第十一話 突然の悲鳴
そして忘れてはいけないのが、戦利品の回収だ。コボルトが持っていた棍棒もそうだが、コボルトの爪と毛皮も貴重な戦利品だから、全てアイテムボックスの中に入れる。
今のところ順調だ。まだ1ダメージも喰らってない。回復薬も大量にあるから、ここは貪欲に行こう。
「となると、入るしかないか……」
俺はコボルトが出て来た洞穴を見つめた。この奥は奴らの棲み処となっているだろう。序盤に訪れる森で、洞窟内はコボルトの出現率が高いからレベル上げには最適の場所だ。
意を決して俺は入った。20メートルほど進むと、明かりが灯された二つの小部屋を発見する。最初の小部屋にコボルト達が三匹、隣の小部屋に四匹、合計で七匹だ。
まだ俺に気づいていない。だが数が数なだけに不意を突いても、ダメージを喰らう可能性がある。
そこで念のため体力と防御のステータスも上げることにした。体力はHPを上げ、防御は被ダメージを減らす。今の俺のステータスはこんな感じだ。
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ロバート・ヒューリック (貴族)
ランク:D
レベル5
HP:80/80
MP:0/0
攻撃力:8
体力:8
防御:10
素早さ:0
器用さ:0
魔力:0
跳躍:0
魔法防御力:0
状態異常耐性:0
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体力と防御をそれぞれ3ずつ上げた。もちろんその二つのステータスも〈コスモソード〉のおかげで、二倍に上がるからそれぞれ8と10まで上がる。
そしてHPも80に上がった。HPの計算は簡単で体力の10倍の数値となる、なおHPは二倍の対象外だ。
コボルトはクリティカルヒットが怖い。これだけ数がいると、喰らってしまう可能性もある。そこで念のため防御も上げて、クリティカルのダメージも抑える。これなら仮に10発くらいは喰らっても大丈夫だ。それに回復薬(小)も大量にある。ここは勝負だ、惜しみなく使おう。
準備は整い、俺は最初の小部屋にいる四匹を退治することにした。最初は四匹、次は三匹だ。
小部屋の前までやって来た俺は、すかさず剣を構えスキル〈烈風剣〉をお見舞いした。四匹のコボルトは俺に気づくこともなく、全員床に倒れた。もちろん一撃だ。
ババーンと案の定レベルアップの音がなった。レベルが6に上がった。
ステータス画面を見たかったが、隣にいたコボルト達が気づいて部屋から出て来た。やっぱりこうなるか。
本来なら残りの三匹も〈烈風剣〉を使って倒したいが、ここで一つ問題がある。
俺の視界の右下、ちょうど時計が表示されている枠の真上にスキルゲージという円形のマークが表示されている。この円が白く光った時がスキルが発動できるサインだ。
今はスキルを使用したばかりで光っていない。〈ロード・オブ・フロンティア〉の戦闘では、スキルの連続使用は基本的にできず、原則スキルゲージが溜まるまでは使えない。
次の発動にはゲージが溜まるまで待たないといけない。俺が最初に四匹をまとめて倒したのはこれが理由だ。もし最初に三匹倒したら、残りの四匹をスキルなしで倒さないといけない。
レベルが低い内だとスキルゲージが溜まるのが遅い。あとはそれを短縮させる装備品もない。もちろん敵のコボルトは待ってはくれないから、今からはスキルなしで倒さないといけない。
「ゴブロォオオオ!!」
出てきたコボルト達は仲間がやられたことで、殺気が剥き出しだ。洞窟内だから、威嚇の声が凄く響くな。だがここで怯んでは駄目だ。おとなしく俺の経験値の糧になってもらうぞ。
「うぉおおおおおお!!」
俺はダメージを喰らうことを覚悟で、無心で剣を振りまくった。洞窟内は暗くよく見えなかったが、戦いが終わった後は大量の血が体のあちこちに付着していた。
「いたた、少し喰らったか……」
ホーンリザードより格上のコボルト、しかも三匹が相手だとこうなるな。コボルトの棍棒は俺の体のあちこちに当たっていた。かなり痛い。
事前に体力と防御を上げておいてよかった。俺はアイテムボックスから回復薬(小)を取り出した。トマスから大量にもらったから、安心して使える。ありがとう、トマス。
回復薬を使ったら、ビックリするくらい痛みが引いた。現実世界の痛み止めなんかより遥かに効き目が強い。そしてHPも最大値まで回復していた。さらにいつの間にかレベルが7にまで上がっていた。やはりコボルトは経験値が高いな。そして忘れずにコボルトの戦利品も回収と。
「待てよ。もしかしたらこの奥に……」
俺はコボルトがいた小部屋の奥へ進んだ。案の定、奴らが搔き集めたであろう物品が茣蓙の上に並べられていた。
茣蓙の上には回復薬が数個、折れた剣、折れた盾、さらに人から奪い取ったのか金貨や宝石の類もあった。
もちろんこれらも全て回収する。全く俺もつくづく泥棒だな、まぁこの世界は日本みたいに民法なんてないから、気にするだけ無駄だ。
「さて、これからどうするか」
俺は洞窟を出た。レベルも7まで上がり、アイテムボックスも充実した。しばらくはこれで安泰だろう。
ふと空を見るとだいぶ暗くなっていた。この世界でも太陽は西の空に沈む。もうすぐ夜になるな。
そろそろソーニャの町に向かおう。そう思い街道へ向って歩き出したその時だった。
「助けてくれー!! 誰かー!!」
「なんだ!?」
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