第十五話 俺のステータスがおかしい!?
俺は自分のステータスが気になった。思えばアリゲーターベアを倒したから、かなりレベルが上がっているだろう。
なんとレベルは15まで上がっていた。アリゲーターベアを倒したことで得られた経験値量はかなり大量だった、まさか一気に15まで上がるとは。
そして割り振り値は、とんでもない数値になっていた。
「これは……凄い!」
あまりの莫大な数字に、思わず俺は固まってしまった。いや、わかっていたけれど。武者震いが止まらない。もう俺は怖いものなしだ。これなら余裕で無双できるぞ。
あとはこの割り振り値を、どのステータスにどれだけ割り振るべきか。正直値が大きすぎて困るな。
「三万二千……えぇと九で割ったら……」
「どうしたの?」
一緒に馬車に乗ったパメラが俺に声をかけた。ステータス画面に夢中になっていたから、パメラが乗ったことに気づかなかった。馬車もいつの間にか動き出していた。
「あぁ、なんでもないよ! 気にしないで!」
「そういえば自己紹介まだだったね。もう聞いてるかもしれないけれど、パメラ・シュナイダーよ。見ての通りの弓使い、よろしく」
「こちらこそよろしく。何て呼べばいいかな?」
「普通にパメラでいいわよ。私達戦士の間じゃ身分の違いなんて気にしない。実力至上主義の世界よ。そうでなくて、ロバート?」
「あぁ、そうだったね」
パメラはかなり気が強そうな性格だ。さすがランクAの風格はある。俺のような子どもなんか眼中にないんだな。
だがここで俺はふと大事なことに気づいた。前世でもほとんど経験なかったが、女性と二人きりじゃないか。思わず緊張してきた。
改めて見ると、パメラは凄い美人だ。軽装備姿で露出は控えめだが、それでも抜群のスタイルの良さだとわかる。しかも金髪で緑の瞳ときた。とても俺なんかと不釣り合いだ。俺は反射的に彼女から目を逸らした。
会話がなくて気まずい空気が続くな。すまないパメラ、俺コミュ力ないんだ。
「ねぇ、あなたのその剣だけど……」
と思ったら、突然パメラが話しかけてきた。
「え、な、なに?」
「あなたの持っている剣よ、ちょっと見せて」
パメラは俺が持っている剣が気になっている。鞘に入れた状態だが、取り敢えず見せてやるか。
「どうぞ」
「ありがとう。って、これは!?」
彼女も歴戦の戦士なのか、〈コスモソード〉を持った瞬間目の色を変えた。無理もない。世界でたった一本の俺だけが持っている特別な剣だからな。
「これ、なんていう名前の剣なの? どこで手に入れたの?」
やっぱり聞いてくるか。何て言おうかな、素直に正式名称を教えてもいいけど、ここは適当に誤魔化すか。
「実は俺もよく知らないんだ。森の池の中に落ちていたのを偶然拾ったんでね、そんなに珍しいのかな?」
「そう……」
パメラが俺に剣を返した。
「アリゲーターベアはね、HPが8000近くあるのよ」
「え、突然何?」
「そのアリゲーターベアをほぼ一撃で倒した。その剣、絶対何かあるでしょ!」
しまった。さすがランクAの強戦士なだけあって見る目が違う。確かに彼女の言う通り、アリゲーターベアはHPが8000近くもある強敵だ。序盤で戦って勝てるような強さじゃない。
仕方ない。彼女のこの様子じゃ、いつまでも誤魔化せないだろう。どうせいつかはバレるんだ。ならば嘘偽りなく全て話そう。
「よく気づいたね。実はその剣は普通じゃないよ」
「やっぱり。あなた、一体何を知っているの? どうやってあのアリゲーターベアを一撃で倒せたの?」
「説明すると凄く長くなるけど、聞いてくれる?」
「聞くわ。むしろ早く教えて、あなたの秘密を全て!」
彼女が凄く前のめりになって俺の顔を見つめた。興味津々なその顔で見られると、凄くドキドキする。やっぱり俺は女性が苦手だ。
「えぇとね。まず俺のステータス総合値から教えるね。さっきアリゲーターベアを倒した時点のレベルは7、その時のステータス総合値は256あって、その内の238を力に注ぎ込んだんだ。そして剣術スキルの〈目覚めの一撃〉を使って、一度だけクリティカルヒットを3倍にしてアリゲーターベアに叩き込んだんだ。因みにクリティカルヒットは本来稀にしか発動しないけど、俺のこの剣なら……」
「ちょ、ちょっと待って! あなた一体何言ってんの!?」
説明の途中でパメラが慌てふためいた。俺の言ったことに彼女は疑問だらけのようだ。
「落ち着いて。取り敢えず俺の説明を最後まで……」
「落ち着いていられないわ。何がステータス総合値が256よ、しかもレベルが7で? 人を馬鹿にするのもいい加減にして! いい? あなたまだ駆け出しの冒険者だから、ステータスの計算がでたらめすぎるのよ。ランクとステータス総合値の相関関係もわからないの? ランクSだってあり得ない数値よ」
「わかっているさ。俺のランクはDだから、本来ステータス総合値は14になっていないとおかしい。って言いたいんでしょ?」
「わかっているじゃない。256って何? そんな数字どこから……、まさか!」
パメラは俺の剣に視線を移した。
「そう、この剣さ。この剣を装備すれば全ステータスが2倍になる効果が生まれる、凄いだろ!?」
「いや、それでも計算が合わないわ。ステータスが2倍になっても28にしかならない。やっぱりどう考えたって」
「ちょっと待ってよ、パメラさん。実はまだ俺の話には続きがあるんだ、取り敢えず最後まで聞いてよ……」
「もういいわ、あなたの説明は。それよりもっと確実な方法があるのに気づいた」
「え? それってどういうこと?」
そう言いながらパメラは座り直し、ふと自分のショルダーバッグを開けた。そしてその中から、何やら綺麗な丸い形をした光る小石を取り出した。
その小石を見て俺も何のアイテムかすぐにわかった。
「それは〈鑑定石〉!?」
「へぇ、よく知ってるわね。このアイテムを使えば、目の前にいるモンスターや人間のステータスが丸わかりよ。ちょっと覗かせてもらうわね」
便利なアイテムだ。まさかパメラが持っていたとは予想外だった。だがこれで俺の言っていたことが信じてもらえる。覗かれるのはあまりいい気分じゃないが、致し方ないか。
「ヒヒーン!」
「あれ、馬車が?」
第十五話ご覧いただきありがとうございます。ステータス総合値とレベルとの関係は第九話で詳しく書かれています。
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