー様! おやめください」
キャサリンや貴族達の制止など全く聞く耳を立てず、スージーは杖をかざし魔法を唱える構えを見せた。
「おい、ここは宮殿だぞ! 冷静になれ!」
「遂に本性を現したな! やはり帝国本土の支配が真の狙いだったのか!」
「早く衛兵を呼べ! この女を捕らえるんだ!」
「その必要はない。皆の者」
慌てふためく貴族達とは対照的に、皇帝は冷静に声をかけた。
「スージー殿と言ったな。貴殿は自分の素性を偽り、さらに宮殿内にて許可もなく魔力を暴発させている。その行為は重罪にあたるぞ」
「ふふ、それがどうしたというの? そうよ、私の本名はスージー。。ルウミラなんて私があっさり倒したわ」
「馬鹿なことを言うな! 彼女は帝国最強の魔道士だぞ!?」
「あらあら、まだ信じないのね。いいわ、だったら嫌でも教えてあげる」
スージーの瞳が怪しく光ると、貴族の一人が宙に浮かび上がった。
「うわわわ……何をする!?」
「これでも私の力を疑う?」
浮かんだ貴族が一直線に移動され、反対側の壁に叩きつけられた。
「ぐわあああああああ!!」
「やめろ! おい、早く誰かあいつを止めるんだ!」
「うるさい貴族達ね」
貴族達は全員何かの力で首を絞められもがき苦しみだした。
「う……うぐぐぐぐぐ……」
「か、体が……言うことを……」
「へ、陛下! 早く……逃げて……」
「ほほほ、私を怒らせた罰よ。あとは皇帝だけよ。おとなしく私に従いなさい」
「……残念だが、それは不可能だな」
皇帝は相も変わらず冷静な態度を崩さない。さすがのスージーもいきり立った。
「あなた、今のこの状況が飲み込めないの!? いくら国家元首だからと言って、もう少し身の危険を自覚したらどうなの」
「ふふ、違うな。その程度の魔法など、私には通用しないのだ」
「……なんですって!?」
「試したらどうだね、スージー殿」
「……じゃあ見せてあげるわ、とっておきを」
スージーは巨大なファイアーボールを形成し、皇帝に見せつける。それでも皇帝は動じない。
「おほほほ、言っておくけどこれでもまだまだ序の口よ。本当はもっと巨大化できるけれど、さすがに宮殿が破壊されちゃうからね」
「いいだろう。撃ってみるがいい」
全く動じない皇帝を見て、スージーは内心いぶかしんだ。
(なんでこんなに冷静なのよ、こいつ!?)
「スージー様、冷静になって。今ここで皇帝を殺してしまったら……」
キャサリンがそっと小声で話しかける。
「……安心して、このファイアーボールは脅しよ。直撃する寸前に消滅するから」
「どうした? 撃ってこないのかね?」
「その強がりもすぐに恐怖に変えてやるわ。もっとも恐怖を感じる前にあの世へ行くかもね」
「や、やめるんだ! スージー殿!」
第二百四十一話ご覧いただきありがとうございます。
この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。
https://twitter.com/rodosflyman