第十三話 計算通り!確定のクリティカルヒット!
アリゲーターベアの10メートル以上先に、女性の戦士が立っていた。金髪でポニーテールの女性、年齢は俺と同じくらいか。手に弓を持っている。あの矢を放ったのは彼女か。
「あなた達、今すぐ逃げてください。奴は私が食い止めます!」
「助かった。あの人は弓使いのパメラ・シュナイダー、ランクAの戦士だ」
「ランクAだって?」
パメラ、俺はその名前に聞き覚えがあった。確かソーニャの町に訪れた際に、最初に主人公と協力してくれる助っ人キャラだ。
確かに彼女はランクAの戦士だ。心強い戦士が現れ、商人は思わずほっとした。
だがアリゲーターベアは矢が刺さっても何事もないように立っている。ダメージは喰らっているはずだが、やはりHPが高すぎるんだな。
「俺も加勢しないと」
「よせよ。あんたが行ったって足手まといになるだけだ。あの人は強いから今のうちに」
「おいおい、商人さん。どこの世界に女性だけで戦わせる男の戦士がいるんだよ」
「た、確かに心苦しいのはわかる。だが現実を見ろ。ランクDでしかもレベルが7じゃ、どう足掻いたって」
「安心してくれ。俺には必殺の剣術スキルがある」
その言葉に商人は目の色を変えた。
「剣術スキル? あんた、そんな低レベルなのにもう剣術スキルが使えるのか?」
「そうさ。さっき覚えたんだ。〈目覚めの一撃〉だ!」
「はぁ? なんだって?」
「だから、〈目覚めの一撃〉だよ」
「正気かよ!? 〈目覚めの一撃〉ってのはクリティカルヒットのダメージしか上がらねぇ。クリティカルヒットとか、そんな運要素に頼んのか?」
商人の言う通りだ。クリティカルヒットは通常攻撃時にごく稀に発動する。発動の確率自体は低く、ステータスや装備する武器によっても異なるが、概ね5%ほどだ。
つまり、今から俺は5%のクリティカルヒットに頼ろうというのだ。商人が釘を刺すのも当然だ。
だけどそれは通常の武器を装備している時だけだ。ここでもやはり俺だけの特別な力が発揮される。〈神剣コスモソード〉の特性がね。
「いいから、黙って見ておいてよ。大丈夫、俺の計算通りなら、一撃で倒せるはずさ」
「おい、待てよ!」
俺は商人の制止を振り切って、馬車の背後から飛び出した。アリゲーターベアはさらに数本の矢を受けていた。
パメラは間髪入れずに連続で矢を放っている。さすがランクAの戦士だ。強敵相手にも全く怯んでいない。
しかしパメラが俺の姿を確認し、思わず動きを止めた。
「なにやってんの、あなた? 逃げろって言ったじゃない!」
「逃げるだなんて、そんなことできないよ。俺も加勢する」
「冗談言わないで、あなたまだ子供じゃない! 相手はアリゲーターベアよ、わかってんの?」
「グゥオオ?」
アリゲーターベアが向きを変えた。俺の存在に気づいた。パメラ相手に背中を向け、標的を俺に変えたようだ。アリゲーターベアはレベルが低い相手を優先して狙う傾向がある。
パメラが「しまった」という表情をした。大丈夫だパメラさん、俺を信じてくれ。
「さぁ、来いよ。ワニ熊さん、俺が相手だ」
「ガルァアアアアア!!」
アリゲーターベアはその巨大な口を大きく開けた、鋭く尖った歯が何本も見える。さらに両手の鋭い爪も俺に見せつけ、突進してきた。その巨体からは想像できないほどのスピードだ。
だが怖がるな。俺は剣を構えた。
「スキル、〈目覚めの一撃〉!」
剣先が鋭く光った。すると不思議と俺の両手に有り余るほどの力が漲った。今ならどんな硬い物体でも斬れそうな感じだ。
眼前まで向かってきたアリゲーターベアが、その鋭い爪を伸ばした右手で俺を切り裂こうとした。胴ががら空きになった隙を狙い、剣を振った。
「はぁああああああ!!」
バシュッ!!
俺は剣を無心に振りかぶった。気付けば目の前のアリゲーターベアは身動き一つ取らず、固まっていた。
直後、大量の血を噴水のように噴き上げ、声をあげることもなく地面に倒れ込んだ。
「倒した!」
討伐成功、計算通りだ。俺は感極まり、この世界に来て初めてガッツポーズをした。
「嘘でしょ?」
遠くでパメラが呆然と立ち尽くしている。まぁあの反応も無理もないか。
「し、信じられん! 本当に一撃で……?」
「はは、多分あの人の攻撃でHPが減っていたから、そのおかげもあるかも」
「そうか。はは、そうだよな……」
俺は必死で誤魔化した。商人も若干納得してくれたようだ。
だけど俺の中では違う。パメラの攻撃がなくても一撃で倒していたはずだ。理由は、俺の武器の特性にある。
実は〈神剣コスモソード〉には、「装備している者の全ステータスが2倍」の特性以外にも、いくつかの特性がある。今回アリゲーターベアの討伐に貢献した特性は、「HP満タン時にクリティカル率100%」だ。
文字通り現在HPが満タン、つまり全くHPが減っていない状況なら、クリティカル発動率が100%、確定で発動するというものだ。これもある意味ぶっ壊れだな。
さっき商人がクリティカルヒットを運任せだと言ったが、〈コスモソード〉装備時だけは運じゃない。HP満タン時なら、100%クリティカルヒットが出るんだ。
俺はHPを回復させたばかりだから、この条件は満たしている。
だがこれだけではまだ足りない。ここに来て追加されるのが、スキル〈目覚めの一撃〉だ。一度だけクリティカルヒットのダメージが3倍になる。
確定クリティカルヒットに加え、そのクリティカルヒットのダメージ量が3倍になるスキルも合わされば、あの高HPを誇るアリゲーターベアも一撃で倒せる、という計算だ。
まさに計算通りだ。ここまで自分の計算通りに事が運んだら、誰だって天狗になりそうだな。
「あなた名前は?」
いつの間にかパメラが俺の目の前まで来ていた。間近で見ると、思った以上に背が高い。まぁ俺の身長が150cmと低いことも関係しているが、スタイルもいいし魅力的な青色の瞳がなんとも美しい。俺はドキドキした。
「俺は……ロバート・ヒューリックだ。よろしく……」
「ロバート……ヒューリック?」
「ヒューリックだって? あんたあの名門貴族ヒューリック家の者か?」
しまった。うっかり家名を出してしまった。やはり俺のことはこの近所では結構有名なんだな。
「はは、まぁそういうことになるね」
「なるほど、どこかで見た顔かと思ったらヒューリック家の長男だったのか。道理で強いはずだぜ、あのアリゲーターベアも一撃だもんな」
「マグレ、でしょ?」
「え、パメラさん?」
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