表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

150/289

第百五十話 ウィスベリーの体を触るのはどっち!?

「……ということよ。私が知っているのは、これだけ」

「なるほど。だが、結局アメリアが黒幕かはわからずじまいか」

「ごめんなさい。私も本人に会ったことはないからわからない。全ては、この男が……」


 ミーナはウィスベリーに視線を移した。彼はまだ目を閉じたままだ。


「もう! いつまで寝てんのよ、この男は?」

「大丈夫よ。彼に事情を話す必要はないわ」

「それってどういう意味?」


 エイダが右手に光るロープを握った。そのロープが、ウィスベリーの耳の穴へとつながっている。


「〈コネクティングロープ〉! あなたいつの間に!?」

「眠っている間に、ウィスベリーの脳内に侵入しておいたわ。彼の記憶を辿ったら、案の定アメリアと密談してた」

「そうか。だがまだ俺の方から聞きたいことがあるんだ」

「聞きたいことですか?」


 ジョニーがウィスベリーを見下ろした。


「アメリアの真の動機だ。なぜこんなことを企てたのか? そしてどうしてピアスを奪ったりしたのか?」

「それについても私の〈コネクティングロープ〉でわかっちゃいました」


 ジョニーがきょとんとした顔でエイダを見つめた。


「……全く私の出る幕がないじゃないか」

「ごめんなさい。アメリアと密談してただけじゃなく、彼女とどんな会話を交わしたかもわかるわ」

「それで……どんな内容?」

「簡単にまとめると……」


 エイダが密談の内容を簡単に述べた。


「……信じられない。この島を支配するですって!?」

「でも間違いなく言ってたわ。さすがになんで支配したいのかまでは、言わなかったけど」

「……まさかアレが?」


 ジョニーが何かに気付いたのか、突然声をあげた。


「ジョニーさん、何か知っているんですか?」

「え? あぁ……すまん、気にしないでくれ。多分、気のせいだ」

「……そうですか」

「それよりさ、複製って本当にできちゃうわけ!?」


 今度はパメラが聞いてきた。


「……できなくはないわ。そういう特殊魔法があることだけは知っている。私は無理だけど」

「仮にも一流の魔法道具屋の店主だからな。俺も一度見たことがある」

「え? 本当ですか?」


 ジョニーは黙って頷いた。


「高度に作られた魔法道具の模造品、昔キシア帝国の市場でいくらか出回っていた。本物と比べると性能は下がるが、一見しただけでは気づかない」

「そんな……本当にこの男が!?」

「ふふふ……そんなこともあったっけなぁ。懐かしい」


 突然ウィスベリーが笑い出した。


「あなた、起きていたの!?」


 ウィスベリーはゆっくりと顔を上げた。薄ら笑みを浮かべている。


「本物は……もう手に入れてあるんだ」

「なんですって!?」

「本物……まさか!?」

「そうさ。実は昨日こいつの姉が届けてくれてね。そして今度はエイダ、お前のを狙おうと思っていたところだ」

「なんてこと……じゃあ、わざわざ二つ目を狙っていたわけね」

「いけないか? 本当はすぐに逃げればよかったんだが、俺も欲が出てしまってね」

「それは誤算だったな。だが素直に自分から喋ってくれるとはありがたい」


 ジョニーが剣を鞘から抜いて、剣先をウィスベリーに向けた。


「〈シェアリングピアス〉を出してもらおうか。もちろん出さなかったら、どうなるかわかるな?」

「命令に従いたくても、縛られたんじゃ何もできないぜ?」

「どこに隠したかだけ言え。そしたらあとは俺が取り出すまでだ」

「おいおい、お前に俺の体触られるのか!? 冗談じゃないぜ、だったらそっちの二人にしろ!」


 ジョニーはエイダとパメラを見た。二人とも即座に首を横に振る。


「……無理かな?」

「嫌よ、絶対に!」

「じゃあ喋らねぇよ、意地でもな」


 ジョニーはため息をついた。


「だそうだ。二人とも、我慢してくれないか? ロバートのためだろ?」

「……くぅ、この男!」


 パメラが弓を構える。


「やめなさい。じゃあ、これで決めましょう」


 エイダが一枚の金貨を取り出して、ジョニーに渡した。


「あぁ、なるほどな……わかった」

「何する気よ?」

「金貨の表が出たら私、裏が出たらあなたね。それでいいでしょ?」


 パメラも渋々ながら決心した。


「わかった。一度きりよ」

「ジョニーさん、お願いします」

「じゃあ、やるぞ!」

「ふふふ、さぁどっちが出るかな!?」


 ウィスベリーが笑う中、ジョニーは金貨を親指で弾こうとした。しかし即座にパメラが手を上げた。


「ちょっと待って! どっちが表でどっちが裏か決めた!?」

「あ、そうだったわね」

「この金貨は片側に竜の模様、もう片側に剣と盾の模様があるな」

「じゃあ竜の模様がある方を表、剣と盾の模様がある方を裏ね」


 パメラもエイダの提案に頷いた。


「決まったか? ったく前置きが長すぎるぜ」

「悪かったな。それじゃ……行くぞ」


 ジョニーが金貨を親指で弾いた。


 落ちてきた金貨を左手の甲の上に乗せ、即座に右手で覆った。


 その様子をエイダとパメラが一時も目を離さず見ていた。動きに不正がないのを確認し、二人とも固唾を飲んで、ジョニーが右手を上げるのを見守る。


「……パメラ、お前だ」


 金貨の剣と盾の模様を見て、パメラははぁっとため息をついた。


「不正はなかったでしょ?」

「……わかったわよ。やるわ」


 パメラは不満を隠せない顔を見せながら、ウィスベリーに近づいた。


「いいね。結構スタイルいいじゃないか、お前」

「ふざけないで! それよりさっさとピアスをどこに隠したか言いなさい!」

「あぁ、そうだな。あれは……どこに隠したっけな?」

第百五十話ご覧いただきありがとうございます。


この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。


https://twitter.com/rodosflyman

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ