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第百四十六話 ルウミラを救うアイテム!

 ルウミラが俺を見つめている。なんとかルウミラを救いたい。


 俺は必死に考えを巡らした。せめてこういう場合〈シェアリングピアス〉があれば、俺の膨大なステータス値をルウミラの状態異常耐性に与えられるんだが。


「ルウミラ。ダメもとで聞くけど、さっき俺から奪ったピアスを持ってたりは……」

「してないわ。その時までは、アメリアの忠実な部下だったから……」

「そうだよな。ごめん……ん? 待てよ……」

「どうしたの?」

「俺のステータスを共有する……分け与える……譲渡する……」

「何ぶつぶつ言ってんの?」

「……そうだ! あれだ!」


 俺は重大なことを思い出した。ジャイアントプレシオス、実はこいつはとんでもない重要アイテムをドロップすることで有名だ。


 そしてそのアクセサリーの効果なら、ルウミラを救い出せる。もう方法はこれしかないな。


「ルウミラ、ごめん。君に頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」

「もしかして、何か方法が見つかったの?」


 俺は黙って頷いた。そしてこれから自分がすることを簡単に伝えた。


「……それは、いくらなんでも無茶よ」

「でも、これしか方法が思い浮かばないんだ。ちょっと負担をかけさせてしまうけど」

「……わかった。あなたを信じるわ」


 ルウミラの了承を得て、俺は甲板の先端部分に立った。


「よし。それじゃ今から潜る、かけてくれ!」

「〈ハイパーロングブレシング〉!」


 潜水魔法で長時間海中を遊泳できる。思い切りジャンプして、俺は海中をひたすら下へ潜り続けた。


 すると早速お目当てのモンスターが近づいてきた。


「やっぱり、ここは奴らの縄張りだな」


 一匹魔道船に衝突したのは、たまたまじゃない。この周辺海域は、どうやらジャイアントプレシオスのテリトリーだ。


 俺の姿を確認して、早速猛スピードでこっちに向かってきた。


 このジャイアントプレシオス、ただ倒すだけなら簡単だ。でも今から大量に狩らないといけない。ある重要アイテムを得るために。


「俺の潜水魔法の効果が切れるか、それとも先に手に入るか、どっちかな?」


 海の生態系が崩れてしまうかもしれないけど、そんなこと気にしてられない。ルウミラを救うためだ。



 襲い掛かるジャイアントプレシオスを狩り続け、一時間以上は経った。


 未だにお目当ての物が手に入らない。俺のステータスはかなり高いけど、敵のアイテムのドロップ率だけは上がらない。


 そうそううまくはいかないか、確かに前世でも同じような感じだったな。


 でも今は違うんだ。ルウミラを助けないといけない。このままじゃ潜水魔法が切れる。


 今のルウミラに二回目の魔法はきつい。その前になんとか仕留めないと。


「くそ、頼むから早く落としてくれ!」


 だんだん焦って来た。そして俺の焦りを読み取るかのように、さらなる異変が起きる。


「あれ? 襲ってこない?」


 なんということか、ジャイアントプレシオスが襲ってくる気配が消えた。


 さっきまでは一度に二、三匹襲ってくることもあったのに。まさか、本当に狩りつくしたのか。


 まずい。そもそも襲ってこないことには何も解決しない。このままここにいてもキリがないから、俺はさらに下へ潜った。


 下に行けば、きっと出てくるはず。でも期待通りにいかなかった。


「くそ、なんで出てこないんだ!?」


 下に行けども、周囲に広がるのは暗い海中の光景だけ。皮肉なことに、モンスターじゃない普通の魚まで泳いでいる。


 こんな普通の魚が普通に泳いでいるなんて。ジャイアントプレシオスの縄張りだとあり得ない。


 嫌な予感がした。そういえば、ジャイアントプレシオスは狩り続けたら出現率が減少し、出現場所も変わるような話を聞いたことがある。


 いや、あくまで噂だけど。実はこれは嘘か本当かはわからない、誰も検証したことがないから。


 海中に長く潜り続けてジャイアントプレシオスを狩り続けるなんて、誰もやらないんだ。


 でももし本当だとしたら、俺の計画は水の泡だ。


「あぁ、くそ……一体どうしたら?」


 その時、俺の頭上に黒い巨大な影が出現した。見覚えのある黒い影だ。


「やっと出てきたか」


 今まで出てきた個体よりもかなりデカい。恐らくボス級かな。


 まぁボス級だろうと関係ないな。スキル〈目覚めの一撃〉でさっさと倒そう。剣を構えて、奴の首目掛けて突貫した。


「今度こそ、落としてくれよ!」


 剣を思い切り振り払った。だけどすぐに何かに弾かれる感じがした。


「うわ、馬鹿な!?」


 まだ奴の首は繋がっている。俺の攻撃は、ジャイアントプレシオスの尻尾に防がれた。


 こいつ、今まで出てきたやつより遥かに強いぞ。図体がデカいから、所詮体力馬鹿だと思っていたが違うのか。


「おとなしくやられて……なに?」


 態勢が保てない。なんかぐるぐる回っている気がする。よく見たら、奴の尻尾が回転して、巨大な渦を形成していた。


「くぅ……味な真似しやがる。こうなったら……」


 ジャイアントプレシオスの渦を巻く攻撃、この後の奴の行動パターンを思い出した。


 予想通り、大きな口を広げて突進してきた。態勢が保てない以上、このまま奴の口に飲み込まれてしまう。


 でもその時がチャンスだ。飲み込んだ瞬間、内側から剣で斬り裂いてやる。


「さぁ、来いよ!」


 奴の大きく開けた口が目の前までやってきた。かろうじて剣を構え、いつでも攻撃できる準備は万端だ。


 でもその時、俺の目に意外なものが目に入った。


「なんだあれ?」


 ジャイアントプレシオスの下あごの奥歯のあたりに、きらりと光る物が目に入った。口が目の前まで迫り、目を凝らすと、それは俺が探し求めていた物だった。


 次の瞬間、俺は奴の口の中へ突っ込んだ。すぐさま奥歯まで進み、目当ての物を掴んだ。


 なかなか取れない。力を込めて何とか引っこ抜いた。


「トランスファーリング、ついにゲットしたぜ!」


 このまま剣で斬り裂いて、脱出。とはならなかった。なんとそのまま俺の体は、喉の奥まで吸い込まれた。

第百四十六話ご覧いただきありがとうございます。


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