第百二十三話 地下に閉じ込められた!?
スージーの元気な声が聞こえて俺も安心した。だけどさすがにもう一度酔わせるわけにはいかないから、少しゆっくりめに走るとするか。
大灯台まではそこまで距離は離れていない。少し走っただけで、もう大灯台の一部が見えてきた。
「スージー、もうすぐで大灯台に着くぞ」
俺はスージーに言った。念のため、後ろを振り向くとまたも口元を抑えている。
しまった。やはり早すぎたか、もう少し速度を緩めないと。
でもスージーは再度頷いた。大丈夫だという合図だろうが、無理をしすぎではないか。
仕方ない、ここからは俺一人で探すか。
「スージー、無理をするな。一旦ここで止める。大灯台には俺一人で行って探してくるから、待っててくれるか?」
「え? そんな、ロバートさん一人では……」
「平気さ。あそこにはそこまで強いモンスターはいないはずだ。ルウミラもいないはずだし」
「わかりました。気を付けて」
俺は馬車を止め走り出した。大灯台にはすぐに到着した。さすが素早さ一万はだてじゃない。
昨日来たばかりなのに、またここに来るとはな。特に変わったところはない。俺は入口の扉を開けた。
中に入っても特に変わっていない。というか人の気配がまるでしない。スージーが言うには、ミーナは大灯台にいるはずだが。
「おーい、ミーナ! いるなら返事をしろー!」
大声で呼びかけるも、返事はない。もちろん入口の近くとは限らない、屋上かもしくは地下にいるかもしれない。
「ひとまず地下から探すか」
螺旋階段の隣の壁、世界地図の部分を押して隠し階段を出現させた。そして地下に降りて、また大声を出して呼びかける。
やはり返事はなかった。地下にもいないというのか、ということは屋上か。
「ん? あれは?」
俺はある異変に気付いた。地下には中央部に海水が溜まっていたはず。
それが今はなくなっている。どういうことだ。
「思い出した。ここは確か……」
大灯台は海沿いに建っている。ここの地下水は潮の流れに影響されている。今の時間帯は干潮か。
潮が引いたおかげで、中央部は水がなく巨大な穴がぽっかりと開いている状態だ。俺はそっと身を乗り出し、下を見た。
「……あれは!?」
なんと底の方に一人の女性が横たわっていた。見覚えがある。目を凝らしてよくみた。
「間違いない、アルバイトの女の子、ミーナだ」
なんでこんな場所にいるんだ。まさか誰かに誘拐されたのか。
いやそんなことはどうでもいい。すぐに助け出さないと、満潮になったら大変だ。
「待ってろよ、すぐ助けるからな!」
俺は咄嗟に飛び降りた。底まではかなり深く、落下したらとんでもないダメージを喰らうが、俺の防御力なら問題ない。
下に到着した。すぐ横に倒れているミーナに駆け寄り、意識の有無を確かめた。
「ミーナ、しっかりしろ!」
「……うぅ」
かすかだが彼女の声が聞こえた。
「よかった、気が付いたか」
「うぅ、ここは……? は、あなたは!?」
「俺はロバートだ。君を助けに来たんだよ、姉のスージーに頼まれてな」
「ね、姉さんが!?」
「外で待っているはずだ。待ってて、すぐに会わせてやるからな」
俺はミーナを抱えた。しかしミーナは上を見上げると、不安な顔で俺を見つめた。
「あの……あそこまで十メートル以上ありますけど」
「心配するな、俺の跳躍ならあそこまでひとっ飛びさ。まぁ見ててくれ!」
ミーナを抱えたまま、膝をばねにして思い切りジャンプした。
ミーナは思った以上に軽くて助かった。昨日肩車でパメラとジャンプしたが、予想以上に重かったんだよな。パメラには言えないけど。
「よし、着いたぞ!」
「ほ、本当に……凄いジャンプ力!」
「よく言われるよ。それより急いでここを抜けようか」
俺はミーナをおろして、階段を上りドアを開けようとした。しかしここで異変が起きる。
「……あれ? ドアが!?」
「どうしました?」
「開かない! くそ、閉じ込められた!」
なんてことだ。誰かが外から鍵をかけたな。
「多分、私を誘拐した連中だと思います」
「あぁ、まんまと罠にはめられたようだな。さぁ、どうするか?」
と言っても、方法は一つしかないな。
「ミーナ、ちょっと下がっててくれるか?」
俺はコスモソードを鞘から抜いた
「ロバートさん、何をするつもりですか!?」
「強行突破だ。ドアをぶち破る」
「無茶です、いくらなんでもそれは!」
「でもほかに方法はない。いいから見ててくれ、〈真空波動剣〉!」
俺は渾身の力を込めて、ドアに向けて剣術スキルを放った。俺の並外れた攻撃力なら、この一撃でドアは破壊されるはず。だけどそうはならなかった。
「あれ? 嘘だろ?」
真空刃は間違いなく衝突した。でもドアには傷一つついていない。なんでだ。
「くそ、もう一度!」
もう一度〈真空波動剣〉を放った。だけど結果は同じだった。
「こうなったら、もっと強力なスキルで」
「あの……ロバートさん」
ミーナが何か言いたげな感じで話しかける。
「悪い、ミーナ。今話しかけないでくれるか、ちょっとスキルボードを確認したい」
「いえ、あの……私、抜け道を知っています!」
「そうか、抜け道か……でも今はこのドアを……抜け道!?」
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