第百三十八話 まさかの裏切り!?
パメラとエイダも気が付いた。
「スージーが姉!? そういえば、顔が似てるわ」
「スージーを見て見覚えがある顔だと思った。念のため確認をとってみたら、案の定だった」
「ちょっと待って! スージーの妹が、〈スタンピード〉を巻き起こした張本人!?」
「そのスージーは……ロバートと一緒に三日月岬へ」
パメラとエイダは目を合せる。そしてまたジョニーに聞こえないよう、小声で話し始めた。
「スージーは、ほぼ黒ね」
「だとしたら、納得がいくわ。〈スタンピード〉を巻き起こしたのは、私達を分断させるためだった。そしてスージーはロバートと二人きりになって、油断させてピアスを奪った」
「考えたわね。それにしてもなんて腹黒い姉妹なの」
パメラの言葉にエイダは首を横に振った。
「それは違うわ。恐らくこの作戦にかかわってるのは、ミーナとスージーの二人だけじゃない」
「二人だけじゃないって、どういうことなの?」
「思い出して。スージーはランクBの魔道士よ。実力からして、〈シェアリングピアス〉のことに気付くとは考えにくいわ」
「確かにそうね。でも……それじゃまさか」
「黒幕がいるってことよ」
「やっぱり……この人」
パメラとエイダはジョニーを見た。不信感が強まり始める。
そしてエイダはさらに重大なことに気付いた。
「歩いている方向……違う!」
「え? 何が違うの?」
「この方向は……コルネ村じゃないわ」
「そんな……ってことは!?」
「このあたりでいいか」
ジョニーが突然口を開いた。まだ森の中、開けた場所に来たところで立ち止まった。
「あの……ジョニーさん、ここって……」
「おとなしくしてもらおうか」
そう言うとジョニーは腰の鞘から剣を抜いた。そしてミーナを地面に寝かせ、振り向いた。
直後、剣先を自分達に向けたジョニーの顔を見て、エイダとパメラは愕然とした。
「そんな……やっぱりあなたが」
「黒幕?」
「そう……ミーナとスージーの仲間はここにいる」
ジョニーはそのままエイダとパメラに近寄る。鋭い眼光でじりじりと近づく。二人はそのまま後ずさった。
「……どうする、エイダ?」
「どうするもこうするも……戦うしかないわ」
「でも……勝てるの?」
パメラは自信をなくす。相手は元英雄、エイダも切り札がない。さらにアースガーディアンとの戦いで魔力があまり残っていない。
しかし迷っていられない。エイダは杖を力強く握った。今ある魔力全て使い切って差し違える覚悟だ。
「エイダ、はやまらないで!」
「でも……こうでもしないと勝てないわ!」
「そうだな、勝てない。少なくとも、手加減して勝てる相手ではないぞ」
ジョニーはじりじりと距離を詰める。剣を下げる気配はない。
「はぁあ!」
エイダが杖を振り〈ファイアーボール〉を放った。火の玉はそのまま直進し、ジョニーに激突した。
爆発で煙が生じ何も見えなくなった。
「やったわ!」
「いえ、これは!?」
煙が消えるとそこにいたジョニーは、跡形もなく消えていた。代わりにあったのは、焼け焦げた太い木の棒だ。
「変わり身? そんな!」
「遅い」
ジョニーの声が聞こえ、エイダは振り向いた。直後腹部に激痛が走る。
「うぅ……」
「エイダーー-!!」
パメラが見たときには手遅れだった。エイダはジョニーの剣に腹を貫かれ、ぐったりしていた。
「そんな……嘘よ。そんなの……」
ジョニーが剣を抜いた。血が大量に流れ、そのまま何もできずエイダは地面に倒れた。
するとジョニーが倒れたエイダの体を触った。
「……彼女は死んだ」
その一言にパメラは凍り付いた。信じられない現実が付きつけられる。
「……エイダ」
「さて、残りは……」
エイダが倒れるのを見届けたジョニーは、パメラの顔を見た。感情の整理が追いつかないまま、パメラはジョニーと対峙する。
「ジョニーさん……どうして、どうしてこんなことを?」
ジョニーはパメラの言葉に何も返事をしない。そして無言のまま、今度はパメラに剣先を向け近づく。
近づくジョニーを見て、遂にパメラも決心した。矢じりをジョニーに向け弓を構えた。
「手が震えているぞ、パメラ」
「ぐぅ……ジョニーさん、あなたを撃ちたくないわ。お願いだから、こんなことやめて!」
「お人好しだな、お前もエイダのようになりたいのか?」
パメラは倒れているエイダを見た。
「……エイダ……くぅ!」
パメラは決心した。力強く弓を握り、渾身の一撃を放つ覚悟だ。
「そうだ。それでいい、全力で放て!」
「なめないで。私の全力の一撃を喰らったら、あなたもただじゃすまないわ!」
「言ってくれるな、ならば見せてもらおうじゃないか。お前の全力の一撃とやらを」
パメラは攻撃を躊躇してしまった。さっきのエイダの二の舞だけは防がないといけない。
(ジョニーに回避されないように、あの奥義で……)
自分が放つ渾身の一撃は〈スターライトアロー〉、でもこれではさっきと同じように変わり身で防がれてしまう。
それならばと、パメラは頭を巡らせ別の奥義を放つことにした。
「〈ホーミングアロー〉!」
放ったのは敵を追尾する〈ホーミングアロー〉、弾速も威力も落ちるがこれならジョニーが変わり身を使っても追尾できる。
だが計算通りに行かなかった。矢はジョニーの手前で、瞬時に向きを上に変えた。
「え?」
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まさかのジョニーの行動、果たして本当に敵なのか!?
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