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第百五十九話 究極の神薬ができる!?

 ルウミラが腰にぶら下げていたポーチの中から〈フローティングボード〉を取り出した。


「なんだ、ルウミラも持ってたのか」

「ちょっと! さっきの話を聞いていなかったんですか? 200km以上も海上を移動なんて……」

「いやいや、ルウミラの魔力なら関係ないよ」

「……あぁもう、頭がおかしくなりそう。どれだけ規格外なのよ」

「今の魔力ならすぐに着けると思うわ」

「ルウミラに任せていいかな?」


 ルウミラはすぐに頷いてくれた。やっぱり頼りになる仲間だ、これでエイダとジョニーも助かるな。


 本来ならそこまで離れている島まで、飛んでいけない。でも、ルウミラの桁違いの魔力の高さなら関係ない。


 ルウミラが〈フローティングボード〉を地面に置いて水平に浮かせた。


「レミー、なにするんだ!?」


 ルウミラが乗ると、突然レミーがルウミラの前に立ちふさがった。


「あなた一人を行かせませんよ。私も一緒に行きます!」

「おいおい、何言ってる? ルウミラの魔力を信用していないのか?」

「あなた達の規格外の強さはよくわかります。私が言いたいのはそういう意味じゃなくて……」


 レミーが鋭い目でルウミラを睨んでいる。この目つきは、敵に対して向けるそれじゃないか。


「レミー、気持ちはわかるけど、今は味方だよ。俺だって彼女に助けられたことだし……」

「あなたはそう言っても、私はまだ信用できません」

「……わかったわ。乗りなさい」

「え? いいのかよ」


 ルウミラも根負けしたようだ。


「ただし、足手まといにならないようにね」

「あなたこそ、変な動きを見せたら承知しないわよ」


 レミーがルウミラの後ろに乗った。だけど乗り慣れていないのか、足元がふらついている。


「おいおい、大丈夫かレミー!?」

「へ、平気です……このくらい……」


 さっきまで強気だったレミーも、思わず弱気な表情を見せる。


「大丈夫じゃないだろ。しっかりルウミラの体につかまっていろ!」

「なんでそんな……お節介は無用です!」

「いや、お節介じゃなくて警告なんだ。ルウミラの魔力の高さじゃ、多分……」

「振り落とされるわよ」


 ルウミラがきりっと睨みながら言い切った。レミーは思わずたじろぐ。


「わ、わかりました……そこまで言うなら……」


 レミーは渋々ルウミラの腕を両手で掴んだ。でもルウミラがため息を吐く。


「さすがにそんなんじゃあ……」

「なにが駄目だってのよ!?」

「もういいわ。〈スネークロープ〉!」


 ルウミラがロープを出現させて、レミーの体を自分の体と一緒に巻きつけた。


「ちょっと? いきなり何するの!?」

「こうでもしないと、本当に振り落とされるわ。じゃあ行くわよ!」

「くれぐれもスピードを出し過ぎるなよ!」

「何言ってるんですか? 二人が離れていってるのに、のろのろ行ったんじゃ間に合わないでしょ!?」


 あぁ、しまった。そういう意味で言ったんじゃないのに。誤解されてしまった。


「……わかったよ。じゃあ全速力で」

「どうなっても知らないわよ」


 俺は確かに警告したんだ。責任は負わないぞ。


 ルウミラが杖を振りかざした。直後、〈フローティングボード〉は一瞬で水平線の彼方まで飛んで行った。


「こりゃ多分、失神してるだろうなぁ……」


 さて、俺はどうしようか。一人取り残されたわけだけど、何もしないわけにはいかない。


 そういえば、さっきドラゴンを倒したんだっけ。こいつもいい戦利品があるかも。


「待てよ。ドラゴンにキマイラ……そうだ!」


 大事なことを思い出した。さっき拾ったキマイラの瞳、そして今倒したドラゴンの骨、この二つは〈覇王の魂〉の材料となる。


 早速、倒したドラゴンを解体し、骨の欠片を頂戴することにした。やっぱりデカすぎるから、いくらでも手に入るな。


 奇しくも、お目当ての材料二つもゲットしてしまった。


 もしかして、もう全部揃ったのか。俺はアイテムボックス内を見回した。


「そ、揃った!」


 間違いない。〈覇王の魂〉の材料となる、隕石の欠片、覇王樹の枝、アナコンダの体液、ケツァルコアトルの角、キマイラの瞳、ドラゴンの骨がある。


 いや、そうじゃなかった。正確にはもう一つ、黒曜水も必要なんだ。


 黒曜水は黒曜豆から作れる。これは北の古代遺跡で取ったのがある。後で作ってみよう。


「でも、今更作ってもなぁ……」


 俺はなんだかやるせない気持ちになった。確かに材料は揃っている。〈覇王の魂〉は作ろうと思えば、いつでも作れる。


 全てのステータスを五倍にしてくれる、究極の強化薬。一週間前くらいの俺だったら、喉から手が出るほど欲しかったものだ。


 でも今の俺は、レベルが上がり過ぎた。ステータス総合値が一兆もある。〈覇王の魂〉を飲んだら、その五倍の五兆くらいになるけど、一兆から五兆に増えたところで、ありがたみがあまり増えない。


 そもそも一兆もあれば、倒せない敵もいなくなる。俺にとって無用の産物だ。


「……いや、待てよ」


 本当にそうかな。俺はここでふと思い出した。


「……究極の神薬、合成、竜の神……エキス……あっ!?」


 断片的だけど、ある言葉に引っかかった。竜のエキス、船の上でルウミラが竜の毒に苦しんでいた時にも出てきたけど、確かこれも超重要な材料になるんだ。


 そして〈覇王の魂〉はこれで終わりじゃない。この〈覇王の魂〉を材料にすることで、さらなる究極の強化薬ができる。


 そのためには竜のエキスが必要だ。竜のエキスはどうすれば手に入る。


「エルダードラゴン、お前だ」


 目の前で倒れている緑色のドラゴンの正体がエルダードラゴンなら、ちょうど心臓のあたりを突き刺せば出てくるはず。


 エキスって言うけれど、その正体は血液だ。だけど純度の高い血液じゃないとダメだったはず。心臓の周辺の血液がそれに該当する。


 ドラゴンの胸の中心部をコスモソードで突き刺す。血が大量に流れてきた。赤色なんだけど、かなり鮮やかな色合いだ。


「間違いない、竜のエキスだ」


 手頃な入れ物がなかったから、回復薬を飲み干した瓶の中に入れよう。


 「アイテム」と心の中で念じて、目の前に表示された所持アイテムの一覧を確認した。


 所持アイテム一覧は入手した順番に表示される。一番上に、「竜のエキス」の文字があってほっとした。


「やった! これで究極の神薬ができる……これで俺も……」

「きゃああああああ!!」


 遠くから悲鳴が聞こえた。しまった。つい自分だけの世界に入り込んでしまった。


 まだこの島の〈スタンピード〉がおさまっていない以上、被害が出続ける。今はモンスター退治に専念しよう。あとパメラも探し出そう。究極の神薬の生成はその後だ。

第百五十九話ご覧いただきありがとうございます。


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