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第20話 冒険者の利とはまさにこのこと

「束縛眼!」


突進してくるヨロイイノシシの動きを止める。そして僕はヨロイイノシシの心臓にショートソードを突き刺した。ヨロイイノシシはしばらくの間ピクピクとけいれんしていたが、やがて息の根が止まる。


「まさか本当に刃が通るとはなぁ」


ヨロイイノシシという魔物は、体の周りが分厚い皮膚におおわれている。金属のように硬いわけではないものの、弾力があるために刃を通すのは難しい。


なので、僕は分厚い皮膚を何度も攻撃することで少しずつ弱らせようと考えていた。


けれど、僕はショートソードを突き刺すことで倒してしまった。これはおそらく、称号【ドラゴンスレイヤー】の効果で攻撃力が500も上がったからだろう。


これは嬉しい誤算だな。僕は嬉々としてヨロイイノシシの皮と牙、それに魔石を剝ぎ取る。


皮はともかく、重量のある牙なんて普通は放置するものだが、今回はマジックバッグがあるので問題ない。これはフレアから借りたものだ。


僕は今、《白亜の森》という場所にいる。ここは《時雨の森》なんかより、遥かに強力な魔物が巣くう危険地帯だ。


墓場から帰って来た翌日、僕は冒険者ギルドにて、依頼を達成したことをギルド長に報告した。これからギルド側の職員を墓場に派遣し、依頼が本当に達成されたのか確認するらしい。


ギルド長は僕があまり噓をつくようなタイプではないと思ったのか報告を聞いて喜んでいた。これで墓場の移設ができるってな。


あれだけ抗議を受けていたし、実際に物凄い腐臭が漂っていたんだ。喜ぶのは当然だろう。依頼主は墓守だったらしいけど、ただの墓守が緊急依頼をだせるとは思えない。


多分、領主の意向も働いて緊急依頼がだされたのだと思う。だからこそ、ギルド長は喜んでいたのだろうな。


ギルド長に報告を済ませた僕は、フレアからの指名依頼を確認した。そこに書かれていたのは、《白亜の森》に生息するライトニングベアとデンキウナギの素材納品だった。


《白亜の森》は徒歩で行ける距離にはない。そこで僕は馬車を使って《白亜の森》の手前にある町まで移動し、そこの宿で一泊した。


翌朝宿を飛びだした僕は、《白亜の森》の中へと足を踏み入れたというわけだ。


《白亜の森》の森は、名前の由来となったホワイトウッドという木がたくさん生えている。ホワイトウッドは幹が白いのが特徴で、家具なんかにも利用されている。


《白亜の森》の近くに町があるのはこのためだ。


僕は森の中をどんどん進んでいく。まずはライトニングベアから討伐しようと思っている。生息地がどこにあるかも分かっているからな。


魔物というのは縄張りを持っているものが多い。だから、冒険者ギルドなんかに行くと、他の冒険者たちが目撃した魔物の情報を売ってくれるのだ。


昨日宿に泊まるまえに冒険者ギルドにて情報を仕入れている。僕はそれを頼りに、目的地を目指す。


やがてホワイトウッドが点在する、大きな岩山が見えてきた。


「この辺りに生息しているはず」


きょろきょろと辺りを見渡す。近くに、大きな足跡があった。僕はそれを辿っていく。


「ぐがああああ!!!」


岩陰に隠れながら鳴き声の主をそっと見る。


僕の視線の先には大きな黄色い熊と、一角の鹿がいた。黄色い熊が今回お目当てのライトニングベアだ。


一角の鹿はユニコーンだろう。


両者はお互いに対峙している。ユニコーンが鋭い角を振りかざしてけん制し、ライトニングベアは口を大きく開いて威嚇している。


ユニコーンが突進し、ライトニングベアを突き刺そうとした刹那――。


ライトニングベアは魔法を発動し、ユニコーンの角に大きな雷が落ちた。ユニコーンはけいれんしたのち息絶える。


黄色い巨体がユニコーンを食べる前に、僕は攻撃することにした。ユニコーンの素材は高く売れるからな。食い荒らされて素材がダメになったら困る。


「束縛眼!」


僕はライトニングベアの動きを止める。それからそいつに向けて投げナイフを投擲(とうてき)した。投げナイフはライトニングベアのお尻に刺さる。


「ぐがぁ! ぐがっ!?」


ライトニングベアは悲鳴をあげる。そして僕がいる方に視線を向けた。ライトニングベアは僕に向けて魔法を放とうとする。


「束縛眼!」


僕はライトニングベアの動きを封じる。その間に避けたため、ライトニングベアの雷撃は当たらなかった。


その後も束縛眼を多様することにより、ライトニングベアの猛攻をよけていく。


やがてライトニングベアはしびれを切らしたのか、雷魔法での攻撃を止め、僕に向かって突っ込んできた。


「やっと近づいてきてくれたか。束縛眼!」


ぎりぎりまでライトニングベアを引きつけ、束縛眼を使用する。動きの止まったライトニングベアの首を、僕はショートソードで刈り取った。


地面にぼとりと凶悪な顔が落ちる。

あれっ? シルは? と思われたかもしれませんが、次回をお楽しみください。


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