第百九十七話 覚醒したエディ
少女が呼びかけるとそれに応じるかのように、穴から小柄な少年が姿を現した。
一瞬ロバートと思ったパメラだったが、よく見たら違った。身長はほぼ同じだが、髪の色が決定的に違う。ロバートと違って茶髪だ。
でも見覚えのある姿だった。
「エディ!? あなたも捕まってたの!?」
「ふふ……まずはお兄さんの身柄を返さないとね」
「エディ、もう大丈夫よ。早くその少女から離れなさい」
「待ってください!」
ノーラが大声で呼び止めた。兄が出てきたというのになぜか表情は険しいままだ。
「一体どうしたのよ? やっとエディと会えたっていうのにその顔は……」
「……エディじゃない」
「は? 何言って……」
「ふふ、いい勘してる」
ほくそ笑んだ少女の言葉を聞いて、パメラも身をこわばらせた。ノーラの意図はパメラにも読めた。
そしてエディはゆっくりと顔を上げる。間違いなくエディの顔、でもパメラはすぐにある物を見つけた。
(あれは……耳にピアス!? まさか!?)
「ピンポーン! 正解! さすが目がいいわ」
「な、なんですって!?」
まるで自分の心の声を読み取ったかのように、少女はパメラを褒め称える。
(……心を読んでいる!?)
パメラの心の中で少女への恐怖心がより増長していった。でも今は、少女のことよりもエディの救出が優先、気持ちを切り替えねば。
「ノーラ、今すぐにここから離れて!」
「で、でも……エディは……」
「心配しないで、彼なら……私一人でなんとか」
「できると思って? 言っておくけど……簡単には勝てないわよ」
少女は今度は右手に剣を出現させ、エディに向けて放り投げた。右手で剣を掴んだエディはパメラを睨みつける。
「……敵は……殺す!」
「やっぱり、あなた正気じゃないわね」
「エディ、お願いだから目を覚まして!」
「無駄よ。言っておくけど私の催眠は完ぺきだからね、それにステータスだってついに覚醒したわ!」
「ステータスが覚醒!?」
「さぁ、エディ! 二人にたっぷりと地獄を見せてあげなさい!」
少女の呼びかけに答えるように、エディは剣を両手で振りかざした。
「ノーラ、危ない!」
「きゃあ!!」
間一髪でノーラを抱いて回避した。直後、凄まじい轟音が聞こえたかと思うと、何と二人の背後の壁に巨大な亀裂が斜めに生まれていた。
「な、なんなの……これ!?」
「おーほっほっほ! エディの力、もっと思い知りなさい!」
再びエディが剣を振りかざす。パメラもなんとかノーラを抱いたまま回避したが、やはりさっきと同様壁に巨大な亀裂ができた。
明らかに普通じゃない。パメラはエディの強さを肌で感じた。
「……やっぱり間違いない。エディは……覚醒したんです!」
「覚醒って……どういうことよ!?」
「眠っていた力が呼び起こされたんです。多分、それがエディのステータスがおかしくなっていた原因」
「そ、それじゃあ……」
「やっとわかったようね。そうよ、今のエディはまさに最強の戦士! この島にいる誰だって勝てないわ」
「……本当にそうかしらね!」
しかしパメラは強気に言い返す。弓を構え、矢の先端をエディに向けた。
「パメラさん!?」
「ノーラ、目を瞑ってて。もし万が一外したら……」
「大丈夫です。私はパメラさんを信じます」
「ありがとう。それじゃあ……行くわよ」
「エディ、遠慮はいらないわ。やってしまいなさい」
エディが再び剣を振りかざそうとした剣を持ち上げたその一瞬を、パメラは逃さなかった。
カキィイイイイン!!
「……嘘?」
「ふふ、残念ね」
パメラが放った矢は無残にも地面に突き刺さる。手首を狙ったはずが、あっさりとエディの剣で弾かれたのだ。
「言ったでしょ? 今のエディは最強の戦士だってね」
「そんな……そんなはずは……」
パメラも呆然とせざるを得ない。今の自分はロバートからもらった膨大なステータスがある。
この膨大なステータスなら、勝てない敵はいないと信じていた。でもその自信も崩れ去った。
「パメラさん、避けて!」
「……はっ!?」
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