表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/289

第百五十三話 戻って来た二人

「見えてきた。やっと……戻って来たぞ!」


 地平線の彼方に、見覚えのある建物の一部が見えてきた。ルウミラと初めて戦った東の大灯台だ。


 最果ての島を離れ、ほぼ一日はかかった。途中でいろいろトラブルもあったけど、なんとか戻ってこれたな。


「ルウミラ、君のおかげだよ。本当にありがとう」

「ロバート。まだ礼を言うのは早いわよ、あそこの島で起きているトラブルを解決しないと」

「あぁ、そうだったね」


 ルウミラの言う通りだ。もう二日くらい離れていた計算になるけど、そもそもあそこの島では魔物が大量に発生する〈スタンピード〉が起きていたんだっけ。


 そんな騒動の最中に俺は転移されてしまったんだ。


 しかも俺の〈シェアリングピアス〉が奪われたから、エイダの力も下がったはず。かなりの被害が起きていてもおかしくない。


 今、島はどんな状況なんだ。島までもう少しだけど、ルウミラに無理を承知で頼もう。


「あともう少しだけど、飛ばせるかい?」

「それはいいけど、島に着いたらまず何をするべきか、わかってるわよね?」

「あぁ、さっき話した通りにするつもりさ」


 一時間ほど前、ルウミラからあの島で起きている〈スタンピード〉の詳細な背景について聞かされた。


 耳を疑うような内容も多かったけど、半分は俺も予想していた通りだ。


 まず魔物の大量発生を引き起こしているのは、ディエゴの店で働いていたミーナだ。


 ミーナがスージーと共謀し、魔物を大量に召喚させることで、俺とエイダとパメラを分断させることにした。


 狙い通り俺が二人と別れ、スージーが俺と一緒に大灯台までついてきた。そしてルウミラはミーナの姿に化け、俺を待ち伏せし、油断させてピアスを奪った。


 ここまで話したところで、ルウミラはかなり恥ずかしがっていた。まぁピアスを奪う作戦のためとはいえ、口づけはかなり強引だった。俺もすっかり心を奪われたもんな。


 そしてここから先の内容が驚愕だった。俺を最果ての島まで飛ばし、ピアスを奪ってその後に企んでいたのはそのピアスの複製だ。


 その複製魔法を使えるのは、魔法道具屋のウィスベリーだという。確かにウィスベリーはそんな魔法が使えてたっけ。


「でも、ウィスベリーも指示されて動いていたにすぎないわ。彼も彼女に利用されているの」

「アメリアだな。あの女、一体何が目的でこんなことを……」

「彼女は私も知らない謎が多いわ。でも、目的のためには手段を選ばない女」


 ルウミラだって操られていた時はそうだった。あのアメリア、本当に人を物のように扱いやがる。


 俺の島で起きている騒動の元締めだ。最初に会った時から不穏な感じがしていたけど、これ以上好き勝手させるわけにはいかない。


「ピアスを複製されたらヤバいな。でもアメリアは、そのピアスを誰に装着させるつもりなんだろう?」


 〈シェアリングピアス〉は装備している者同士で、ステータスが共有される。


 俺のようにステータスがぶっ飛んで高い人間に装着させれば、そのぶっ飛んだステータスが共有できるから、これほど有効なアクセサリーはほかにない。


 まぁ、俺はそれより凄いアクセサリーをすでに持っているんだけどね。


「……あの子供かも……」

「え? ルウミラ、どうしたんだ?」

「いや。なんでもないわ、気にしないで」


 ルウミラがぼそっと呟いた。子供って言ったか、なんだろう。


 もしかして心当たりがあるかも。ここは敢えて聞いてみようか。


「そ、それより……さっき見えた島だけど」


 ルウミラが話題を変えてきた。


「島……そういえば小島があったな」


 ちょうど二時間前か、俺が目を覚ました直後に甲板に出て、水平線の彼方に小さな島が見えた。


 一瞬もう着いたのかと思ったけど、よく見たら小さすぎた。多分無人島かな。


「あの無人島がそんなに気になるのか?」

「いえ、なんというか……あんな場所に無人島があったかしら?」

「うーん、そう言われてもな。俺もこの周辺の海域の地理には詳しくないし」


 確かに俺が持っている世界地図にもあんな島は影も形もない。でも小さすぎる無人島なんかは、そもそも世界地図にすら表示されないものだ。


「……胸騒ぎがする」

「おい、ルウミラ!」


 ルウミラが突然船の後部に行った。さっき見た無人島がそんなに気になるのだろうか。


 俺も彼女に続いた。


「さすがにもう見えなくなってるよ」


 水平線の彼方にもう島は見えなくなってる。俺の島から北に100km以上は離れているだろうか。


「……もしあの島に誰かいたら?」

「え? 何言い出すんだよ、誰もいないだろ?」

「いえ、杞憂だと思うけど。念のため、確かめるわ」

「確かめるってどうやって?」


 ルウミラが杖を高々と掲げた。杖の先端はさっき見えた小島に向けている。


「さすがに……届かないだろ?」

「いえ、届くわ。〈リモート・スカウター〉!」

第百五十三話ご覧いただきありがとうございます。


この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。


https://twitter.com/rodosflyman

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ