第二十二話 レミーの体に異変が!
※第十四話を修正、アリゲーターベアからコアを入手する描写を書き加えました。
パメラは黙って頷いた。なるほど、たまたま通りかかったのではなく、最初から奴を討伐する目的であそこにいたわけか。
「マジか! それで、その……なんというか……奴はどうなった?」
「もちろん、倒したわ!」
「た、倒した!?」
周りにいた野次馬戦士は一斉にざわつき出す。彼らの視線が全員パメラに集まった。
やってくれるな、パメラ。俺に集まっていた注目を一斉に自分に移すとは、だがこのままじゃ彼女が討伐したってことになる。
まぁ俺が倒したってことになると、かえって目立ちすぎてしまうし。それに誰が討伐したかなんて正直どうでもいい、報酬さえもらえれば俺はそれでいいんだ。
「スゲェ! いや、あんたの実力ならわかっていたけど、それにしてもたった一人で……」
「見事だ、パメラ。やっぱり俺の見込んだ通りだな」
「ありがとうございます、ジョニーさん」
「それで、肝心の討伐の証は?」
「え?」
「君が倒したって言うんなら、持っているはずだ。アリゲーターベアを討伐した証を……」
「……」
パメラが黙り込んだ。いや、これは想定していたはずだ。パメラは何を考えているんだ。
俺の記憶では、パメラはアリゲーターベアの戦利品を入手していないはずだ。
だがここでパメラは急にショルダーバッグを開け、その中から異様に伸びた爪を取り出した。
あれは間違いない、アリゲーターベアの爪だ。俺の目を盗んで既にあのバッグの中に入れていただなんて、抜け目ない女性だ。
「これでどうですか?」
「その爪は!?」
「ほう、見せてみろ」
野次馬の戦士達とは対照的に、ジョニーは冷静な表情でその爪を手に取りまじまじと見つめ始める。まるで鑑定士だな。
「確かに紛れもなく、アリゲーターベアの爪のようだな」
「なんてこった、すげえ! さすがランクAの戦士!」
「ありがとうございます、ではこれで……」
「だが一番肝心な物を忘れているぞ、パメラ!」
突然ここでジョニーが釘を刺した。まさかアレのことか。
「まだ何か問題でも?」
「おいおい、君ともあろう者が肝心なことを忘れちゃ困るよ。確かにこれはアリゲーターベアの爪だが、これじゃ討伐したって証拠にはならない」
「何言ってんです、マスター? 爪があっても討伐の証拠にならないって一体どういう……」
「ふぅ、全く。今ここに集まっているのは狩りを始めたばかりの初心者どもか!?」
「あのな、討伐の証にはモンスターのコアが必要なんだよ」
「モンスターのコア!?」
野次馬の戦士の一人が呟いた。その通り、ギルドで依頼されるモンスター討伐の報告には、正式にはモンスターの体内にあるコアがないといけない。
「モンスターはいずれの個体も種類も、その体内にコアがある。モンスターを討伐する際に、必ずしもコアを取り出す必要はないが、コアを破壊しない限り死なないモンスターも中にいるんでね。今回のアリゲーターベアはそうではないが、コアを取り出せば確実にそのモンスターを討伐した証になる。だから、コアをギルドに持ってきて呈示する必要があるってことさ」
「なるほど……そうだったんですか。勉強になります」
「さて説明はこのくらいでいいだろう。パメラ、コアは持っているか?」
ジョニーが不愛想な顔でパメラを見つめる。パメラはコアを持っていない。無言の時間が続いた。
「その様子じゃ、コアは持っていないようだね。となると妙な話になる、君は一体どうやってアリゲーターベアの爪を入手できたんだね?」
「……それは」
「パメラさん、さっきアリゲーターベアを倒したって言ったでしょ? あれは嘘だったんですか?」
野次馬の一人が質問してきた。
「倒したのは間違いないわ。だけど思い出してよ。誰が倒したかは、一言も言ってないでしょ?」
「だ、誰が倒したか、だって?」
「ってことは、やっぱりあんたじゃないってことか」
「えぇ、その通り。でもね、アリゲーターベアを倒した張本人なら、もうここにいるわ」
「な、なんだって!?」
パメラの衝撃発言に全員驚く。パメラが俺の方を見てにっこりとほほ笑む。あぁ、まずい。俺の名前を呼ぶつもりだ。
「ほう、では倒した張本人は誰なんだね?」
「それはですね……」
ドサッ!
パメラが言いかけたその時、突然誰かが床に倒れる音がした。さっきまで俺に回復魔法をかけていたレミーが、まるで力尽きたかのようにぐったりしている。
一体何があった?
「れ、レミーさん。どうしたんですか?」
「大丈夫か、レミー! しっかりしろ!」
「おい、小僧! レミーさんに何しやがった!」
「俺は何もしていないよ、彼女が勝手に」
「だ、大丈夫……です」
レミーはかろうじて声を出した。だが明らかに消耗している、今度は彼女を治療しないといけないのか。
「どうやら、MPを使いすぎてしまったようで……」
「MPを使いすぎただと?」
MP、魔法を使用するのに必要となるパラメータで、魔力を上げるとそれに比例して最大値が上昇する。
普通のRPGと同じ仕様で魔法を使用するごとに、使用者のMPは減っていく仕様だ。だがMPを使いすぎてゼロになってしまうと、〈衰弱〉状態になってしまう。まさに今のレミーがその状態だ。
するとジョニーが何やらポケットの中から、綺麗な丸い形をした光る小石を取り出した。さっきパメラが馬車の中で出したのと同じ〈鑑定石〉だ。
「すまん、レミー。ちょっと覗くぞ」
ジョニーが申し訳なさそうな感じで、レミーのステータスを〈鑑定石〉で投影させた。恐らく今のジョニーには彼女のステータスが見えているんだろうな。
「ジョニーさん! い、一体何が見えるって言うんですか!?」
「馬鹿! お前が期待しているもんじゃねぇよ!」
「なんだよ、てめぇ! 俺が期待していることわかんのかよ!」
野次馬たちが何やら騒いでいる。どうやら奴らは変な想像をしているようだ。やれやれ、やっぱりどの世界の男達も考えることは一緒なんだな。
「こ、これは!?」
唐突にジョニーが大声を出し、顔色を変えた。この感じじゃ、どうやらレミーのMPは本当にゼロになっているようだ。
するとジョニーが今度はウエストポーチから小瓶を取り出した。
「レミー、これを飲め!」
「は、はい」
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