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第百七話 大灯台の地下にあるお宝

 空高く飛んで行ったホウオウを、俺達は呆然と見届けるしかなかった。パメラも弓を構えていたが、どうやら射程外だったようだ。


「ホウオウは最初から逃げるつもりだったんだね」

「それにしても驚いたわ。ルウミラを飲み込むだなんて……」

「是が非でもご主人様を守りたかったんだね。未だに信じられないけど」

「私がいけなかったのよ。魔力回復薬を要求したのは単なる時間稼ぎだった。ホルスがここに飛んでくるまでのね」


 エイダが床に落ちていた魔力回復薬の瓶を拾いつつ、自分がしたことを後悔していた。そしてルウミラの策略も今になって気づいた。


「エイダ、悔やんだって仕方ないよ。あそこでルウミラの考えを看破するなんて不可能さ」

「でも……あと一歩だったのよ。絶対倒せたはずなのに!」


 俺の言葉もエイダにはあまり響かないようだ。魔力は上がっても、肝心の智略についてはルウミラの方が一枚上だったか。


「それはそうと、これはどうする?」

「これって……」


 パメラが〈シーリングボール〉を取り出して言った。


 ルウミラが逃走してしまった以上、また一からやり直しか。俺は頭を抱えた。


「うーん、困ったな。ルウミラがいないと解呪できないし」

「エイダの魔力は上がったんでしょ? だったら強引にでもエイダの魔法で解呪できない?」

「無理よ。さっきも言ったけど、私が使える解呪魔法は初級魔法の〈ディスペル〉だけ。〈シーリングボール〉の解呪は、より上位の〈コラプス〉がないと無理だわ」

「そんな……じゃあ、やっぱりルウミラを倒すしかないわけ?」


 コラプス。その言葉に俺は反応した。高度の解呪魔法として有名だけど、俺が〈ロード・オブ・フロンティア〉で初めて入手した場所はどこだったか。


 その場所を思い出した。


「あ! そうだ、ここだよ!」

「ちょ? ロバート、どうしたのよ!?」

「ディエゴは助かるよ! 今すぐ地下に行こう!」

「は? 地下に行こうって、いきなり何言い出すのよ?」

「説明は後だ。とにかく地下へ、そうすれば答えはわかるよ」


 俺はエイダの乗ってきた〈リフティングボード〉へ駆け寄った。


「それに乗っても意味ないんじゃ?」

「大丈夫。多分ルウミラを倒したから、ただの置物になっているはずさ」


 俺は〈リフティングボード〉を片手で持ち上げた。


「ほらね。ルウミラの魔力が尽きた証拠さ」

「それなら、私の魔法で再起動できるわ。〈リセット〉!」


 エイダが杖の先端で〈リフティングボード〉を小突いた。俺が手をはなすと、〈リフティングボード〉がゆるりと水平に向きを変えて、再び浮上した。


「やった。今度は三人一緒に乗っても大丈夫よ。さぁみんな乗って」


 三人とも〈リフティングボード〉に乗った。そのまま最上階の螺旋階段があった穴の中央から、下へ移動を始める。


「そういえば、あなた達はどうやって最上階まで上がってこれたの?」

「え? いやぁ、それは俺のジャンプで……」

「ジャンプ? でもパメラは……」


 パメラが慌てて俺の口を塞いだ。


「うぐぐ……」

「それ以上言わないで! それよりエイダ、ルウミラとはどんな戦いをしたか聞かせてくれない?」

「え? そうね、ルウミラはいきなり私を氷漬けにしたんだけど、私の〈ヒートウェーブ〉で……」


 パメラが慌てて話題を変えた。いや確かに気持ちはわからなくない。


 さっきは自分でも恥ずかしかったもんな。前世でも一度も経験はしたことはない。


 女性を肩車して最上階までジャンプしたんだ。ドキドキしてしまった。こんなことは確かに言えないな、エイダが知ったらどんな恐ろしいことになるだろうか。俺も黙っておこう。


 でもエイダが話を適当に済ませると、にやりと笑って俺に近づいた。


「ふふ、ロバート。今夜の夢で見せてもらうわ」

「え? なんの話だ?」

「秘密」


 エイダの顔が怖い。何を考えているんだろう。夢の中で何を見るって言うんだ。


 夢か。なんかその言葉に引っかかる。一昨日から変な夢を見ている気がするが、思い出せないな。


 そうこう考えている内に、大灯台の一階に到着した。


「一階に着いたわ。でも地下に降りる階段なんてなさそうだけど……」

「あぁ、そうか。えぇとこの辺に……」


 大灯台の一階には地下へ降りる隠し扉がある。確か螺旋階段の隣の壁だった。模様があるのが目印だ。


「あった! これだ!」

「これって……世界地図じゃ?」

「そうさ。この部分を押せば……」


 地図がある場所を力を込めて押し込んだ。すると地図の部分がちょうど壁にめり込み、そのまま壁全体が横方向にスライドした。


 目の前に地下へ降りる階段が現れた。


「ほんとう、なんでも知ってるのねあなた」


 階段を下りた先には広大な空間があった。空気も澄んでいるみたいで、住んでみるのも悪くない場所かもしれない。


「地下にこんな広大な空間があったなんて……」

「見て! 水が溜まってる!」


 パメラが指差した先に、水が円形に溜まっているプールがあった。エイダとパメラが近寄って、その水をまじまじと見つめる。


「うわぁ、なんて綺麗な水。純粋な真水ね」

「ここの真水、純度が高くて魔力還元には最適ね。ルウミラがこの場所を選んだのはこれが理由よ」

「一体何を言ってるんだ?」

「ルウミラはね、水浴びが趣味なの。と言っても、彼女の持つ特異体質の一つなんだけど、純度の高い真水を体に浸すことで魔力を自らの力へ還元してしまうの」

「へぇ、そんな趣味が……」


 まさか、ルウミラがこのプールで水浴びをしてたんじゃ?


「もう、何変なこと想像してんのよ!」


 パメラに注意された。いけない、本当にルウミラの裸姿を想像してしまった。エイダもちゃっかり睨んでいる。


「そ、それよりさ……ここに来たなら、アレがあるはずだ。探そう!」

第百七話ご覧いただきありがとうございます。


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