第百二十二話 興味津々なスージー
なんてこった。よりにもよって行方不明のミーナが、スージーの妹だったなんて。
「まいったな、それは。でも……今は非常事態だ。とにかく、〈スタンピード〉をなんとかしないことには」
「それは大丈夫です。私、ミーナの居場所に心当たりがあります」
「心当たりだって? それはどこなんだ?」
「多分、東の大灯台だと思います」
東の大灯台、奇しくもルウミラと戦った場所と同じか。幸い、三日月岬とそう距離は離れていない。
でも、まだ一つ疑問がある。
「よしわかった。シールドシザーズを倒した後で、大灯台に直行だ」
「ありがとうございます、わがままを言ってすみません」
「いいって。それより、俺からも一つ聞いていいか?」
「はい、なんでしょうか?」
「なんでミーナの居場所が東の大灯台で思ったんだ?」
俺が質問すると、スージーは動揺を隠しきれない。
「え、えぇと……それは、その……」
どうしたんだろうか。もしかして聞いてはいけないことを聞いたのか。
「いや、別に答えたくなかったら、答えなくていいよ」
「あ、ごめんなさい。私の方こそ、変に動揺しちゃって」
「気にするなよ、俺こそ変な質問して悪かった」
まぁ、スージーがミーナの居場所がわかっているのに理由はどうでもいいか。探す手間が省けるわけだしな。
「よし、それじゃまず三日月岬へ行くぞ!」
「はい! えぇと、その前に馬車ですよね?」
「いや、馬車は使わないよ」
「はぁ? 馬車を使わないで、どうやって行くんですか?」
「走っていくんだ」
と言っていたら、ちょうど横を馬車が通り過ぎた。
「あ! 馬車が来ましたよ」
「いいタイミングだ。でも馬じゃ遅すぎると思う」
「あの……ロバートさん、もしかして……」
スージーは俺の言っていることがようやくわかってきたようだ。
「後ろの車の部分だけ借りよう。スージーは後ろに乗ってくれ。そして馬は……俺だ!」
*
十分後、俺達は三日月岬へ到着した。後ろの荷台に乗っていたスージーは、あまりのスピードに酔っていたようだ。
「スージー! 大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です。それより、凄いスピードですね、信じられません」
「そうだね。俺でも信じられないよ、はは」
素早さ一万がここまでのスピードとはな。馬なんかより数倍も速かった。もしかしたらエイダの〈フローティングボード〉と互角じゃないか。
「きしゃあああああ!!」
「どうやら、ゆっくりはしている暇はないな。あいつを片づけないと」
到着したのも束の間、遠くからモンスターの鳴き声が聞こえていた。声の主はシールドシザーズだ。昨日ザックス達と戦った場所とほぼ同じか。
ケツァルコアトルやアナコンダと同じで、あいつも誰かが召喚した奴なのか。まぁそんなことは今はどうでもいい。とにかく速攻で片づけよう。
「ロバートさん、私も行きます……うっ」
スージーも立ち上がったが、ふらついている。
「無理するなよ、まだ酔いがさめてないだろ?」
「でも、相手がシールドシザーズなら一人だけでは」
「俺なら一人でも十分だ。まぁ見ててくれ」
俺は速攻でシールドシザーズの手前まで駆け寄った。すっかり俺を敵として認識し、巨大な両腕のハサミで攻撃をしかけてくる。
「ロバートさん、危ない!」
そんなハサミ攻撃も俺には効かない。パワー形態じゃないから、俺の防御力の前に奴のハサミもあえなく粉砕されてしまう。
「ぎぃえええええ!!」
「痛いのもすぐ終わらせるさ。はぁ!」
念のためクリティカルヒットの威力を上げるスキル〈目覚めの一撃〉も使用し、コスモソードで一刀両断した。やはり一撃か、呆気ないな。
「終わったぞ、スージー」
「え? あの……嘘……」
スージーは未だに信じられないようだ。普通に考えたら、六つ星のモンスターを一撃とかあり得ないもんな。
「い、一撃で倒したんですか?」
「そうさ。まぁ俺の攻撃力はぶっ飛んで高くてね、あと剣術スキル〈目覚めの一撃〉で、クリティカルヒットを三倍に上げたんだ」
「そうだったんですか。それにしても強すぎます!」
スージーが目をキラキラしながら、俺を称賛する。
「いやぁ、それほどでも……」
「一体どれだけレベルを上げたら、そんなに強くなるんですか? あとその剣も見たことありません、どこで手に入れたんですか?」
「まぁ、説明すると長くなるけど、まず俺のステータス上昇値はレベルに依存するけど、ちょっと特殊なんだ」
俺は一から説明してあげた。思えばパメラやエイダにも俺のステータス上昇について詳しく話したことはない。
スージーに話しても理解されるかわからない。でもいい機会だ、俺のステータスの秘密をここで明かそう。
「俺のステータス上昇はレベルで上がるけど、指数関数的に増加するんだ」
「し、指数関数的……ですか?」
スージーは目が点となった。いけない、この説明だとますます混乱するかな。
「えぇと、なんと言ったらいいかな。本来ステータス上昇値は一次関数に従うんだけど、俺だけは特別で指数関数の法則で増加するんだ。例えばレベル10でランクがSだったら、ステータス上昇値は90だけど、俺の場合は2の10乗になって、1024となるんだ」
「…………」
スージーは何も言い返せない。まずい、やっぱり完全に困惑しているな。
「ま、まぁとにかく……これからどんどん爆発的に増加するってことだ。これでわかったかな?」
「神話の勇者……ですか?」
スージーがボソッと呟いた。
「え? 今なんて?」
「あ! いえ、その……」
スージーは突然動揺しだした。何かを知っているように見えるけど、気のせいか。
「そ、それより……すみません。大事なこと忘れてました、妹のことなんですけど……」
「妹? あぁ、そうか。これから大灯台に向かわないとね!」
うっかりしてた。シールドシザーズも倒したからここにはもう用はない。急いで大灯台に直行して、妹のミーナを助け出そう。
俺は再び荷台を馬のように引っ張り走り出した。
「あ、ごめん。まだ酔いが……」
「私なら大丈夫です。気にせず走ってください」
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