表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

120/290

第百二十話 緊迫の事態!?

 ウィスベリーはそれ以上聞かなかった。自分の考えは恐らく当たっていた。アメリアは事前にまず自分の店から手回しをしていた、戦士達を困らせるために。


「そこまで用意周到とはな。だが俺も商売だ。これ以上赤字が続けば……」

「心配しないで。補填はしてあげる、でもその代わり……」


 アメリアは再びテーブルの上の紙に手を置いた。すると今度は、小さなピアスが映し出された。


「なんだ、そのピアスは?」

「やっぱりあなたも初めて見る?」

「魔法道具には見えないな。実物があればハッキリするんだが……」

「そう……わかった、質問を変えるわ。この世界に、自分のステータスが飛躍的に向上できるようなアクセサリーがあるのを知らない?」


 アメリアの質問にウィスベリーは再び考え込んだ。


「……そんなアクセサリーは山のようにある。例えば〈ドラゴンの首輪〉とか〈ルーンベルト〉、〈コスモブレスレット〉、挙げればキリがないが……ピアスはないな」

「あなたも知らないピアスってことね。じゃあこんな話は信じられる? 初級魔法の〈ファイアーボール〉で、帝国最強の魔道士が敗れたっていう話は」


 アメリアの言葉を聞いて、ウィスベリーは耳を疑った。そして誰が敗れたのかも容易に想像できた。


「まさか……ルウミラが!?」

「彼女が負けたわ。それも格下の魔道士にね」

「あり得ない、帝国最強の魔道士だぞ。一体誰にやられた?」

「とりあえず、これを見て」 


 アメリアはまたもテーブルの上の紙に手を置いた。すると、灯台の屋上で向き合っている二人の魔道士の姿が映し出された。


「録画していたのか? ルウミラと戦っている女は、見たことあるな」

「ランクAの魔道士エイダ・ハルスウェアよ。あなたの店にも何度か来たことあるはずよ」


 アメリアの言葉を聞いてウィスベリーも思い出した。確かに自分の店で魔法道具をいくつか購入していた。


 そして映像を見ていたウィスベリーは次の瞬間驚愕した。なんとエイダの放った巨大なファイアーボールがルウミラを直撃、そのままルウミラを戦闘不能にさせた。


「今のは……初級魔法の〈ファイアーボール〉?」

「さて、これだけ見てもらえれば嫌でも興味がわくでしょ?」


 アメリアは再度紙に手を置く。エイダの顔の部分が徐々に拡大されていく。そして片方の耳に付けてあったピアスを、紙一面に写し出した。


「さっきのピアスと同一か……なるほど、こいつは面白い」


 ウィスベリーはテーブルに両手を置いた。彼はピアスを凝視し、ほくそ笑んだ。これまで以上にないほどの好奇心で満たされていく。


「複製はもちろん可能だ。だが原物がないことにはどうしようもない」

「それはわかっている。そのためにもう一人刺客を送り込んだわ、彼らのもとに。まぁ気づいていないでしょうけど、ふふふ……」





 翌朝、俺は女性の大声で目が覚めてしまった。


「ロバート、急いで起きて!」


 ドアを叩く音とともに、パメラの大声が聞こえた。時間を見たら、まだ八時前だ。なんでこんな朝早くに起こすんだ。


「パメラ……ごめん、もう少し寝かせてくれないか」


 必死に声を絞り出した。だけどパメラはドアを叩くのをやめない。


「眠い気持ちはわかるけど、大変なことが起きているのよ! なんでもいいから、急いで起きて!」

「た、大変なことって……?」


 パメラの様子がおかしい。明らかに何か緊迫した事態が起きているようだ。俺は仕方なくベッドから起き上がった。


「今から着替えるから、下で待っててくれ」


 とりあえずトイレを済ませて、着替えをし、軽く歯も磨いて部屋を出て下の階へ行った。食堂に行くと、すでにパメラとエイダ、そして新メンバーのスージーが集まっていた。


「あ、ロバート! やっと起きてきたの」

「あんだけ大声で怒鳴られたら嫌でも起きるよ。それはそうと、大変なことって何?」

「俺から説明するよ。とりあえず、座ってくれ」


 今度は男性の声が聞こえた。聞き覚えのある中年男性の声、まさかと思い振り返った。


「ジョニーさん? なんでこんな場所に!?」

「私達も実はジョニーさんに起こされたのよ」

「ロバート、昨日はミーナの捜索依頼を頼んでいたが、ちょっと事情が変わってな。別の依頼をお願いしたい」

「別の依頼って、一体何がどうなってるんです?」

「ひとまず、これを見てほしい」


 そういうとジョニーは俺の目の前のテーブルの上に、ありったけの依頼書を提出した。両手で数え切れないくらいある依頼書に、俺は目を見開いた。


「な、なんですか? この依頼書の量は?」

「これでまだ半分だ。残りの半分はほかの戦士達に依頼している」

「半分ですって!? ちょっと待ってください。この時間帯に、こんなに討伐依頼が来るものですか?」

「正確には今日の朝だけじゃない。実は昨日の夜からずっとなんだ。おかげでレミーも俺も徹夜だよ」


 ジョニーは疲れを隠しきれない声で話す。確かにジョニーの目の下にくまができている。でもレミーの方がもっときついだろうな。


「全部モンスター討伐依頼、しかも四つ星や五つ星モンスターばかりね。ハッキリ言ってこの量は異常よ」

「異常どころじゃない。私もギルドマスターになってこんな事態は初めてだ。なんというか、これはまさに……」

「【スタンピード】よ」

第百二十話ご覧いただきありがとうございます。


この作品が気に入ってくださった方は高評価、ブックマークお願いします。コメントや感想もお待ちしております。またツイッターも開設しています。


https://twitter.com/rodosflyman

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ