第百八十四話 スージーの提案
スージーは返事をして頷いた。それを見たルウミラは魔法を詠唱し、〈フローティングボード〉を発進させた。
「ひええ! なんて速さなの!?」
「ミーナ、しっかりつかまってて!」
(まさかこの二人まで連れて行くことになるなんて)
当初の予定とは大きく変わってしまった。スージーとミーナ、この二人をアメリアの場所まで連れて行くことになるとは。
正直この二人は戦力的に期待できない。能力も実力もアメリアに知り尽くされている。
でもその問題も、自分と同じ方法で解決できる。ルウミラは行き先を変更することにした。
「あれ? ルウミラさん、この方角って……」
「コルネ村に行ってませんか? アメリアのところに行くはずじゃ……」
「えぇ、アメリアの場所に行くわ。でもそれは後回し」
「後回し? コルネ村に何か大事な用でもあるんですか?」
「彼がね、そこにいるみたいなの」
「彼って……」
「〈サーチ〉!」
ルウミラが杖の先端から巨大な島の地図が出現した。
「な、なんですかこの巨大な地図は!?」
「この島の全体図よ。この赤い点はロバートの位置」
「こんなに巨大な地図が!? 一体どれだけの魔力があるんですか?」
「ふふ、あなた達も直にこれだけの魔力になるわ」
「何を言ってるんですか?」
「ロバート・ヒューリックに会ってからのお楽しみよ」
ルウミラはそれだけ言うと〈フローティングボード〉の速度を少しだけ上げた。
スージーとミーナにも自分と同じ方法で、ステータスを極限まで上げさせてもらう。そうすれば二人も強力な味方が増える。
アメリアを倒すのに手加減など必要ない。三人がかりで卑怯だという考えもない。勝利を確実にするため、ルウミラは手段を選ばないことにした。
「あの……ルウミラさん、提案があるんですけど」
「提案? 何よ急に」
「その……どうせならもっと味方がいた方がいいと思って」
スージーはまるでルウミラの考えをくみ取ったかのように発言した。
「味方……確かに多くいた方がいいと思うけど、大勢で行くと目立ちすぎるわ」
「そ、そうですか……」
「いや、ちょっと待って。よく考えたらロバートなら適任ね。彼も連れて行きましょう」
もっともロバートを連れて行くなら、スージーもミーナも連れて行く必要などなくなる。
ルウミラはそう考えたが、敢えて言わないことにした。今ここでロバートの規格外の強さを説明しても、混乱させるだけだ。
「ロバート・ヒューリック、そんなに強いんですか彼は?」
「ミーナは知らないでしょうけど、私は彼の強さを目の当たりにしたわ。シールドシザーズを一撃で倒したの」
「シールドシザーズを!? 六つ星ランクのモンスターじゃない、一撃で倒したっていうの?」
今のロバートは六つ星どころか八つ星ランクのモンスターが出ても敵じゃない。そう思いながらルウミラは黙って二人の会話を聞いた。
「とにかくロバートさんは強力な味方よ。ルウミラさんのお墨付きもありますし」
「そうね。間違いなく最強の戦士よ」
「そうですか……でも、まだ……」
「なに? まだ不安だと言うの?」
「いえ、その……確かロバート・ヒューリックには仲間がいたはずですよね?」
「あぁ、そうね……弓使いのパメラさんと魔道士のエイダさんね」
「そう、その二人! ルウミラさん、あの二人も連れて行ってあげた方が……」
「駄目!」
ルウミラは即答し、〈フローティングボード〉を止め二人を睨みつけた。
「ひぃい! そんな怖い顔しないでくださいよ」
「ルウミラさん、あの……エイダさんはけっこう強い魔道士ですよ。私彼女の魔法に束縛されて、身動き一つできませんでしたから」
ミーナは怖がりながらも、懸命にエイダの強さを説明した。だけどルウミラの怒りは収まらない。
「必要ない! エイダは連れて行けないわ! はっきり言って足手まといよ」
「そんな……それじゃ弓使いのパメラさんは?」
やはりさっきと同じくルウミラは睨みつけた。
「ひぃい! パメラさんも駄目なんですか!?」
「でも、貴重な弓使いですよ。腕も確かですし、味方にしない理由が……」
「駄目! いいこと? エイダとパメラの二人だけは、絶対に駄目だから!」
頑なに拒否をするルウミラに、スージーとミーナも呆気にとられ何も反論できなかった。
だけどルウミラも冷静になった。
「……ごめんなさい。急に熱くなって」
「いえ、いいんです。なんか、二人に対して悪い思い出でもあるんですか?」
「別に……そういうのじゃないわ。とにかく、ロバートと私達三人だけで十分よ。わかった?」
二人とも黙って頷いた。
「じゃあ、改めてコルネ村に行くわよ」
ルウミラは前を向き、〈フローティングボード〉の再び動かした。
エイダとパメラの二人を連れて行けば、ロバートとの二人の楽しい時間も邪魔される。
あの二人とは一度敵対した仲だ、是が非でもロバートを奪い返すに違いない。それだけは避けなければいけないのだ。
「ロバートは……私のもの。誰にも渡さない」
「ルウミラさん、何か言いました?」
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