第百三十話 飛ばされたのは最果ての島!?
再びロバート視点です。
「どこなんだよ、ここは?」
転移魔法によって亜空間に飛ばされ、俺は今見知らぬ場所に来ている。石造りの正方形の部屋だ。小さなドアがあるが、案の定鍵がかかっている。
いや、部屋というより牢獄に近い感じかな。窓から外を見たら、絶景の大海原が広がっている。
海の色が若干違う気がする。それに気温も全然違う。まさか違う島まで移動されたのだろうか。もしそうだとしたら大変だ。
「場所が知りたいな、正確な場所が……」
俺が転移魔法で移動させられたのは、大灯台の地下、海水が通ってきた抜け道の先にあった部屋だ。
大灯台の地下に隠し部屋があったとは。そこから転移魔法で向かった先、俺の記憶が正しければここは全く別の島になる。
「世界地図を見よう」
アイテムボックスから世界地図を取り出した。俺が元いた島は、世界地図だとほぼ左下に位置している。かなり小さい島だけど、確かに左下に島がある。
そこからさらに北に向かって指でなぞった。赤道を超えさらに北に指を一直線でなぞる。すると、再び小さい島を見つけた。
「ここか……最果ての島」
バタン!
遠くからドアが開く音が聞こえた。足音がゆっくりと大きくなってくる。俺が今いる小部屋のすぐ外側に誰か来ているのか。
そして壁についていた小窓が開いた。金髪の男が顔を出した。一目見ただけで誰かわかった。
「よぉ、久しぶりだなロバート!」
「お前は……コルネ村の村長をさらった」
「そうだ。俺のことを忘れたとは言わせねぇぜ」
なんという因縁か。まさかこんな場所で再会するだなんてな。
「……顔は覚えているけど、名前なんだっけ?」
「てめぇ、ふざけたこと言わせんな! 俺の名前を知らねぇだと!?」
ふざけてはいない。確かにソーニャの町に来た時にも会ったけど、肝心のこの金髪の名前だけは聞いてない。
「ちっ、まぁいい! 俺の名前はバッシュ・ヴェーリックだ。二度と忘れるなよ!」
バッシュか。やっと思い出した。何度も絡んでくる嫌味な金髪キャラだったな。
でもまさかこんな島にまでいるだなんて。一体どうしてこんな場所にいるんだ。
「それはそうとロバートよ、お前も遂に終わりだな。こんな場所にまで飛ばされてよぉ、いい気味だ」
「まさかと思うけど、あの貴婦人と知り合いか?」
「貴婦人? あぁ、アメリア令嬢のことだな。当然だ、知り合いも何も俺達を救ってくれた偉大なお方よ。こんな素晴らしい要塞まで用意してくれて、凄い武器までくれた。一生あのお方についていくぜ」
「へぇ、ここがどこかも知らないで呑気なことを……」
バッシュは俺の言葉に反応した。
「てめぇ、何が言いたいんだ?」
「ここは、最果ての島さ」
「最果ての島!?」
「やっぱり知らないか。教えてやるよ、世界地図上で左上に位置し、一番近い島とも約2000キロは離れているんだ。帝国本土とも5000キロ近く離れてるよ」
俺は世界地図を広げて、バッシュに自分達がいる場所を示しながら説明した。
バッシュはしばらく無言だった。困惑しているようだったけど、しばらくして笑いに変えた。
「ははは、何を言い出すかと思ったらそんなことかよ。言っておくが、転移魔法が使えるから関係ねぇよ! それに船だってあるしな」
「船か。でも仮にあったとしても、何日もかかるから移動は大変じゃないかなぁ」
「普通の船じゃねぇ。アメリア令嬢が取り寄せた特注の魔道船だ。たとえ数千キロ離れていようと、一時間とかからねぇぜ!」
「へぇ、それは凄いな。でもさ、俺がその船を奪って、ついでにアメリアを倒せば、もうおたくらここから戻れないよね?」
バッシュは顔を引きつった。だけどまだ余裕の構えを崩さない。
「……ふふ、何を言い出すかと思ったら、確かにそうなったら面白いだろうな。しかし!」
バッシュの顔が突然小窓から消えた。次の瞬間、壁が瞬時に崩れ去った。
バッシュは剣を両手に持っている。二刀流だ、かなり切れ味が鋭そうな見事な剣だ。まさかここで戦うつもりか。
「何の真似だ? そんな物騒な武器取り出して」
「てめぇは今ここで俺に八つ裂きにされるのさ。そのために俺はあのお方に忠誠を誓ったんだ、恥もプライドも捨ててな!」
「何を言い出すかと思ったら、そんなことのためにわざわざこんな島まで来たのかよ」
「うるせぇ! てめぇに何がわかる!? もう二度とコケにされるわけにはいかねぇ、言っておくが今度は手加減はしないぞ。マジでぶっ殺す!」
バッシュの目が血走っている。半分狂っているとしか言いようがない。
すべては俺への憎しみのためか。いや、ヒューリック家への恨みかな。親父の尻拭いを俺がしなければいけないとはな。
「悪いけど、一瞬で終わらせる。後悔するなよ」
「ふはは! 言っておくが、今の俺は無敵だ。来るなら来やがれ!」
随分と余裕の体勢だ。いくら二刀流だからって隙だらけじゃないか。まぁいいか、攻撃が当てやすくなるから都合がいい。
「〈真空波動剣〉!」
この剣術スキルで一撃だろう。と思ったら、なんとバッシュは避けようともしない。まさか〈真空波動剣〉を受け止めるつもりか。
カァアアアアン!!
何かが弾かれるような音が聞こえ、真空刃は跡形もなく消えた。バッシュは健全な様子で立っている。一体何が起きたんだ。
「ふはは、今の俺にはどんな攻撃も通用しねぇ! 〈不動結界〉があるからな!」
「〈不動結界〉だって!?」
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