ここでの私
私の質問に美すぎる女性騎士は、一瞬だけ戸惑ったように紺碧の瞳が揺らいだが、ベッドの端に座っている私に跪き口元をほんの少しだけ上げ微笑んだ。「私の名前はエイビー・セブール。これからは、この砦にいる皆とともに姫様をお守りいたします。エイビーとお呼びください」
優雅で綺麗な微笑みではあるけど瞳が否をいわせないくらい冷気を含んだ声に思えた。そんな私の気持ちを置き去りにしたまま「ここは、ルリアーネ王国でございます。姫様の御名をお教えいただいても?」今度は、柔らかな微笑みをたたえながら尋ねられた。
私はこの微笑みにドキドキして、確実に顔が真っ赤になっていることが恥ずかしくなりながらも口を開こうとした。
その時、隣の扉がノックされ、「エイビー様。準備が整いました」
その言葉を聞くと、「先に準備をいたしましょう。それから、お話いたしましょう。楽しみにしています」そう言うと、また優雅に立ち上がり扉に向かって「入室を許可する。姫様の準備を」そう指示を出し部屋を出て行った。
扉から2人の落ち着いた色のワンピースを纏った背の高い女性がいくつもの荷物と共に入ってきた。
2人の女性は、私の少し前に立つと「アリサと申します」そう言って深々とお辞儀をしてくれた。アリサさんは、赤の近い茶色の髪と茶色の瞳の20代後半くらいの女性で、もう1人は、茶色い瞳のピンク髪の高校生くらいの年齢で背が高く可愛らしい女の子は「マリーンです」そう言って飛び跳ねるようなお辞儀をしてくれた。
私もアリサさんとマリーンさんに「朝宮・咲良です。咲良が名前なので咲良って呼んでくださいね。よろしくお願いします」なんだか小学生の自己紹介になってしまったな〜と思いながらニッコリ笑ってみた。(そういえば、美穂が3歳になった頃、片言でおしゃべりの練習をした時もこんな感じだったな〜・・そんな風に思い出しながら・・・)
私がなんだか小学生の自己紹介みたいになって恥ずかしいな〜なんて思いながら2人を見上げた。2人を最初に見た時も思ったけど背が高いんだよね〜。多分私よりは20cmは高いと思う。それに、体が引き締まってスタイルいいし・・・。
私が2人をあまりにも見つめすぎたためか2人とも固まってしまっている。ピクリともしない。
私はどうしたらいいのか分からず、私の右手でアリサさん、左手でマリーンさんの手を握って「仲良くしてください」と、2人を見上げながら伝えた。とたんにアリサさんはビクッとして、マリーンさんはハッとして様子で、私の準備を手伝ってくれた。2人ともなんとなく耳が赤くなっいる気がした。(私はこの国で生活する生物が大きいという事実と、この国の人々が小さく可愛いものが異常すぎるくらい好きであるという事実を知らなかった。そして、私の世話係を巡ってバトルを繰り広げ、勝利した2人がアリサさんとマリーンさんであるという事実を知らなかったのである)
大人になってから着替えを手伝ってもらうという行為に緊張している暇もなく、2人になんだか豪華なドレスを着るのを手伝ってもらい、正面の壁と一体化しているのではないかと思うほど大きく、豪華な金色の額縁のついた鏡の前につれていかれた。
そこで私は、今の私の姿をはじめて見た。
鏡に映っていた私は、以前の姿と全然・・・う〜ん、いくつかを除いて異なっていた・・・いや、いくつかが異なっている・・なのか??
まず、二重の大きな目と真っすぐなロングの髪の色はダークブルー。目は、光があたるとダークブルーにオレンジ色??が加わるようだ。
身長は以前と変わってないような気がする・・・いや以前の153cmよりもやや低めかも・・・・。
でも、胸は以前よりもある気がする・・・でも、身長が低くて以前以上に色っぽさにかける・・・客観的にみて皆無かも・・・・。
は〜・・・ってことは、目と髪の色を除いては変わっていないのでは・・・。
違う・・・現実をみよう。
はっきりいって自分の年齢がわからない・・・でも29歳よりは下でしょう・・・以前よりも童顔さが増し増しな気がする。
どうせなら、ありあまるほどの色気が欲しかった〜。
これで歳だけとっていたら嫌だわ~。
私がそんなことを考えている間に2人によって準備が終了したらしく、あれよあれよという間に、この砦の神殿に連れられてきた。
神殿は、私がいた建物と繋がっているようで外にでることなく神殿の扉前まで到着することができた。
アリサさんが神殿への扉をノックし、「姫様到着いたしました」
そう告げた。
扉の内側からギーッという木材独特の音と共に扉が開かれた。
部屋には、白髪のいかにも儀式用といった衣装を身につけた年配の男性、物語で出てくるような騎士服の男性数名、そして騎士服を着たエイビー様がすでに到着していた。
エイビー様はすぐに私をエスコートして、部屋中央の椅子まで案内してくれた。
私は、エイビー様に勧められるままに椅子に座った。
白髪の神殿用(儀式用ではなく)衣装を身につけた年配の男性は、
私に深々と礼の姿勢をとり、ここにいる皆の紹介をはじめた。
「姫様、私はこの砦の神殿長をしております、シンクラー・アイラットと申します。そして、この者がこの砦の騎士団長のアレスレイ・コーライ。
1番隊隊長ガイ•ビライタス、2番隊隊長クレイン•ディストラン、3番隊隊長カーク•リースト、そして薔薇騎士隊隊長エイビー・セブール」
はっきりいって、ここの人たちって美形揃い・・・。一番年齢を重ねているであろう神殿長までも美形・・・・。
私、すごく場違いなんです・・ここから逃げる方法を知っていたら間違いなく逃げ出していたと思う。もちろん、今そんなこと出来るわけないけど。
そんな場違い感でいっぱいいっぱいの私に神殿長はどんどん紹介を進めていく。そして神殿長に名前を呼ばれると、座っている私の足元に跪き自身の名前を告げるのだ。
私は、場違い感と美形力タ〜ップリの自己紹介に脳内パニックを起こしながら、それぞれに「朝宮・咲良です。咲良が名前なので咲良って呼んでください。よろしくお願いします」と
アリサさんとマリーンさんにした小学生の自己紹介を繰り返したのであった。