第百六十八話 マグマの川出現!
突然出てきた姉さんという言葉は、当然俺にも引っかかる。パメラに姉がいたなんて、初めて知るな。
でも救えるってどういうことだ。何やら事情がありそうだ。
「ごめんなさい、なんでもないわ。今のは……聞かなったことにして!」
「なんでもないって……何か事情があるなら、遠慮なく話してくれても」
「なんでもないから! もう、レディーに対して失礼じゃない!」
それを言われたら何も言い返せないな。確かに人の裏事情に野暮に足を突っ込むべきじゃない、俺も自重しよう。
「わかったよ。でも困ったら、遠慮なく話してくれ」
「ありがとう。それより……先を急ぎましょう!」
パメラも気を取り直して歩き始める。
さっきの言葉も気になるけど、今は脱出を最優先だ。
そこからは移動も順調だ。モンスターも出てきたけど、強すぎた俺達の敵じゃない。
10分くらい歩いた時点で、ある異変が起きた。
「……なんか、暑くない?」
パメラの言う通り、気のせいじゃなかった。確かに温度が上がってきているのを感じた。
分かれ道もなくほぼ一本道でずっと進んできたが、どんどん気温は上がってくる。この先にあるアレが原因だろう。おかげで汗だくになってきた。
「はぁ……はぁ……ちょっと、さすがにこの暑さは……」
「うわわ、ちょっとパメラ!?」
なんとパメラが上着を脱ぎ始めた。衝撃的なシーンじゃないか。
もちろん下にも服は着ていたから、安心した。
思わず目を背けてしまったけど、よく考えたら女性の脱衣シーンなんか前世でも見たことない。あぁ、しまったな。
「……なにジロジロ見てるのよ?」
「あぁ、ごめん。さ、先に……進もう!」
怖い目で睨んできた。下着というわけじゃないけど、今のパメラは上着を脱いで、まさかのタンクトップ姿。大きく膨らんだ胸、しかもへそまで少し出てる。
ドキドキしてきた。こんな露出の激しい金髪の女性と、二人きりで歩くなんて。
暑くなってきたせいもあるけど、俺は徐々に平静を保てなくなった。仮にも男なんだぜ。
考えるな。考えちゃ駄目だ。ここで変な気を起こすなよ、絶対に。何も考えずひたすら歩き続けた。
「ちょっと、待ってって!」
思わずパメラを呼ぶ声が聞こえた。
振り向くと、かなり距離を開けてしまっていた。歩くことに集中しすぎて、パメラとの距離を考えていなかった。
でもタンクトップ姿のパメラが近づくと、またドキドキしてしまう。
やばい。咄嗟に俺は前を向いた。
「も、もうすぐ……地上だ。今度は離れないで」
また歩き出そうとしたその時、なんと俺の腕をパメラが掴んだ。
「うわわ……ちょっと、なにして?」
「こうでもしないと、また置いて行かれるわ。あなた歩くの速すぎるから」
「そ、そうだね。じゃあ……い、行こうか……」
ますますドキドキしてきたじゃないか。タンクトップ姿の金髪の女性と手を繋いで歩くだなんて、こんな最高なことはない。
前世でも味わえなかったことだ。でも我慢だ、ひたすら我慢。だんだん呼吸が荒くなってきた。
「はぁ……はぁ……」
「ちょっと!? 大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよ。心配しないで」
「無理もないわね、この暑さだもの。あぁ、一体どこまで暑くなるのよ!?」
暑さのせいじゃないんだよな、俺が苦しいのは。
せめて上着を着てくれと頼みたかったが、この暑さだからそんなこと言えないしな。
前世でもっと女性経験を積んでいれば、こんなことに悩まずに済むのに。
「ごほぉ! ごほぉ!」
突然パメラが咳きこんだ。
「だ、大丈夫か!?」
「ごほぉ……うぅ、なんか……変な臭いが……」
変な臭いだって。そういえば俺も感じてきた。
この臭いの正体はガスだ。となれば、アレがもうすぐ近くにあるな。
「この先は、かなり危険だよ」
「危険って……え? あれは……」
しばらく歩くと、かなり開けた場所に到達した。
パメラも俺の前に出て、周囲を見回す。そして気づいた。
「ま、マグマの……川!?」
「ここの大空洞は、海底火山まで続いているんだ」
俺達がいる場所は切り立った崖の先端になっていて、道がそこで途切れている。
その崖から見下ろすと、下には真っ赤なマグマの川が流れていた。温度が異様に高いのと、充満していたガスはこのマグマが原因だ。
「っていうか、行き止まりじゃない! ここからどうやって進むわけ!?」
パメラも大事なことに気付いた。俺達は崖の先端に立っているような状態、周囲の壁にはどこにも進めるような穴はない。
でも、一つだけあった。
「あそこだよ。あの穴から……進むんだ」
「はぁ!? あの穴って……そんな……」
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