第十七話 絡んできたチンピラども
なんてことだ。金髪の男が俺の名前を言い当てた。
だがよく考えてみれば、それも無理もないか。思えば俺は幼い頃から何度かこの町を訪れている記憶がある。
ましてや俺はこの島を治める名門貴族ヒューリック家の長男だ。顔を知っている人間が多くいてもおかしくない。
俺としたことがしまった。うっかり変装もせずにこの町に来てしまうだなんて。
このままじゃ面倒ごとに巻き込まれそうだな。
「俺のこと覚えてるよな? えぇ、ロバートの坊ちゃん?」
「悪いが覚えていない。人違いじゃないか?」
「人違いだぁ!? てめぇのような有名人の顔、間違える奴はいねぇよ! なぁお前ら!」
「そうだ。俺達はみんな知ってんだぞ! てめぇが名門貴族ヒューリック家の長男だってことを」
「さらにヒューリック家の長男は今年で十三歳になるって話だ。十三歳っていったら……」
「創造神プロビデンスの〈開花の儀〉が受けられる。てめぇも受けたんだろ、儀式を?」
おいおい、こいつらは俺のファンかよ。だが俺もここで思い出した。
前世の記憶だが、確かにソーニャの町に来て最初の夜に、チンピラの戦士達に絡まれるイベントが起きる。人数とキャラの外見も全く一緒だ。
となると、この後の展開を考えて俺が今するべき行動は一つ。
(ステータス!)
俺は心の中で唱えた。目の前にいつものステータス画面が現れた。もちろん奴らには見えていないな。
アリゲーターベアを倒したことでレベルが15まで上がり、割り振り値もとんでもない数値になっている。こいつらはそこまで強くないから、今のステータスでも十分勝てるが、正直無駄な戦闘も避けたいし、何よりこんな町中で騒動を起こしたくない。
俺はとにかく素早さに割り振った。素早さは走力を上げてくれる。これで逃走は完ぺきだ。
「なぁ、ロバートの坊ちゃん? 一体炎の数はいくつだった?」
「そんなこと言うと思うかよ。大事なステータス情報じゃないか」
「はっはっは! そうか、そうだよな。言えるわけねぇよな! だってよぉ……」
金髪は自信満々に右手を前に出した。そして人差し指と中指だけを立てた。
「てめぇの炎の数はたった二つだ!」
やっぱり知ってたか。ここまで来たら、ファンと言うかストーカーだな。
「…………それがなにか?」
「なにか、じゃねぇよ! 最低じゃねぇか、よくそれで堂々と戦士してられるな?」
金髪の言うことはもっともだ。確かに堂々と戦士として振るまうには恥ずかしい数だ。
「お前はDランク戦士なんだ! 最底辺の落ちこぼれって奴だ!」
「名門貴族の坊ちゃまがねぇ。ヒューリック家も落ちぶれたもんだぜ」
「中央大陸からおこしになる帝国の侯爵様から、領有権はく奪されるんじゃねぇのか?」
腰巾着たちも必死で俺を煽りまくるんだな。なんか哀れになって来たな。
これ以上言われるとさすがに気分が悪い。俺も何か言い返そう。
「全くお前ら本当に暇人なんだな」
「な、なんだと!?」
「だってさ、こんな夜遅くに寄ってたかって貴族の子供を罵るって、普通の人間ならまずやらないぜ。そんな暇があるんなら、おとなしく家で帰って風呂でも入って寝てりゃいいのに」
「……風呂だと? 一般庶民の家にそんな立派なものがあると思ってんのか?」
あ、しまった。ここは日本じゃないんだ。
〈ロード・オブ・フロンティア〉は中世ヨーロッパの世界観がベースとなっている。風呂は確かに一般庶民の家にはなかったな。俺としたことが、まだ現代日本と同じ感覚だな。
「すまない、今の言葉は忘れてくれ」
「忘れろだぁ? さっきから聞いてりゃ、てめぇ俺達のこと見下し過ぎだろうが! やっぱり親子だな」
全く沸点が低すぎるなこいつら。にしても親子だとは、どういうことだ。まさか父が何かやらかしたのか。
「まさかと思うが、俺の父がお前らに何かしたのか?」
「あぁ、そうさ! てめぇの親父には散々こき使われた挙句、もらった賃金はほぼピンハネだ。一か月分の報酬を正規の額もらったことなんか一度もねぇ!」
「へぇ、そう」
俺は適当に聞き流した。確かにそれはひどい話だ。まぁ、普通の人間にそんなことするほど俺の父も悪党じゃない。こいつらの態度や言動を見れば、ピンハネされるのも当然か。
「だからって、俺に文句言ったって何も始まらないぞ。それは本人に直接抗議しないと」
「あぁ、わかってるさ。本人に直接抗議する。だがその前に……」
男達はここでようやく剣を抜いた。とうとう本心を見せたな。
「てめぇを人質にとってな……」
おいおい、いくら夜遅いとはいえ、こんな町中で犯罪を堂々と犯すとかこいつら正気か。元がゲーム世界だからか、キャラクターの言動や行動が滅茶苦茶すぎる。
「何言い出すかと思ったら、俺を人質にとるとか本気で言ってんのか?」
「当たり前よ! 恨むんならてめぇの親父を恨むんだな」
「悪いけど、ただで捕まるわけにはいかないよ」
「おいおい、まさか俺達と一戦交えるつもりか? やめておけ、てめぇは最低のランクDの戦士だろ?」
「因みに、俺はランクB、こいつらもランクCだぜ。これが何を意味するかわかるか?」
金髪は自慢げに語る。目の前にいる五人は全員俺よりランクが上、リーダー格の金髪がランクB。
俺がランクDだから、同レベル帯ならほぼ勝てる理由はない。
こいつらのレベルはいくつだっけ。さすがにそこまで正確には思い出せない。仕方ない、俺から切り出すか。
「確かにランクは最低だけど、レベルはどうかな?」
「レベルだと!?」
「俺のレベルは、15さ」
「じゅ、15!?」
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