表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大切な大好き  作者: 界扉
1/14

ここどこ??

ここはどこだろう?

土と草の匂いがする。目を開けたいと思うのに開けられない・・・・・。

遠くで誰か叫んでる。でも、西洋映画に出てくるような馬の足音もしていて何を叫んでいるのか分からない。

っていうか、ここどこ?

私、今どんな状況????

私、夜勤明けだよね。

目は開けられなくても手は動く?・・動かしてみる・・・イヤイヤ無理・・指がかろうじて動く程度。

は〜あ??何で?

それに動かした指が・・いつもの自分の指じゃないような感じがする。

そんなはずないと思って、必死で指を動かしてみる。

何かが違う???・・何となく違和感がある・・・。

パニックになったら終わりだと思い、落ち着け〜、落ち着け〜、自分に言い聞かせながら一つづつ思い出してみる。

私、朝宮咲良(あさみや さくら)、身長153cm、体重4●kg、顔は二重の大きな眼が特徴の童顔(大人っぽいとか色っぽいと言われてことは1度もない。ちゃんと胸はあって幼児体型ではないはずなのに・・・・げせぬ)、29歳(1月が誕生日だから、もうすぐ30)の色々あっての看護師5年目。

家族は、童顔の母さん(48歳)と・・・7年前にできたやさしい義父(56歳)とぷにぷにほっぺが愛らしい義妹(美穂 6歳)。母さんと義父が婚姻届を出したのが7年前。それまで母と私の二人で生活していたけどこれを機会にと思って私は一人暮らしを始めた。一人暮らしは自由な反面寂しかった・・・でも、母の義父に向ける笑顔ををみるたびこれでいいんだと思った。それに、寂しさは職場の親身になってくれる同僚や友人と過ごすことであまり感じなくなった。

家族仲は、他人からみたらとても仲の良い家族に見えていたと思う。

でも、妹が可愛いと思いながらも、「パパ」「ママ」と呼び、子どもらしいワガママを言う義妹がとても眩しくて羨ましいと思う気持ちがあることも自覚していた。

だから、義父から一緒に暮らそうと提案されても、病院勤務が不規則だからと、最もな理由をつけて断った。

義妹それも6歳になったばかりの幼女に嫉妬していることをこれ以上実感したくなかった。

でも、私が一緒に暮らすことを断った事が母には納得できないらしく、話をすれば喧嘩ばかり・・・

はーーっ、ため息しか出ないよ。

今朝は夜勤明けで母と美穂とランチに行く予定だった。

白衣から先月買ったばかりのワンピースに着替える時に、今日は絶対に母と喧嘩しない、そう思った。

待ち合わせ近くの交差点ではしゃいでいる美穂が見えて、美穂と目があった。

目があったとたん美穂はニコニコ笑顔でこちらに走り出していた。

でもここは交差点・・・、一瞬だったと思う。

でも、美穂に車がぶつかる瞬間がゆっくり見えたと同時に私の体は美穂を抱きしめていた。

その後は・・・・覚えていない。

ただ、私は美穂が無傷であることを確認したことをなぜかはっきりと覚えていた・・・・・・。

え〜っ、私、死んだの??

どこも痛くないけど・・・・。

死んだから痛くないの????

私の体はどうなってるの〜??

ぐちゃぐちゃ血だらけなんてことは・・・血の匂いはしないし・・もしかして、匂いがわからないとか???

私はパニックに陥った(指がかろうじて動くだけだから、パニックになっていても誰一人として気がつかないが・・・)。


あれっ?

いつも間にか馬の足音は止まっていた。

カシャカシャと硬いものが擦れるような音とガサガサと草をかき分けるような音が少しずつ近づいてくる。

誰かくる!!

私、ピンチじゃないの・・。

さすがに目を開けなきゃだめだと思っても瞼が重くて開けることが出来ない。


「光は強まっているから、このへんのはずなのに・・・」

「あせるな・・・」

「このへんにいるはずだ・・・、みつけても絶対に怖がらせるな」

カシャカシャと硬いものが擦れるような音とガサガサと草?をかき分ける音とともに人の話声が聞こえる。

私、逃げたほうがいいのかな??・・

でも動けないし・・・さっきより指に力が入る気がするけど・・・。

左右の手をそれぞれ広げて触れるところを触ってみる。

乾いた土の感触・・・????

違和感がある・・・痛みはない。

なんというか、自分の手なのになんとなく違うような・・・・。

見て確認したい・・・なんとか目を開けようとしてみるけど・・・やっぱり無理。

そんな状態の中、

「みつけた・・・・・」そうつぶやいたのが聞こえた。

直後、先ほどのつぶやきが嘘のように

「エイビー、見つけたぞー」

ものすごい大きな声で叫び始めた。

カシャカシャと硬いものが擦れるような音が近づいて来て止まり、

「見つけた・・・やっと・・見つけた」

しっかりとしているのに・・静かで・・今にも泣きそうな声がして、私の頬に指先が触れるのを感じた。

私の頬を触る指先は、硬くて少しカサカサしていて・・・そしてすごく暖かい気持ちになるのを感じた。

聞いたことのない人の声だけど・・・・。

何とかして目を開けなくてはと思って頑張ってみるものの上手く出来ず、

チャレンジあるのみと思ったところで体が浮いた。

急に体が動いたせいか、頭がぼーっとして・・・・、

「エイビー、連れて帰ろう。俺が抱いて行く」

「私が・・・・。こわがらせないで・・・・」

私を抱いている人と女の人が話しているが聞こえた。

あとは、ふわふわ揺られて・・・そのたびにカシャカシャと音がして・・・。

ふわふわ・・あたたかくて、やさしい・・気持ちがほっとする・・・。

私が覚えているのはそこまで。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ