表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な大好き  作者: 界扉
9/14

お父さん

エイビーに連れられて寝室を出た。

そう、今から食堂に行くのだ!!

やっと外に出られる〜!うれしー!!

寝室のあった建物は、レンガ色の2階建ての大学校舎のような外観で3LDKのマンションのような構造になっているらしく、騎士団所属の夫婦・パートナーのいるもの専用らしい。そして、夫婦の子供(息子)は16歳の成人までは一緒に住むことが普通で、娘の場合は16歳の成人ではなく伴侶と一緒になるまでが一般的だそうだ。エイビーが、教えてくれた。

そんな話をしながら、建物を出て空を見上げると、雲ひとつなく青い絨毯が果てしなく続いているように広がっていて、空気は澄んでいた。

そして今、私の目の前にそびえ立つのは、まるでヨーロッパの古城のようなお城。真っ白な白壁が光を反射して城が光を放っているように見える。

色々なものが珍しくて、キョロキョロ周りを観察しながら歩いていると、

「サクラ、迷子になりますよ」

そう言われて、手を繋がれてしまった。

はずかし〜。身長差があるため、エイビーを見上げて

「子供じゃないから、迷子になりません!」

ちょっとふてくされた感じで言ってしまった。

はっきりいって、子供である・・・・。

そんな私にエイビーは「サクラの母だとしっかり感じたいのですよ」

柔らかな笑顔で言われてしまった。

そんな笑顔を見せられて、ダメなんていえません・・・

ということで、私はエイビーと手を繋ぎながら食堂に向かっています。

食堂への道をエイビーに引かれてキョロキョロ周りを見ながら歩いていると、やがて他と趣の違う実用的な建物と、その前の広場にいるたくましい男たちの集団を見つけた。

男たちはエイビーと手を繋いでいる私をみて、何か言っていたが至る所から訓練中のような野太い掛け声がしていて何を言っているかは聞こえない。そんな、男たちの視線をうけながらエイビーに引っ張られるように二階建ての建物に入った。

建物に近づくにつれいい匂いが漂っていたが、建物に入るとその匂いは強烈に私の食欲中枢を刺激してくる。

いい匂いを嗅いで食欲中枢を刺激されまくってしまった私は、エイビーと手を繋ぎながら歩くのが少し苦痛だ・・というか、私の身長が低いため1歩の歩幅は小さいのだ・・・全然進まない!!

もどかしすぎる!!

「エイビー、食堂まだ遠いの??」

「お腹減った!もう動けない!」

ああ〜〜〜っ、30歳の成人女性の威厳はどこに置いてきた!!

やっぱり、体の年齢に引っ張られるのかな〜?・・・・

冷静な自分がいたら

『絶対ちがうから!!』と全力で否定するな・・とを思いながらも、

今の私の言動は止まらない!!

「エイビー、お腹すいた〜」

繋いでいる手をクイクイ引いてみる。

もう駄々っ子のそれだ!!

エイビーはそんな私に怒る事なく、

「じゃあ、抱っこで食堂にいきましょうか?」

とニーッコリスマイルだ!!

・・・少し考えたが、私は自分で歩くよりも速く歩ける『エイビーによる抱っこ』を選択した(お腹が減りすぎて・・・まともな判断が出来なかった・・悲しいかな・・食欲に負けた・・ハハハ・・・)

私はエイビーの手を解くとエイビーに抱きついて

「抱っこでお願いします」

恥しかったが、エイビーの紺碧色の瞳を見つめながらお願いした。

エイビーは私のお願いを受けて、はじめはキョトンと目を丸くして驚いたもののすぐに私を抱き上げて歩き出した。

私はというと、エイビーに抱き上げられて目の高さが急に高くなったことで私の置き去りにしてきた理性が戻り恥しさのあまりエイビーの首筋に顔を埋めて羞恥に耐えた。

そんな私にエイビーは、

「サクラが甘えてくれて、我が(わがまま)を言ってくれて嬉しい。

サクラは私の可愛いい娘ですからね」

私にだけ聴こえるように小さな声で伝えてくれた。

私は、そんなふう伝えてくれたエイビーに「うん」と頷いた。

そしてエイビーは「レイにも甘えて下さいね。でないと私がレイに妬かれてしまいます」そう言って少し笑ったような気がした。


エイビー抱っこでしばらく歩いていると、ガヤガヤと騒がしくなってきた。そしていい匂いも強くなってきて、エイビーに抱っこしてもらったままで顔を上げると既に目的地の食堂に到着していて、食事を注文する列に並んでいた。

いい匂い〜〜!!

何食べよっかな〜!

前の人は何を食べるのかな〜??ちょっと浮れぎみで前の人を見ていたら・・・目があってしまった・・・恥ずかしい・・

私はサッと前の人から目を逸らしたが、前の人が何を思ったのか話かけてきた。

「サクラ様、何を召し上がりますか?」

えっ!!

私の名前を呼ばれたことと、『様』呼びの違和感で咄嗟に声がした方をみた。

近いっっ〜〜〜〜。

目の前にエメラルド色の瞳が飛び込んできた。

エイビーが後ろに私を引っ張ってくれたから・・・助かった。

私はまじまじとエメラルドの瞳の持ち主をみた。

「カーク??」

カークだよね・・・思ったと同時に声が出ていた。

「あたり!!」

そう言うと、カークは口角を少しだけ上げた笑みを浮かべて行ってしまった。

う〜ん〜〜〜?カークってあんな感じだった??

もっとなんかガキ大将的な感じだったような気がするだけど〜。

「・・・・サクラ」

エイビーの声で注文の順番がきたことが分かった。

でも、注文の段階になってメニューに何があるのか?

どんな食べ物なのか?

食べ物の名前と品が一致しない・・・降参!!

「エイビー、私のも選んで」

ちょっぴり可愛くお願いしてみた。

エイビーはいい笑顔で、注文し始めた。

食堂の使い方は大学の学食みたいな感じで、列に並んで注文→注文した食事を受け取る→会計の順で会計は、皆さんそれぞれのタグカードで支払い完了でした。こういうところも、日本とあまり変わらないな〜・・と、少しだけ懐かしく思った。


エイビーに抱っこしてもらった状態で注文した食事が出来上がるのを楽しみに待っていた私だったけど、この状態では注文した食事が運べないことに気がついた。

「エイビー、降ろして」

「私、エイビーの後ろをついて行くから」

するとエイビーは私を降ろしてくれるわけではなく、

「じゃあ先に席に移動しましょう」といいながら、テーブルや椅子が配置されている方向に歩き出した。

食べる席とかテーブルって決まっているのかな〜?

空席もテーブルもまばらにしか見当たらないけど・・・・

朝食の時間だからか、たくさんの騎士たちが集まってきている。皆、一様に体格がよい・・・良すぎる・・デカすぎる。

女性の騎士姿の人もいるが、皆一様に大きい。

男性騎士よりも女性騎士の方が少しだけ背が低いくらいの差だ。

「ビー、こっちだ」

呼び声の主はレイだった。

椅子に座ってこちらに向かって手を振っている。

エイビーはすぐにレイのもとに行くと

「サクラ、レイにも甘えてくださいね」

私の耳元で私だけが分かるようにささやいて、レイの膝の上に私を降ろした。

私はレイの膝の上ですごく戸惑ったが、レイは戸惑う様子など微塵もなく、「サクラ、一緒に飯にしよう」私を抱き締める腕に力を込め、頬擦りし始めた。

イヤ〜〜〜〜っ、何の罰ゲームなの・・・

こんなに人がいっぱいいる食堂で!!

レイには羞恥心ってものがないの!!

叫びたかったが・・・私の心の中に留めた。

今、ここでレイの羞恥心についても考えても何もはじまらない。

ならば、ここは私の今朝のレイへの態度を謝罪して、この場を切り抜ける!そして、レイに羞恥心を思い出してもらおう!!・・・レイは、騎士団長だ・・騎士のトップだ!・・こんな残念イケオジな姿であっていいわけないはず!!

それに、今ならレイに今朝の態度を謝罪出来そうだし・・・

頑張るぞ!!

私は心の中でしっかり気合いを入れて、私の頭の上にあるレイを見上げた。

「レイ、朝もだけど・・・きつい言い方してごめんなさい。でも、私、レイがお父さんになってくれてすごく嬉しいの・・・。あんな言い方ばかりだから信じてもらえないかもしれないけど・・・」

レイの黒みがかった緑色の瞳を見つめながら話す・・なんだか、すごくドキドキする・・レイに色々話をしたいのに、ドキドキしすぎて言葉が出てこない。なんで、こんなにドキドキするのか、ただ話をしているだけなのに・・・レイの瞳をみて話をしながら、そんなふうに考える自分がいる。ただ、ドキドキしているのが不思議と嫌じゃない。

どちらかというと・・好きなドキドキ・・・・。

ドキドキ・・ドクドク・・・心臓の鼓動を感じる。

自分の心臓の音がうるさくて、レイに伝える言葉はまとまらない・・

こんなのはじめて・・・・。

そして私は、レイが私にとってはじめてお父さんになってくれた存在であることに気がついた。お父さんは、日本での母が再婚したお父さんがはじめての存在だったはずだけど・・・お父さんって思えなかった・・・だからレイが私にとってお父さんって思えるはじめてなんだ〜。はじめてお父さんになってくれる人が出来た!!なんだか、心がホクホク暖かくなってくるような感じだった。

「サクラ、どうした?」

私が黙ってしまったためか、レイが心配そうに私に尋ねる。

「大丈夫・・・」

自分の心に伝える言葉が、漏れてしまった。

『私、お父さんが出来て嬉しい』

はじめて感じるドキドキの答えを見つけた!!

嬉しすぎて、レイに何を話せばいいのか・・さっき以上にわからなくなってきた。

そんな私をレイが心配そうに見つめている。

頑張れ私!!

きちんと話をする時は、相手の目を見て話す・・・頑張れ私!!

「レイ、こんな私だけど・・・レイのことお父さんって呼んでもいい??」

気持ちが先走りすぎて、少し早口で聞いてしまった。

そんな私にレイは、「当たり前だ」

そう言って私の頭を優しく撫でてくれた。

嬉しさ大爆発の上、私の頭を撫でてくれるレイの手が優しすぎて、目と瞼に力を入れて引き締めないと嬉しすぎて泣きそうだ。

ここで泣いてはいけないと涙が出そうなのを必死で我慢しながら、レイの膝にしっかり座り直して、レイの少しチクチクする顎を両手で挟んで、「レイ、私のお父さんになってくれてありがとう。お父さん、大好き!!」

私は、『大好き』を言ってから、すごく恥ずかしくなって、真っ赤になっている顔を隠そうとレイの筋肉で覆われた硬い胸にギュッとしがみついた。


私は、レイにしがみつきながら、恥しすぎて・・・どうしたらよいのかわからず、レイの反応を待った・・・・・。

えっ????

私がレイにしがみついて・・・・・

レイの反応を待ってからどれくらいたつのか???

レイがピクリとも動かない。

もちろん、レイが言葉を発することもない・・・・

さっきまで、食堂全体がガヤガヤしていたのに・・

今は、すごく静か・・・・

静かすぎる気がする・・・・

何かあったのかも・・確かめないと。

レイにしがみついていた手をそっと緩めて、レイの様子を確認しようとした瞬間、ガシャッとテーブルに物が置かれる音がした。

音のした方を振り返ると

「何があった!?」エイビーの顔が目の前に!!

私はびっくりしてのけぞって、危うくレイの膝から落ちそうになった。

エイビーが私の腕を引っ張ってくれたおかげで落ちずにすんだけど。

そして今私は、食堂の椅子に座ったエイビーと向かい合いながら膝抱っこされている状態だ。

どうしてこうなったのか・・・・頭を抱えたくなる状態の私だが・・・

「何があった!?レイはいったいどうしたんだ?」

エイビーが質問してくるけど、私にも何がなんだかわかりません。

「エイビー、私、レイにお父さんになってくれて嬉しい、ありがとう、って伝えたの。そしたらレイが動かなくなった。どうしてか・・・わからない。ごめん・・・・」

レイと一緒にいたのに、レイが動かなくなってしまった理由がわからないなんて・・・申し訳なさすぎでしょ・・・後ろを振り返って、椅子に座ったままレイはまだ動かない。ほんと、どうしちゃったんだろ??

パニックになりかけで泣きたくなるけど、深呼吸・・・。

深呼吸・・・こんなときこそ、冷静に・・新人看護師時代によく先輩から言われていた言葉を思い出した。

まず、レイの心臓と脈拍、呼吸状態を確認してみよう!!

私は、エイビーの膝からゆっくりと降りて、レイの心音を確認しようと近づいた・・・が、自分の身長が低すぎて思うようにレイの胸まで辿り着けない!!

すごく間抜けだ・・・真剣なのに・・ありえないくらい滑稽だ〜!!

「エイビー、私をレイの膝の上に乗せて」

私の行動を不思議そうに見つめていたエイビーは、私をレイの膝の上に座らせてくれた。

よし!!さあ、確認してみましょう!

私は、吸って〜、吐いて〜の深呼吸をしてから、レイの左胸に頬をくっつけるようにして耳を押し当てた。

ドクドク・・・心臓の音OK!

呼吸は、私はゆっくりとレイの膝の上に膝立ちして、レイの両肩に手をおいて自分が落ちないように体を支えながら、レイの口元に耳を近づけていった。呼吸OKと思ったところで、「サクラ!!大好きだ!!」

の呟きと共に思いっきり抱きしめられた!!

誰に?・・・それは、さっきまで動かなかったレイにである・・・・。

苦しい〜〜〜〜!!レイにちからいっぱい抱きしめれ、息絶え絶えになっている私をエイビーが救い出してくれた。

レイお父さんの『抱き締める』は『危険、死の予感あり』は、健在だった。

ちなみにレイは、私の大好き宣言に放心状態になっていただけでした・・・・ヤレヤレ・・・・。

人騒がせなレイお父さんである・・・・。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ