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赤髪赤目の男


早速手を回して、似顔絵師から彼女の依頼品を回収した。

もう一枚同じ絵を描いて彼女へ渡すよう絵師に伝え、この事は他言無用と釘を刺した。


一人執務室へ籠り、彼女の依頼品を眺めた。

変わった感じの男だとリチャードから聞いていたが、なるほど奇抜な髪型をしている。

肩までのザンバラの赤髪で、片側を細かく編み込んで後ろへ流している。

眉は細く、涼しげな形の目をしている。瞳の色も赤。赤目赤髪の男、か。


まさか、彼女はこういう男が好みなのか?

不細工とは言わないが、どう見ても柄の悪い不良だ。


絵師に似顔絵を依頼したということは、彼女はこの男に会ったことがあるのか?

一体どこで?

このような不良と彼女が接する機会などあり得ない。男は学生には見えないし、無論教師にも見えない。

公爵家の使用人でも、出入り業者でもないだろう。逆にそれほど身近な人間なら、わざわざ似顔絵を依頼する必要はない。


会ったことがあり、もう会うことが叶わない相手と考えるのが妥当だろう。

もしくは、完全なる空想で生み出したーー理想のタイプの男。

まさか。


ふと壁掛けの鏡を見た。映る自分は金髪蒼眼。横髪は耳にかかるほどの長さで、襟足は短めだ。眉はきりっと太目で、目は丸くて大きめ。目鼻立ちがくっきりしているタイプだと自覚はある。

つまり、似顔絵の男とは正反対。対照的だ。

それに気付いて愕然とした。


この「負けた感」は何だ。敗北感?

まさか。王子のこの僕が?

実在するかどうかも分からない、似顔絵の不良に負けたというのか?

そんな馬鹿な。


しかし彼女は確かに言った。

婚約を解消してほしいと。僕を刺し殺す夢を見て、このまま結婚をするのは良くないと。無理やりこじつけたような理由だった。

それはやはり都合のいい口実で、単に僕から離れたいということか。


他に好きな男ができたから?

それがこの男?



「ねえ、リチャード。本気でこの男に見覚えない?」


呼びつけたリチャードに似顔絵を見せて尋ねた。


「ありませんね。そのように特徴のある男なら、一度見れば記憶に残るでしょうから。でもあれですね。顔立ち自体はあまり特徴がありませんから、赤髪赤目でその髪型でなければ、すぐ忘れてしまう顔ですよね」


「だよな!」と強く同調した。


「色彩と髪型で印象付けしているだけだ。顔自体は僕の方がいいよな?」


リチャードはくすりと笑い、「ええ勿論です、殿下」と答えた。

笑って言うとか失礼だろうが、王子に向かって。


「殿下はとても素敵ですよ。もし私が女性で独身でもう十歳若ければ、迷わず殿下に恋するでしょうね」


IFの仮定が多すぎる。それにベラドナは女性で独身でリチャードより十歳若いが、迷わず僕に恋していない。


「ありがとう、リチャード。気持ちだけありがたく受け取っておくよ」


「殿下。赤目赤髪の人間は我が国では滅多に見かけませんが、ドージャ王国の辺りではそれほど珍しくもないようです。ベラドナ様が熱心にドージャ王国のことを調べていた事と、関連があるのではないでしょうか」


「……例のドージャ王国か。似顔絵の男はドージャ王国の者ということか?」


「断定できませんが、その可能性が高いかと思います」


ベラドナが何故遠い異国のことを調べているのか、前にリチャードが聞いたときに、「行ってみたいから」と彼女は答えたそうだ。

この男に会いたいからか?


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