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第十九話 〈レビテーションシューズ〉で空中浮遊!

 パメラは振り向いて走っていった。恐らく正確な時間がわからないから、パメラはもうすぐギルドが閉まると思っているだろう。


 まぁ、この辺はやっぱり異世界転生者ならではの特典だな。いずれにせよ今の時間は21時30分、まだ余裕はあるな。


「あ、肉団子……」


 すっかり忘れてた。パメラからもらった肉団子、まだ一つだけ残っていた。やっと食べられる。


 チンピラとのいざこざですっかり冷めてしまっていた。残った串を捨てようと思い、ゴミ箱がないか探した。


 その時、あることに気づいた。


「ゴミ……? そういえば確かここって……」


 俺が今いるこの場所は見覚えがある。ソーニャの町の商店が立ち並ぶ通りだが、夜になると人通りが少なくなり、昼間では通れなかった裏通りに行けるようになる。


 その裏通りにはこれまた貴重な装備品が隠されている。ちょうどパメラが矢を放った当たりに、裏通りへ入れる道が続いていた。


「間違いない、あの先だ……!」


 早速その裏通りに足を踏み入れる。曲がりくねった細い路地を二十メートルほど行くと、行き止まりだった。


 誰かが無造作に投げ捨てたであろうゴミやガラクタの山が目に入った。一見めぼしい物は何もなさそうだが、そうじゃない。この中にお宝はある。


「俺の記憶が確かなら、この中に……」


 前世でもゴミなんか漁ったことない。こんな場面を見られたら、俺は間違いなく不審者だな。


「ん? これは……!」


 ふと、透明の袋に入っていた靴を手に取った。靴のかかとの部分に『浮遊』の二文字が書かれていた。


 すると目の前に、長方形のメッセージボックスが表示された。


『「レビテーションシューズ」を入手しました!』


 来た。俺が欲しかったのはコレだ。またも思わずガッツポーズをした。 


 レビテーションとは英語で「Levitation」と書き、意味は「空中浮揚」となる。文字通り、この靴を履けば空中で移動ができるわけだ。


 俺は早速履いてみた。体が恐ろしく軽くなった気がする。〈レビテーションシューズ〉はアクセサリーに分類され、これを装備すればあのスキルが同時に使用可能となる。


『特殊スキル「ハイジャンプ」が使用可能となりました!』


 これだ。俺が使いたかったスキル、文字通り使えば空高くまでジャンプすることが可能になる。


 しかしただ単に履いてスキルを使っただけじゃ、空高くまでジャンプはできない。というか、今の俺はどう足掻いたって空高くまで飛べない。


 理由は俺のステータスにある。とりあえず、ステータスを開いて空高くまで飛ぶのに必要なパラメーターを上げることにする。


 これまでで俺は、攻撃力と体力、防御、素早さの数値を上げている。


 上げていないのは、器用さ、魔力、跳躍、魔法防御力、状態異常耐性の五つだ。


 その中で俺が注目したのは跳躍だ。このパラメーターは跳躍力を上げてくれる。跳躍力を上げるとどうなるか。それはジャンプをした時に、最大何メートルまで飛べるかに関わってくる。


 つまりスキルの〈ハイジャンプ〉は、跳躍の数値を上げないと意味がない。


 スキルの〈ハイジャンプ〉のおかげで、本来なら移動できないフィールドに移動出来たりもする。


 今こそ跳躍を上げる時だ。早速貯まった割り振り値で跳躍の数値を110まで上げた。


「これでよし!」


 跳躍は1上がるごとに、スキル〈ハイジャンプ〉で飛べる高さが最大1メートル伸びる。10上げれば10メートル、100上げれば100メートルもジャンプできる。


 特殊スキルも剣術スキルと同じでスキルゲージが白く光っていないと使用はできない。もちろん今は使える状態だ。俺はワクワクしてきた。


「早速飛んでみるか! スキル〈ハイジャンプ〉!」


 直後、俺の体が勢いよく上空へ飛んだ。ものの数秒で上空百メートル以上まで飛びあがり、俺はソーニャの町全体を見下ろした。


「す、すごい! 本当に飛んだ!」


 チャンチャラーン!


 特殊な効果音が聞こえた。レベルアップの音じゃない。そして目の前にいつものメッセージボックスが出た。


『称号「鳥人」を獲得しました!』


 そう、これは称号を獲得したときに聞こえる音だ。俺は今間違いなく上空100メートル以上飛んでいる。〈鳥人〉という称号は、100メートル以上の高さまでジャンプしたときに獲得できる。


 自分でも信じられなかった。俺のすぐ横を飛んできた鳥もビックリしている。転生してまだ二日目にして、俺は早くも鳥の仲間入りをしてしまった。


「さて、ギルドはどこかな?」


 スキル〈ハイジャンプ〉を使ったのは、空高くまで飛んでみたいという好奇心も関係しているが、もう一つはこの高さからギルドの位置を把握することにある。


 ギルドは町の中心部にあり、三日月模様の旗が屋根に掛けられている。


「あれだ!」


 意外とすぐに見つけた。見たところ人が集まっている。夜中で閉まるから、駆け込みしている戦士達だろうな。


 ギルドの場所がわかったところで、俺はすぐさまギルドの真上あたりまで移動することにした。〈レビテーションシューズ〉の優れた点は、装備していれば跳躍後も空中で歩くことが可能となることだ。


 実は単にジャンプすること自体は〈レビテーションシューズ〉がなくてもできる。だけどその場合、ジャンプの高さが制限されるだけでなく、空中後も歩くことはできない。


 要するに現実世界でジャンプすることと、なんら変わりないわけだ。


「それにしても凄いな、本当に空を移動できるだなんて。風も超気持ちいいし。あ、鳥さんこんばんは!」


 俺は今空を闊歩している。現実世界ではありえないことを体験し、胸の高鳴りが抑えられない。


 夢じゃないんだ。これは現実なんだ。本当ならこうしてずっと空を散歩していたい。


 いや、のんびしている暇はなかった。〈レビテーションシューズ〉で動ける時間は限りがある。一分だ。なんとか一分以内にギルドの建物の真上まで移動しないと。


「よし、着いた」


 地上は建物が多いから、多分ギルドまで行くのに時間がかかる。だけど空からなら、建物なんか気にせず一直線でギルドまで行ける。便利だ。これで自由気ままにどこへだって行けるぞ。


 そして一分が過ぎた。体が一気に重くなる。だがここで俺は重要なことに気づいた。


「あっ、しまった!」

第十九話ご覧いただきありがとうございます。


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