第十八話 ギルドは二十四時間開いていない
金髪と腰巾着たちが、若干動揺したような表情を見せた。もしかしたらこいつらより相当高いかな。
だが金髪は動揺を消して、すぐに余裕を浮かべ始めた。これは逆効果だったか。
「はっはっは! 15か、なるほど大した数字だ。まだ子供のくせによ。だけど残念だったな、ロバートよ。実は俺も15なんだ」
俺と同じレベルか。俺も金髪と同じ感想だ。意外と高かったな。
「だーはっはっは! 兄貴、こいつドヤ顔で15と自慢しましたぜ!」
「全く笑っちゃうぜ。言っておくが、同じレベルだった場合は純粋に高ランクほどステータス総合値が高くなるんだ。つまり兄貴の方が強いってわけよ」
「その通り。しかもこっちは五人、お前は一人だけだ。もう勝ち目はないぜ」
ランクBでレベルが15。確かに普通に考えれば、今の俺に勝ち目はない。人数も向こうが上だし。
「ってことだ。悪いが抵抗しない方がいいぜ。お前だって怪我したくねぇだろ?」
「残念だが、俺を人質にしたって無意味だと思うよ」
「あぁ? どういうことだそりゃあ?」
俺は今までの経緯を簡単に説明した。〈開花の儀〉で最低となるランクDとなった俺を、父は見はなし実家から追放した。そんな俺を人質にしたところで、父が積極的に俺を助けるために行動はしないだろうということを。
さぁ、これで諦めがつくかな。
「ってなわけで、俺を人質にしたところで無意味さ。おわかり?」
「ははは。なんだ、そんなことかよ? 追放だなんて可哀そうだな、だがしかし!」
「それでもてめぇを人質にする理由がある。親父さんはそうでも、おふくろはどうかな?」
「なんだって?」
「とぼけんなよ。親父はてめぇを見放したかもしれねぇが、母親は違うだろ?」
しまった。確かに母に関しては、俺が実家から離れていくことに反対していた。俺が旅立つ日も、いつでも帰っていいと言ったばかりだ。
父とは違って、母は俺への愛情がある。トマスもそうだ。
逃げるのは簡単だが、この様子じゃ本当に俺の家族に手を出しかねない。父はともかく、俺を最後までかばってくれた母やトマスに手を出すのは絶対に許さない。となると、やるしかないか。
「……そうかい。それじゃ尚更、おたくらに捕まるわけにはいかないな」
俺は持っていた〈コスモソード〉を鞘から抜いて、鋭い刀身を見せた。左手にパメラからもらった肉団子を持っているから、右手だけしか使えないが別に問題はない。
「な、なんだ? てめぇ、いつの間にそんな剣を?」
「まさか、本気で戦うつもりかよ?」
チンピラ達がビビってる。もしかしたら、無意識に威圧されているのかも。だとしたら正しい反応だ。
「あ、兄貴……なんかヤバそうですぜ。あの剣……」
「ビビるな、てめぇら! 見たことねぇ剣だが、五人がかりでかかれば負けねぇ! 行くぞ!」
さっきのは取消だ。やっぱり単細胞だな、こいつら。
言っておくが、勝負は見えている。確かにランクは向こうが上だが、さっきアリゲーターベアを倒すのに俺の攻撃の数値を上げまくった。
その状態で剣術スキルの〈烈風剣〉を使う。こいつらはアリゲーターベアほど強くないから、これで全員いちころだ。
俺は向かってくるチンピラ達に向かって、〈烈風剣〉を放とうと剣を構えた。だがその時だ。
シュバッ!
「ぐわぁあああああああ!!」
俺の顔の真横を何か鋭い刃のようなものが、高速で横切った。その直後、目の前にいた金髪の剣が地面に落ちた。
金髪は左手で右手の甲をおさえている。よく見ると、右手の甲に矢が突き刺さっていた。
「まさか!」
後ろを振り向いた。やはり矢を放った張本人が、後ろにいた。
「あなた達、寄ってたかって弱い者いじめ? 見苦しいわよ」
「お、お前は!?」
「パメラ、どうしてここに?」
「あなたが来るのがあまりに遅かったんで、戻ってきたところなのよ。それにしても第一声がそれっておかしくない?」
「え? あぁ、そうだった。助けてくれてありがとう!」
うっかりしてた。自分で倒す気満々だったから、助けてもらったっていう実感がわかなかった。
パメラの立場に立てば、俺の危機を救ったんだからここはお礼を言うのが筋だろう。俺もつくづく馬鹿だな。
「ぐぅ、てめぇ。よくも俺の右手を……」
「兄貴、あいつはヤバい! 撤退しましょう!」
「て、撤退だと!? お前ら正気か、あいつは女じゃねぇか。女一人増えたところで……」
「ただの女じゃねぇっすよ。ランクAの戦士、パメラ・シュナイダーっす!」
「なに? あのパメラだと!?」
チンピラたちの顔色が変わった。パメラのことはけっこう有名だったらしい。さすがランクAだな。名前だけで震え上がらせるとは。
「言っておくけど、ここからあなた達を一網打尽にすることもわけないわよ」
パメラが矢を若干斜め上方向に向けて弓を構える。その言葉は脅しじゃない。
弓使いの戦士なら、遠く離れた敵の集団を一網打尽にできる便利なスキルがある。その名も〈アローレイン〉。
上空に矢を放って、遠く離れた敵の集団に矢の雨を降らす攻撃。俺の〈烈風剣〉と同じ、複数の敵を一網打尽にできるから、弓使いにとってはなくてはならないスキルだ。
彼女の実力なら、もうチンピラたちも敵じゃない。まぁ俺一人でも十分勝てたんだが。
「ぐぅ! くそっ、覚えていろ!」
金髪はそう言い捨てて、去っていった。いやいや、なんてお決まりの言葉なんだ。だが確かにこの言葉通りに撤退したんだっけ、あいつらは。まるで台本でも読んでいるようだな。
「怪我はない、大丈夫?」
パメラが近づいて言葉をかけた。何て優しいんだ。
「大丈夫だよ。だけどなんというか、素晴らしい弓の腕だね。あの距離で、しかも明かりも少ないのに」
「誉めたって何もあげないわよ、それよりあいつら何者?」
やっぱり聞いて来たか。パメラには無関係なことだ。適当に誤魔化そう。
「気にしないでよ、ちょっといろいろあってね」
「ふーん、まぁいいわ。あいつら逃げたみたいだから、急いでギルドに行くわよ。もうすぐ日付変わっちゃうし」
パメラがギルドの方向を指差した。
「あぁ、そうか。すっかり夜更かししたね」
「そういう問題じゃなくて、ギルドが閉まっちゃうっていうの! だからとにかく急いで!」
「へ? そんな設定あるの?」
「何言ってんの? ギルドだって二十四時間開いてるわけじゃないのよ、夜中になったら入れなくなるわ」
何だそりゃ。そんな話は知らないぞ、夜中になったらギルドに入れなくなるって。
いや、ここは俺がどうかしてた。
俺は前世で確かに〈ロード・オブ・フロンティア〉をやり込んでいた。二十四時間寝る間も惜しんで、やり込んでいたこともあるが、一度だってギルドが閉まっていたことはない。
それもそのはず、ゲーム内の時間は現実世界の時間と連動なんかしていないからだ。
一応昼夜っていう概念はあったが、よく考えたら夜中という時間帯はなかった。これだけはさすがに初めて知った。
〈ロード・オブ・フロンティア〉が現実の世界と同じ、一日二十四時間というサイクルになると、確かに夜中になれば店が閉まってしまうだろう。
パメラの言う通り、夜中になったらギルドに入れなくなるだろう。俺は右下に表示されている時間を確認した。
「今は……21時30分か」
「え? あなた時間がわかるの?」
「あ、いや! 気にしないでよ、勘で言ってるから」
「もう、変なこと言わないでよね。じゃあ、私は走るから、あなたも急いで。今度変な奴らに絡まれても、助けてやらないから」
「あぁ、わかってる」
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