第百二十八話 モンスター召喚の犯人を発見!
ロバート・ヒューリックが消えた瞬間を見届けたアメリアは、清々しい気分になった。
「あーはっはっはっは! ざまぁないわね、ロバート・ヒューリック、これで最大の邪魔者は消えた。この島は……もうすぐ私のものよ!」
しかしアメリアはすぐにある異変に気付いた。
「あら、ルウミラまで……」
気づけばルウミラまでロバートと一緒に消えていた。思えば、ルウミラはロバートの一撃を喰らって瀕死の状態だった。
そのままロバートと一緒に転移魔法に巻き込まれたのだ。
「まぁいいですわ。ルウミラはもうお役御免よ、それよりあのピアスがあれば……」
「アメリア様! アメリア様!」
「ホルス、よく戻ってきました。状況は?」
「はい、首尾よくいっております。スージーは例のピアスをウィスベリーの場所に運んでおります」
「ミーナの様子は?」
「問題ありません。途中かなり魔力を消耗しちゃいましたけど、昨日もらったあの魔石のおかげで、現在も魔力を維持しております」
ホルスの報告はアメリアの満足のいくものだった。
「万事うまく行っているようでなによりですわ。ミーナにはこのまま召喚を続けるようにと伝えなさい」
「はい。ですがその……」
「なにか問題でも?」
ホルスはアメリアから叱責されるのを覚悟した。
「ミーナにはそろそろ休ませてもいいかと。いくら魔石があると言っても、もう一日近くも召喚を続けていて……」
バシィッ!!
ホルスのすぐ横側を強烈な光線が一瞬で通り過ぎた。アメリアは攻撃魔法をわざと外した。
「余計なことは考えなくていいのです、ホルス」
「ひえぇ! アメリア様! 申し訳ございません! 出過ぎこと子を言ってしまって」
「お気持ちはわかります。ピアスが複製されるまでの辛抱です。最低でもあと二日、いや三日は耐えてもらわねばなりません」
「三日も!? それはまた、過酷すぎるのでは?」
アメリアはホルスを睨み返した。
「失敗は……許されないのですよ」
「あ、アメリア様……」
「私を無能だと蔑み、夫である皇太子殿下を実質国外追放した現皇帝に裁きを下さねばいけません」
アメリアが強い口調で述べた。ホルスは従うしかなかった。
◇
「バーニングレイン!」
エイダとパメラの二人が、モンスターの討伐にしながら森の中を移動していた。
「全く、とんでもないモンスターの数ね!」
「本当、嫌になるわ。でもこの先に行けば……」
「張本人に会えるかもね」
ロバートと別行動をとりコルネ村に向かったエイダとパメラは、コルネ村にてフレイムバタフライを討伐した。
エイダの〈シェアリングピアス〉でロバートのステータスが共有されたおかげで、倒すのに苦労はしなかった。
だけどその後で予想外な事実を知る。なんと村長の娘のノーラが、村の外れにて怪しい人影を見たと告げた。そしてその人影が、モンスターを召喚しているところまでも目撃したという。
「まさか……こんな場所にいるだなんてね」
「しかもノーラが言うには女性とのことよ」
「どんな目的があってこんな真似したか知らないけど、見つけたらただじゃ済ませないわ。パメラも手加減なんかしちゃ駄目よ」
エイダとパメラは会話しながら〈フローティングボード〉で移動していた。しかし十分ほど移動したその時、エイダに異変が起きる。
「うぅ……!?」
「どうしたの、エイダ!?」
エイダが突然しゃがみこむ。〈フローティングボード〉が減速し、停止した。
「はぁ、はぁ……ごめん。なんか知らないけど、凄く疲れちゃって……」
「無理もないわ。さっきの村から戦闘続きだったじゃない、早く魔力回復薬を」
エイダは持っていた魔力回復薬を飲み干した。〈フローティングボード〉を再び動かし移動を始める。エイダは疑問を抱く。
(どうして? ロバートのステータスが共有されてるはず、まだこの程度でなくなるはずが……)
「見て、エイダ!」
パメラの声を聞いてエイダは我に返る。パメラが前方を指差している、その先に一人の少女が立っていた。
「嘘……あの子って!?」
「あのアルバイトの……名前は確か」
「ミーナ!」
二人ともその少女の正体はすぐわかった。ミーナが目を閉じて両手を広げると、目の前に魔法陣が展開され、そこからモンスターが数体出現した。
「なんてこと……あの子だったの」
「どうりでいなくなったはずだわ。どうする、エイダ?」
エイダは〈フローティングボード〉を止めた。彼女は覚悟を決めていた。
「私達が止めなければ誰が止めるの?」
「そうよね……わかったわ」
パメラもエイダに同意する。二人とも走って、ミーナのもとへ駆け寄った。
「そこまでよ! 観念しなさい!」
パメラが弓を構えて警告した。ミーナは驚いて振り返る。
「あなた達は!?」
「ミーナ、一体なんでこんなことをするの!?」
突然現れた二人の戦士に武器を向けられ、ミーナは戸惑う仕草をしている。
「あの……一体何の話ですか? 私が何か悪いことでも?」
「まだとぼけるつもりなの? あなたが大量のモンスターを召喚して〈スタンピード〉を起こしている張本人ってことは、もうバレてるわ!」
「それは……」
「もう言い逃れできないわ。目撃者は私達だけじゃないの。さぁ、おとなしく降参しなさい!」
「待ってください。確かに召喚したのは私ですけど、命令されただけで……」
「何を言い出すかと思ったら。じゃあ、命令した奴の名前を白状しなさい!」
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