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第百九十四話 ザックスの強さの謎

 たとえ罠だろうと関係ない。宿敵のいる場所までショートカットできたのは、願ってもないこと。無駄な魔力も使わずに済んだ。


 だけど気がかりなこともある。彼女と一緒にいたはずのミーナとスージーが、どこかへ消えた。


「あの二人には申し訳ないけど、探すのはあとよ。多分アメリアが居場所を知ってるはず。悪いけど、もう少し辛抱して……ん?」


 その時ふと彼女の視界の先に、家の屋根の一部が見えた。近づいてその家の全体像をしっかりおさめる。


「ここだ! ついに着いたわ」


 距離にして約100mほど先の場所、一回りも大きく豪華な屋敷があった。


 ルウミラが屋根を見上げると、テラスが見えた。自分がこの前負傷した際にホルスに運ばれて吐き出された場所だ。


 アメリアの隠れ家と確信し急ごうとしたが、踏みとどまる。どんな罠が待ち受けているか知れない。慎重にいかなければ。


 ドォオオオオオオオオン!!


「な、なに!?」


 動き出そうとした直後、轟音とともに地面が大きく揺れた。


 ルウミラはすぐさま周囲を警戒した。今の音と振動からして、何か巨大なモンスターが出現したに違いない。


「出てきなさい! どんな相手だろうと今の私なら負けないわよ!」


 ルウミラは音がした方向へ移動を始めた。しかし強気な声を出したものの、なぜか彼女は胸騒ぎが止まらなかった。


 ここに来て怖気づいたいうのか。自分でもよくわからない。嫌な予感がしてきた。


「……あれは!?」


 彼女が見たのはモンスターではなかった。なんと地面に大きな穴が開いた場所のすぐ隣には、小柄の少年が立っていた。


 武器も持っていない。鎧すら来ていない。半袖と半ズボンを着て裸足で立っている。


 誰かに似ていると思い、目を凝らしてじっと顔を見た。


「ザックス!? 確かロバートの弟の?」


 ルウミラはここでアメリアの言葉を思い出した。ロバートと東の大灯台で戦った次の日、アメリアが別荘内で打ち明けた。


「ロバートには弟がいるの。ザックス・ヒューリックって言ってね。彼はいざという時に使えるわ」


 アメリアの部下達が冒険者に扮し、ザックスが気絶したのを見計らって誘拐に踏み切ったのだ。


 何のために誘拐したかアメリアは詳細に語らなかった。恐らく人質として使うつもりだろうとルウミラは思い、それ以上は考えなかった。


 まさかここに連れて来られていたとは、ルウミラの予想外だった。でも理由はどうあれ、ここで会ったからには連れて帰らないと。


「ザックス・ヒューリックね! 私は魔道士のルウミラよ。兄のロバートがあなたの帰りを待ってるわ。こっちにいらっしゃい」


 話しかけてみたが返事をしないまま、ザックスが顔を向けた。ルウミラと目が合ったが、まるで無表情のままだ。


 やっぱりザックスに間違いない。でもなぜか返事をしない。


「ザックス! 聞こえてるんでしょ? 私は敵じゃないわ! お兄さんをこれ以上心配させないで!」

「…………」


 やはり返事をしない。無表情だった顔が徐々に険しい顔になって来た。


 多分自分をまだ敵だと思っている。無理もない、ほんの少し前までは自分はアメリアの忠実な部下だったから。


「……わかったわ。なら少しの間、眠ってて。〈ディープスリープ〉!」


 話が通じない以上、眠らせるしかない。〈フローティングボード〉に乗せて安全な場所まで避難させて、再びここに戻って、今度こそアメリアとの決着をしよう。


 ルウミラはそう考えたものの、計算は狂ってしまった。


「……あれ!?」


 〈ディープスリープ〉は確かに発動した。間違いなくザックスにかかったはず。それなのにザックスは微動だにしない。


「……そんな、どうして眠らないの!?」

「……ルウミラは敵! 殺す!」


 眠るどころか鬼のような形相に変えたザックスが突然踏み込んできた。


「〈プロテクトバリア〉!」


 攻撃を仕掛けてきたと思い、咄嗟に防御魔法を唱える。ザックスは構わず素手で殴りかかって来た。


 そんな攻撃など通用しない。ましてや強化された自分の魔力なら、どんな威力の攻撃だって防げるはず。


「え!?」


 バリィイイイン!! 


 何かが割れる音が聞こえた。〈プロテクトバリア〉が破壊されたと気づいたルウミラだが、時すでに遅く彼女の体は吹き飛ばされた。


 遥か後方の木の幹に体が激突し、ルウミラはそのまま身動きが取れなくなった。


 自分の魔力ならバリアが破壊されるはずがない。どうして破壊されたのか、何が起きたのか。痛みに耐えながら、頭の中で真剣に考えを巡らした。


 そしてとんでもないことに気付いた。ザックスの左耳、見覚えのあるピアスが装着されていた。


「〈シェアリングピアス〉! となると……もう片方は……」

第百九十四話ご覧いただきありがとうございます。


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