第二十四話 俺のHPがバグってる!?
ジョニーが〈鑑定石〉を俺に見せた。遂に俺のステータスがこの世界に来て、初めて他人に晒される瞬間だ。
本来なら自分のステータスを覗かれるのはいい気分じゃない。自分の強さが丸わかりになると、勝てるか勝てないかの目安もハッキリするからだ。
だが俺は別に覗かれたっていい。いや、むしろ覗いてくれ。俺の巨大なステータスを。
ジョニーが鑑定石をじっと見つめる。すると徐々に表情が凍り付いた。
「…………」
しばらく無言の時間が続いた。ジョニーは何を思ったのか、突然〈鑑定石〉を小突いた。
「あ、あの……マスター、どうしました?」
「はは、私の〈鑑定石〉も狂ったかな」
「え? 壊れたんですか?」
「レミー、君の〈鑑定石〉を貸してくれないか?」
「はい、どうぞ」
ジョニーがレミーから〈鑑定石〉をもらった。再び俺のステータスを投影させている。だがまた同じような表情になる。
「……あの、マスター?」
「これは……おかしいな」
「そんな、私の〈鑑定石〉も壊れたって言うんですか?」
「壊れているか壊れていないか、俺が見ればはっきりするよ。ちょっと見せてもらえるかな」
「えぇ!?」
突然パメラの大声が聞こえた。なんとパメラも自分の〈鑑定石〉で俺のステータスを見ていた。
周りの野次馬たちが一斉にパメラに寄った。
「ど、どうした!? パメラ!?」
「そんな……ありえない」
「何があり得ないって? ちょっと見てもいいかな」
野次馬たちも一斉にパメラの〈鑑定石〉を覗き込んだ。俺のステータスがこの場にいる全員に知れ渡ってしまう。もうどうにでもなれ。
「な、なんだこりゃ!?」
「は、HPが!?」
「65万!?」
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ロバート・ヒューリック (貴族)
ランク:D
レベル15
HP:648480/650780
MP:0/0
攻撃力:238
体力:65078
防御:10
素早さ:100
器用さ:0
魔力:0
跳躍:110
魔法防御力:0
状態異常耐性:0
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65万、やっぱりそう表示されているか。悪いが、その表示はおかしくない。正常だ。
屋上に落下する直前に、その時までに貯まっていた割り振り値32535を全て体力に注ぎ込んだ。それまで体力に注ぎこんだのは4、合計で32539になる。
さらに装備している〈神剣コスモソード〉の特性で全ステータス二倍になるから、体力は65078にまで伸びた。さらにさらに、HPは体力の十倍の数値になるから、俺のHPの最大値は650780だ。
「そうだよ、俺のHPは正確には650780さ。因みにレベルは15、ランクはDで間違いないよ」
俺は改めて自分で正直に言った。全員が俺を見つめる。俺がやけに冷静に話していることで、余計に不思議がっているな。
「ふざけんな! 65万なんてありえねぇだろ!? 〈鑑定石〉の不具合に決まっている! そうでしょ? マスター?」
「……俺のだけならともかく、レミーとパメラの〈鑑定石〉も壊れているっていうのか。それはさすがにないだろ」
「そんな。ってことはマジでなのか?」
全員黙り込んだ。俺に対して恐怖の視線を向け始めた。マズいな、この感じは。やりすぎたか。
さてどうやって誤魔化そうかな。
「あの、ちょっといいですか?」
突然レミーが口を挟んだ。
「なんだね、レミー?」
「私が思うに、恐らくロバートさんのステータスは……」
レミーは少し間を置いた。
「ロバート君のステータスは何だと言うんだね、レミー?」
「多分なんですけど、バグなんじゃないかと」
妙な言葉が飛び出した。バグだって?
「ば、バグだって!? レミーさん、なんだいそりゃ!?」
「レミー、お前本気で言っているのか?」
「でもそれ以外に考えられません。HPが65万超えだなんて……」
また野次馬たちが騒めき出した。そりゃそんな言葉が出たら、騒めく。バグというのはゲームを嗜んでいる人が嫌でも耳にする言葉だ。いわゆるゲームにおける一種の不具合だ。
ゲームはコンピュータプログラムで構成される、そのプラグラム上の欠陥を意味するスラングだ。
なるほど、確かにそう言われれば俺のステータスはまさにバグだな。だけどどうしてそんな言葉、レミーさんが知っているんだ。というか、俺が知る限りそんなメタっぽい言葉は〈ロード・オブ・フロンティア〉には存在しない。もちろん登場するキャラクターが、そんな言葉を発言する場面も見た記憶はない。
俺の知らない要素だな、これは。
「バグ、ねぇ……」
ジョニーが神妙な面持ちで俺を見つめた。もしかしてこれで納得したのか。
「あの……バグって一体何のことかな?」
俺は一応聞いてみた。
「バグというのはね、通常のステータス法則が適用されない戦士のことよ」
「え? パメラ、知っているの?」
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